パンがメインのアフタヌーンティー!ヒルトン東京「プティ・ブーランジェリーwith ART OF TEA」誕生秘話
スイーツやサンドイッチとお茶がセットになったホテルのアフタヌーンティーが流行中です。高い技術と豊富な経験を持つホテルのパティシエやシェフが味と美しさを競い合うかのようです。
東京・新宿にあるホテル「ヒルトン東京」では、パン尽くしのアフタヌーンティー「プティ・ブーランジェリーwith ART OF TEA」が開催されています。ヘッドベーカーの湯田剛史(ゆだ つよし)さんと企画を担当されたマーケティング担当の五戸若茂子(ごのへ ももこ)さんにお話を伺いました。
パン好きの夢が叶う。色々食べられるパンのアフタヌーンティー
──まず、おふたりのご経歴を教えていただけますか?
湯田さん(以下敬称略) 1995年に専門学校を卒業して、ホテルニューオータニに10年勤務したあと、一度町のパン屋さんで働きました。その後、リゾートホテル「ホテルエビナール那須」で勤務。その後「ベーカリーレストラン沢村 旧軽井沢」で、水、粉、酵母を改めて勉強しました。「ヒルトン東京」には2014年10月に入社してヘッドベーカーを務めています。
五戸さん(以下敬称略) 私は20年ほど「ヒルトン」で働いていて、全体のマーケティングを担当しています。1階の「マーブルラウンジ」のデザートブッフェをはじめとして、レストランの企画にはゼロから関わることが多いです。
ホテルにとって、特に宿泊のお客様が朝食に召し上がるパンはすごく重要なものです。湯田が入社したのは、2014年11月にレストランフロアを大きく改装したときのことです。そのときそれまで曖昧だったヘッドベイカーというポジションを確立させて、パンに力を入れようということになりました。それで湯田をヘッドハンティングしたんですよ。
私もパン好きで、湯田のパンはとてもおいしいと思っています。バゲットなどはフランス人のお客様からもパリと同じ味だと好評です。
──9月17日から2階にあるバー&ラウンジ「ZATTA」で「プティ・ブーランジェリーwith ART OF TEA」が始まりました。このパンのアフタヌーンティーが始まったのにはどういった背景がありますか?
五戸 「ヒルトン東京」では、1階の「マーブルラウンジ」でデザートブッフェを行っています。とても人気があって、スタイルが確立されたものです。一方、この2年ほどのコロナ禍で、人数分が盛り付けられてテーブルに運ばれてくるアフタヌーンティーの需要が高まりました。「ZATTA」でも元々スイーツを中心としたアフタヌーンティーを行ないましたが、どうしてもお客様の層が「マーブルラウンジ」と重複してしまいました。
そこで差別化をしたいと考えて、湯田に相談しました。パンにとことん拘ったアフタヌーンティーができないか、と。私自身もパン屋さんでいろいろ食べたいのに全部は買えないことをもどかしく思っていたので、そんな気持ちに応えられないかと思ったんです。
湯田 相談を受けて、パンがメインのアフタヌーンティーは目新しいし、「できます、やりましょう」と話をしました。それで、2020年9月から10月に最初の「プティ・ブーランジェリー」を開催しました。現在開催中の「プティ・ブーランジェリーwith ART OF TEA」が5回目になります。
生地は1つ20gほど。11種類のバラエティ豊かなパン
──パン好きにとって、いろんなパンが食べられるなんて夢のようです。でもお腹いっぱいになってしまわないかという心配もあります。
湯田 例えばクロワッサンは通常、生地は70〜80gですが、10gや20gとかなり小ぶりにしています。スタッフには手の大きい人もいますし、小さいパンはいつも以上に丁寧に作る必要があって手間がかかっています。
それから、最初はアフタヌーンティーということもあって挟むタイプのサンドイッチが多めで、女性には食べきれないというご意見もありました。そこでミニバゲットやライ麦パンを使ったオープンサンドにして、パンはスライスしたものを1枚だけ使っています。カラフルで味にもバラエティを出す工夫をしました。
湯田 牛フィレステーキにフォアグラとトリュフを合わせた「ロッシーニバーガー」は変更なく、初回から続けています。お肉のボリュームや、ホテルらしい味わいと豪華な気分を味わっていただけるメニューです。ほかにもお食事パンとして小ぶりの「キノコのフォカッチャ」、おつまみにもぴったりの「トマト&ハーブのグリッシーニ」を準備しました。
湯田 甘いお菓子パンの中でも、イチオシは小さいサイズの「ラズベリーのクロワッサン」です。1階のショコラブティックでも評判がいいパンです。繊細なクロワッサンの中にラズベリーガナッシュを入れて、見た目も味も喜んでいただけるものになっていると思います。
2021年に流行したマリトッツォは、やはり好きな方が多いピスタチオと合わせました。ピスタチオの濃厚な味わいを感じてもらえるように仕上げています。
スコーンやグルテンフリーのドーナツも合わせると、生地の種類は全部で11種類。これだけの種類のパンを一度に食べていただく機会は珍しいと思います。
五戸 パン好きの方にはわかっていただけると思いますが、大きなケーキをカットして提供するのとは違って、小さい分手間がかかります。お菓子パンとおかずパンがあるので、飽きずに食べてもらえますし、お得感も感じていただけると思います。どのパンもそれぞれの食感や味わいを楽しんでいただきたいです。
ヨーロッパの小さなパン屋さんのようなオリジナルスタンド
──アフタヌーンティーというと写真映えを意識する方が多いですが、パンはもちろん、盛り付け方法もかわいいですね。
湯田 今回からは、パン屋さんの棚をイメージしたオリジナルのアフタヌーンティースタンドを作って、パンを盛り付けることにしました。
五戸 「ヒルトン東京」の中にはエンジニアの部署があって、大工さんもいます。そこに湯田が描いた棚の絵を持っていって、台を作ってもらったんです。「プティ・ブーランジェリー」の企画にふさわしく仕上がりました。
──パンの並べ方もとても素敵です。デザインやアイデアはどうやって生まれるのでしょうか?
湯田 インスタグラムでフランスのベーカリーの写真を見たりもしています。ヨーロッパのパン屋さんの流行りから、新しい材料を発見することもありますね。ファッション誌もチェックしています。
五戸 私は、ホテル業界以外の流行を、どうホテルや食に取り入れられるかを考えています。雑誌やピンタレストの画像を見ながらシェフたちと話すのですが、「ヒルトン東京」のシェフたちは“映え”をうまく意識してくれています。
専門家が集まるホテルだからできるバラエティの豊かさ
──湯田さんはホテル勤務のあと、町のパン屋さんを経験され、再度ホテルのベーカリーでお仕事をされています。ホテルのベーカリーのお仕事の魅力はどんなところですか?
湯田 ホテルは夜勤もあるなど、チームで協力して日々の仕事を回しています。今回のアフタヌーンティーにしても、僕ひとりで作っているわけではありません。ベーカリーのメンバーは6人いますし、サラダやロッシーニバーガーも専門のスタッフに頼んだり、相談しながら作っています。お陰でホテルだからできる味や経験をご提供できていると思います。
──「プティ・ブーランジェリー」は、お客様からの反応はいかがですか?
湯田 先日、お客様からコメントをいただいた中に、お父さんがパン好きの娘さんを誘ってアフタヌーンティーに来られたというものがあったんです。スイーツ中心のアフタヌーンティーより、誘いやすいと思ってくださったのだろうと、嬉しく思っています。
五戸 アフタヌーンティーは11時30分、14時30分、18時と3回行っています。お客様によってはティータイムはもちろん、ブランチ、ランチ、ディナーにも楽しんでいただけます。予約は、毎日翌日分を18時に締め切っていますが、週末にはいっぱいになることも出てきました。「ZATTA」はバー&ラウンジということもあって、お酒と一緒に楽しんでいただけることも考えたパンのラインナップになっています。9月までは、お酒を提供できませんでしたが、今後はアルコールとも合わせたり、いろいろな楽しみ方をしていただきたいですね。
11種類の小さなパンとスープにサラダ、スイーツまでついた「プティ・ブーランジェリーwith ART OF TEA」。ホテルという非日常の空間で、いろいろなパンを一度に食べるというパン好きなら心躍る時間を楽しんでみてはいかがでしょうか?
■ヒルトン東京「プティ・ブーランジェリーwith ART OF TEA」
- 住所
- 東京都新宿区西新宿6-6-2 ヒルトン東京 バー&ラウンジZATTA(2階)
- 開催期間
- 2021月9月17日(金)~11月11日(木)(予定)
- 時間
- 11:30~20:00 ※2時間制
※予約は11:30~、14:30~、18:00~の3部制 ※要事前予約。予約締切は来店前日の18:00に予約締め切り - 料金
- 月~金 1名 5,000円、土・日・祝 1名 5,400円 (税金・サービス料込み)
- HP
- 予約サイト
注意:パンの種類は変更になることがあります。料金には約20種類のドリンクも含まれます。