

有名パンシェルジュたちが本音で評価!Pascoの冷凍パン生地試食&座談会レポート

スーパーで必ず見かける食パン『超熟』でおなじみ、Pascoこと敷島製パン株式会社。実はさまざまな冷凍パン生地を扱っており、最近注目の多加水生地も手がけているのだとか……。
気になった編集部は、さっそくPascoの製品開発・戦略部にコンタクト!パンのセレクトショップを運営し、イベント開催などでも活躍する榎 友寿さんと、Instagramを中心にインフルエンサーとして活動するおいもぱんさんの2名を招き、Pasco自慢の冷凍生地試食&座談会が実現。もちろんパンシェルジュの資格も持つおふたり、どんな意見が飛び出すでしょうか?
有名パンシェルジュとPasco開発本部のぶっちゃけトーク!
──みなさま、本日はお集まりいただきありがとうございます。まずはPascoのおふたりから、それぞれ自己紹介をお願いいたします。
Pasco金本(以下敬称略):Pascoの製品開発一グループに所属する金本と申します。この会社に入社してから、パンに関する知識を深めたくて「パンシェルジュ検定1級(マスター)」を取得しました。現在は冷凍パン生地の製品開発を担当しています。
Pasco重成:同じく、Pascoの重成です。私は製品戦略グループで、冷凍パン生地の販促やスーパー内にあるインストアベーカリーへの提案などを行なっています。Pascoが業務用の冷凍パン生地を扱っていることを知らない方も多いので、特にPRには重点的に取り組んでいます。
──では次に、パン好き代表でインフルエンサーでもあるおふたりにも自己紹介していただきます。
榎:パンのセレクトショップ「パントタビスル」の運営を中心に、現在はイベント運営や店舗プロデュース・監修などのパンに関する事業を手がけている榎です。「パンシェルジュ検定1級(マスター)」のほか、JPCAパンコーディネーターやWEST Intermediate certificateの資格も持っているパン好きです!
おいもぱん:西神戸を中心に、関西でパン屋巡りをしてはInstagramで発信しているおいもぱんです。大学で京都に進学し、パンの魅力に取りつかれてしまいました!これまでに400軒以上のベーカリーを訪れ、もちろん資格も「パンシェルジュ検定1級(マスター)」まで取得しています。
今話題のパン、みんなが注目するパンは?
──ありがとうございます。せっかくマニア級のパン好きがそろっていますので、みなさまが「今注目しているパン」についてお聞きしたいと思います。
榎:僕はいわゆる「ハイブリッド系」に注目していますね。たとえばクロワッサンとマフィンをかけ合わせた「クロフィン」。市場でトレンドになっていますし、パン屋さんでも見かけるようになってきました。
おいもぱん:私は「ドーナツ」です!最近パン屋さんでよく買うんですが、ドーナツ専門店とはまた違う魅力があるというか……。ベーカリーならではの粉づかいや食感を楽しんでいます。加水率の高い「生ドーナツ」も流行っていますよね。
──おいもぱんさんから「高加水」というキーワードが出ましたが、パン業界でも多加水パンは注目されているそうですね。
榎:「ロデヴ」や「リュスティック」などに代表される多加水パンは、生地がゆるめでべたつきやすいので扱うのが難しいんです。プロのパン職人でも腕が試されるから、パン好きの僕はまずチェックしますよ。
Pasco金本:一般的なパンの配合は水が65%程度のところ、多加水は80%以上を加えて作られるものを指します。近年メジャーになりつつあり、多くの人気店シェフがこだわりの製法として活用していますね。「このパンおいしいな」と思ったらだいたい多加水なので、僕も大好きなパンです!
「多加水パン」の魅力とPascoの製品開発
──かなり注目度が高いんですね。多加水パンの魅力について、パンシェルジュならではの視点でぜひ語っていただけますでしょうか。
榎:やはり何といってもしっとり、もっちりした柔らか食感ですよね。みずみずしくじゅわっとした口溶けで、一緒に水分を取らなくても食べきれてしまうくらい。生地が老化しにくいのもポイントだと思います。
おいもぱん:どんな食材とも合わせやすいから、サンドイッチにするのもぴったり!バターや油と相性がいいんですよね。私はもちもち食感のパンが好きなので、多加水パンのもちもちを超えた「もちゅもちゅ」な食べ心地にぞっこんです。
Pasco重成:実は私たちPascoでも、業務用冷凍パン生地で多加水の製品を発売しているんですよ!一般的な多加水製法とPasco独自の製法を組み合わせて、それぞれの商品に合う食感とおいしさに仕上げました。小麦の香りとうまみを強く感じられるうえ、これまでにないしっとり・もっちりした「しともち食感」を実現しています。
Pasco金本:普段から新製品企画の際には話題のパンにアンテナを張っていて、人気製品の多くに多加水技術が使われている事に気づきました。実際に僕自身も食べてそのおいしさに魅了され、「取引先でもこんなおいしいパンが作れる生地を提供したい」と考えたんです。
榎:ちょっと待ってください!よく会社からOKが出ましたね。生地の加水率が70%を超えると、工場の生産機械に通らないのではと疑問なんですが……。
開発の苦労、改良を重ね続けた道のり
──パンシェルジュならではのするどい突っ込みが入りましたが、開発には苦労されたんじゃないですか?
Pasco金本:そうですね。多加水生地を作るとなると、べたついて作業性が悪い、水分量が多くカビが生えやすいなどの課題がありました。特に工場での大量生産には向かず、リテールベーカリーですら苦労されていると聞きます。だからこそ、扱いやすさや時間がたっても維持できるおいしさと食感には妥協したくなかったんです。多加水製法にPasco独自の湯種製法等を組み合わせ、配合を何度も見直して試作を繰り返しました。
──長年培ってきた、Pascoだからこそのノウハウが生きているんですね。この多加水冷凍生地の魅力、もっと教えてください!
Pasco重成:私たちの主要な取引先はスーパーのインストアベーカリーなので、やはり扱いやすさが一番の売りです。冷凍ゆえベタつきにくいから、パートやアルバイトの方でも簡単に扱えるんですよね。今日は冷凍状態の生地もお持ちしているので、ぜひパンシェルジュのおふたりにも触ってみてほしいと思います。
おいもぱん:本当にベタベタしないですね!!生地をのばしやすいので、フィリングやクリームも簡単に包めそう。
榎:いろいろなアレンジに向いているから、インストアベーカリーでも商品のバリエーションを広げられるのはいいですね。
Pasco重成:それでいて味もきちんとおいしいのが魅力です。多加水パンって買った直後はすごくしっとりしていたけど、翌日食べると食感が落ちていてがっかり……なんて経験はありませんか?数日後でもパサパサせずにおいしく食べてもらえるよう、老化を抑制するべく改良を続けました。その結果、有名ベーカリーの商品と比較しても柔らかさが持続しているという分析が出たんです!
Pasco金本:あえて常温で2日間置いたパンも食べてみてください。
榎:まったく食感が損なわれていないですね!しっかり保水されている感じが残っています。手軽な存在であってほしいパンだからこそ、おいしいまま日持ちするのはうれしいなと思います。
Pasco自慢の多加水冷凍生地を、パンシェルジュが実食して評価!
──ではここで、実際にPasco自慢の多加水冷凍生地を使ったパンの試食を行います。
★国産小麦のロデヴ
Pasco金本:国産小麦の小麦粉と国産小麦の全粒粉を使用し、オリーブオイル、フランス由来の乳酸菌、ルヴァン酵母を加えました。加水率100%だからこそ実現した、非常にみずみずしい食感が持ち味です。いろいろな人が訪れるインストアベーカリー向けということを意識し、万人受けするやさしい味わいにしています。
榎:「ロデヴ」といえば、多加水でももっとも代表的なパン。生地の扱いや温度管理が難しいことでも有名で、パン職人でも作るのが大変とされています。それに挑戦したのが純粋にすごいですよね。具材の味をじゃましないシンプルな生地なので、くり抜きのパーティサンドにしてみては?
おいもぱん:うわ、すごいもっちり~!!どっしりして食べごたえがあるし、全粒粉が入っているから香ばしくておいしいですね。この大きさを生かして、お祝いごとの一升パンを作ったら売れそう。
──先ほどの「国産小麦のロデヴ」を使ったアレンジレシピを2種類ご用意いただきました。
Pasco重成:まずは、イチヂクとマスカルポーネチーズをのせたブルスケッタ風のアレンジから。こしょうとハチミツをかけた大人っぽい味で、マスカルポーネには隠し味にすりゴマを効かせているのがポイントです。
おいもぱん:フルーツもハチミツも、みずみずしい生地にこんなに合うんですね。口溶けが抜群で、耳まで柔らかくて歯切れもいいから子どもでも食べやすいと思いました。個人的には、大好きな「リンゴ×シナモン」でもアレンジを試してみたいかも!
榎:冷蔵でも固くなりにくい、という多加水ならではの利点を生かしたアレンジだと思います。通常のパンよりぐっと目が詰まっているから、水っぽい具材でもしっかり受け止めてくれる。スイーツ系でも総菜系でも自由自在なので、レシピの幅は無限に広がりそうです。
Pasco金本:じゃあ総菜系も試してもらいましょうか。お寿司についてくる「ガリ」とベーコンをはさんだ、ちょっとユニークなホットサンド。神戸のパン屋さんからヒントを得て考案したレシピです。
榎:これは朝からパクパク食べられる!総菜と組み合わせるとまた新しい発見に出合えて、ご飯代わりにもできちゃいそうです。
おいもぱん:カリッとベイクすると、本当に国産小麦の香りがいいですね。外と中の食感の対比も面白くて2度楽しめます。
★生ソフトフランス
Pasco重成:お次は「生ソフトフランス」をどうぞ。近年「ソフトフランス専門店」が注目されていたことから、Pascoでも開発に踏みきりました。フランスパン用粉を使い、加水率を92%まで高めた製品です。シート生地を巻いており、冷凍の段階で成形しているためそのまま焼成することができます。フランスパンらしい引きはちゃんと残しながら、生クリームと発酵風味液をプラスしてしっとりさせました。
おいもぱん:ふわっと軽くて、クセになっちゃう食感のフランスパン!食パンみたいな感覚で気軽に食べられそう。サンドイッチにするのもいいけど、バターや明太子、マヨネーズ、ガーリックがよく染みそうだから試してみたいな。
榎:いろいろなアレンジができそうですね。リベイクするとクラストがバリっとしてフランスパンらしさも楽しめる。従来のフランスパンより卵液を吸ってくれるから、モーニングにフレンチトーストで食べたい!
★湶・ブール
Pasco金本:Pascoの強みである湯種の独自配合により、驚異の加水率98%を実現した「湶(せん)・ブール」もお召し上がりください。しっとり&もっちりさを存分に楽しんでもらえると思います。マーガリンチップと発酵風味液を加えているので、そのままでも塩味とうまみが感じられるのが特長です。
榎:(手に取って)「ぷるぷる」!!
おいもぱん:断面を見ただけでもしっとり感がわかりますね~!マーガリンチップのおかげでとても風味がいいし、食事パンとして食べたいかも。
★湶・ショコラ
Pasco重成:こちらは「湶」シリーズより、新しく11月に発売されたショコラバージョンですね。既存の製品が食事向けやシンプルなパンばかりなので、菓子パンっぽいものにチャレンジしたいと考えて開発しました。練り込みのチョコレートのほか、カカオにチョコチップも入れてチョコ感マシマシに仕上げています。売り場に並べたとき、茶色が多いパンのなかで個性を発揮してくれる製品です。
榎:食べた感じ、なんだかカップケーキみたいですね。ラズベリージャムやカスタード、キャラメルクリームを包んでもいいかもしれません。チョコは冬場の商品にぴったりですし、「フォンダンショコラ」のようなアレンジをしてみたいです。
おいもぱん:チョコチップの効果なのかな?チョコ感が強まって好みです。レンチンしてちょっぴり溶かすと、よりいっそうカカオの香りが強くなっておいしそう!
──先ほどご試食いただいた「湶」シリーズですが、とても変わったお名前ですね。
Pasco金本:よくぞ聞いてくれました!この「湶」シリーズは、多加水製法にPasco独自の技術を組み合わせて作りあげたものです。非常にみずみずしい食感が最大の特長なので、「水」にまつわるネーミングにしたくて「さんずいに泉」と書く字を使ったんです。「湧き出る水の力」から「湧き出る新しいパンのおいしさ」を表現しました。あまりなじみのない漢字かもしれませんが、これからPascoの代表的な製品シリーズに育てていきたいと考えています。登録商標まで取得するほど、全社一丸となって取り組んだプロジェクト。ただし、まだまだ多加水パンに対する一般の認知度が低いのは課題です。さらなる普及を目指し、店頭ではリーフレットや音声POP、アレンジレシピを紹介した動画の二次元コードを入れたPOPなどを使って販促活動を頑張っています。
新たなる看板商品を目指す「湶」シリーズへの想い
──パンシェルジュのおふたりは、Pascoさんの「湶」シリーズについてどう感じましたか?
榎:多加水パン全般でいうと、少し前の高級食パンブームの「次」に来る予感がします!Pascoさんの「湶」シリーズをはじめとした冷凍生地も、今後エース級の商品に育っていくんじゃないでしょうか。老化が遅い利点を生かして、配達・配送やサブスクリプション形式に向いているのではと思います。新しい売り方、販路の開拓に貢献してくれますし、手間を減らしつつ商品クオリティを上げられるので現場にとってはメリットばかりですよね。
おいもぱん:翌日でもパンそのものがおいしいのは、私としてはめちゃくちゃうれしいですね。知名度が課題とおっしゃってましたが、きっと一度食べたらわかってもらえると思います!今は大きめサイズの製品が中心なので、今後はプチパンや小さなロールパンなんかも作ってほしいな。
榎:揚げたり蒸したりしてもいいし、思わずアイデアがふくらみますね!
Pasco金本:パンシェルジュのおふたりからたくさんのご意見やアイデア、アドバイスをいただき、とても勉強になりました。これからも「湶」シリーズを新定番にしていけるよう取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました!
パンマニア目線でのアドバイスやレシピ例も飛び出した、今回の試食&座談会。「湶」シリーズをはじめ、多加水冷凍パン生地の魅力にふれる貴重な機会となりました。パンシェルジュのおふたりからもお墨付きを受けた、Pascoの冷凍多加水生地。全国にあるスーパーのインストアベーカリーにて、業務用として使われているかもしれません。ぜひ注目してみてくださいね。
ちなみに、帰りには冷凍のパンをたくさんお土産としていただきました。Pascoさん、ありがとうございます!
WRITER

ありま しょうこ
パンシェルジュ3・2・1級のほか、パンプロフェッショナル・パンスペシャリスト・手作りパンソムリエ・ベーカリーパティシエ・カレーパンタジスタの資格も取得。
このたび、ずっと夢だった『パンの本』の創刊編集長に就任。
『WEBタウン情報おかやま』では、岡山のパン屋さんを紹介する企画『パンのとりこ』を連載。
★日刊WEBタウン情報おかやま
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