

パン製造にさらなる自信を持てるように 山下三郎さん(ラウンド食パン工房パンデマルタ・オーナーシェフ)

山下三郎さん(パンシェルジュ1級)
株式会社ピースケイク代表取締役。板前として修業したのち、約20年前、小田原にオープンした食堂で腕を振るいながら、2022年4月1日には「ラウンド食パン工房パンデマルタ」をオープン。2つの店舗を行き来する忙しい日々を送りながら、2024年3月にパンシェルジュ1級を取得。その後もパンへのあくなき探求で、店舗スタッフとともにワクワクするような楽しいパンを生み出し続けている。

「パンのフェスin横浜赤レンガ」にも2023年から参加し、「パンのフェスアワード」も3年連続受賞しています。
「ラウンド食パン工房パンデマルタ」について教えてください。

イタリア語のような店名は、“丸太”のようなラウンド食パンの店という意味で名付けられました。
JR鴨宮駅南口にある「ラウンド食パン」をメインにしたお店です。こだわりは、富士山溶岩窯で焼き上げること。遠赤外線効果によって、ムラなくふっくらと焼き上がったラウンド食パンは、外側もよりやわらかです。
そのまま召し上がっていただくのはもちろん、どこから食べても具に届きやすい形なので、サンドイッチにもおすすめです。

「パンを中心から焼き上げてくれる富士山溶岩窯を使いたいと思った」と山下さん。焼き芋屋経営を検討した際に、遠赤外線効果のメリットを学びました。
パンシェルジュ検定を受験された目的やきっかけはなんですか?
もともと母がパンやケーキを作るのが大好きで、物心ついた頃から一緒に作っていました。家には発酵機能の優れたオーブンをはじめ、母こだわりのさまざまな調理器具が揃っていました。幼い頃からパンやお菓子、料理を作ることも、それを食べてもらうのも大好きで、友だちの家へ遊びに行く時には、ケーキを焼いて持っていったりも。母は僕専用のホイッパーなどを買ってくれました。それがとても嬉しくて、今でも大切に持っています。
パンを作っていると、なぜこの工程が必要なのかとその意味を考えたり、この工程をもっと良くするためにはどうすればいいのかなど、知識欲みたいなものがどんどん湧いてくるんです。パンシェルジュ検定を受験したのは、パンのことを学びたいと思ったからです。
この先もおいしいパンを届けたいし、お客様からの質問にもしっかり答えたい。そのためにはパンの知識を学びたい。そして、パンの知識を深めることでオリジナル商品に対する想いが強くなって、チャレンジする気持ちも次へ次へと出てくるんです。さらに次の段階に進めることを目標に、試験に臨みました。
──勉強はどのように進められましたか?
仕事の合間にひたすらテキストを読んで覚えました。3級の教科書を開いてみると、パンの歴史から始まり「こんなに昔の話から学ぶなんて覚えきれるかな?」とも思いましたが、知らない知識を得るられることで、探求心に火が付きました。読み進めていくとその面白さに、どんどんハマっていきました。
おいしそうな写真が出てくるので、読んでいるとどんどんお腹がすいて、なかなかはかどらなかったり(笑)。勉強している段階でとにかく楽しかったですし、検定を受けてよかった、そして取得できてよかったと思いました。

「検定」という言葉に身構えてしまう人もいるかもしれませんが、楽しんで勉強できるので大丈夫ですよ!」と山下さん。
──パンデマルタには、山下さん以外にもパンシェルジュ取得者がいらっしゃるというかがいました。
僕を含めて3名がパンシェルジュ資格を取得しています(2025年4月現在)。
当店のスタッフは、全員が製造を行えるパン好きの方が集まっています。一からあまり教えることはありませんが、全員が自信を持って商品を売ることができる店にしたいです。「パンシェルジュ検定」を通して、粉からパンになっていく工程をしっかり知ってもらいたいのです。

パンづくり未経験の学生アルバイトさんが入った時には、粉をこねる工程から研修を行うことも。
全員が製造できると、新商品や季節商品もみんなで考られます。スタッフから出たアイデアに対してみんなで投票して、新商品を作ります。既存の商品をよりおいしくするためにアイデアを出し合ったりもします。
だからこそ、機会があればスタッフにも積極的に検定試験を受けて欲しいんです。受験の費用は当社で負担し、受験時間分も時給を付けています。「お金かかるから」という理由で諦めて欲しくない。チャレンジしたい気持ちがあれば、全力で応援したいと思います。
検定の勉強で得たパンの知識のなかで、ためになったことや新たに知ったことはありましたか?
一番印象に残っているのは、「ブリオッシュ」の知識です。3級テキストの「パンの種類」に出てくるのですが、中世の僧侶の形を模して作られたとか、ネットで調べても分からなかった内容を知ることができました。ブリオッシュは、当店の「スイートマルタ」のベースでもあります。

看板商品「スイートマルタ」。水を一切使わず、牛乳や卵、発酵バターで練り上げたブリオッシュタイプのラウンド食パン。中の生地が黄色く、カステラのようなリッチな味わい。
2級・1級となると、ドリンクや食材とのペアリングも学べて、ますます面白いと思いました。パンの知識といっても肉まんや饅頭まで入っているので、パンの幅広さも実感しました。3級を取得したスタッフ2人も「パンだけ知っていればいいわけじゃないんだよ」なんて得意になって言っています(笑)。
資格を取得したことで知識も学べましたし、お客様にパンの魅力を自信を持って伝えられる。パンシェルジュのコンセプトを、僕自身はもちろん、取得したスタッフも実感しているようです。
今後の目標や、新たにチャレンジしたいことはありますか?
検定で得た知識を通して、パンの魅力をもっと多くの人に伝えたい気持ちが強くなりました。
地域で子ども向けパン教室を開催し、作る体験だけではなく歴史なども伝えていきたいです。すでお話をいただいていて、定休日に開催できればと検討しているところです。
「パンのフェス」をはじめ、パンイベントにも積極的に参加していきたいです。これからも「パンのフェス アワード」にもエントリーし続けたいと思います。

「パンのフェスアワード」2023年度受賞の「湘南クロワロール」(左)や、湘南ゴールドを使った2024年度受賞の「湘南カスタードパンスイス」など地元を意識した受賞パンが続々登場しています。
全国のパンシェルジュたちや、これからパンシェルジュを目指す人たちにメッセージをお願いいたします。
パンの世界は知れば知るほど奥深くて、学ぶことが本当に楽しいです。パンシェルジュ検定はただの資格取得にとどまらず、パンに対する視野を広げたり、愛情が深まるきっかけをくれました。これから受験を考えている人は、楽しみながら学んでください。
すでにパンシェルジュとして活動されているみなさんは、一緒にこの素敵なパンの魅力を、もっと多くの人に伝えて行きましょう。パンを通じて広がる縁や発見が、きっと人生をより豊かにしてくれると思います。
■ラウンド食パン工房パンデマルタ
- 所在地
- 神奈川県小田原市南鴨宮3-19-8長田ビル102
- 営業時間
- 10:00~17:00
- 定休日
- 水曜
パンデマルタのラウンド食パンは「rebake」でお取り寄せも可能
https://rebake.me/shops/kanagawa/odawarashi/1142

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