気軽にお得に、ロスパン救済も。「麻布十番モンタボー」鵠沼海岸店に「冷凍パン自動販売機」登場
東京・麻布十番に本店があるベーカリーチェーンの「麻布十番モンタボー」。現在北海道から近畿地方まで約60店舗のパン屋さんを展開しています。その「麻布十番モンタボー」初の冷凍パン自動販売機が鵠沼海岸店に設置されました。担当の上石安寿さんに導入の経緯などお話を伺ってきました。
業界全体が注目する冷凍パンとフードロス。合わせて解決?!
──冷凍パンの自動販売機は、どんな目的で導入したのでしょうか?
今、冷凍食品は食品業界全体のキーワードになっていて、冷凍パンにも注目が集まっています。「麻布十番モンタボー」でも、冷凍パンの自動販売機を導入してみようということになりました。
冷凍することによって賞味期限が長くなり、フードロスの削減につながります。自動販売機なら24時間いつでも、気軽にパンを買っていただけます。買い物するときに人を介さない点もメリットだと考えています。
買ってくださるお客様をイメージして、コンセプトを「いつでも・気軽に・エコに 美味しい手作りパンのワクワクを」としました。
──この鵠沼海岸店は、小田急電鉄江ノ島線の鵠沼海岸駅のすぐそばですが、最初の導入店舗になった理由はありますか?
「麻布十番モンタボー」の中でも鵠沼海岸店は、古くから営業している店舗のひとつで、社内ではトライアル店舗として位置付けています。その一環で、店内のパンは全て国産小麦を100%使用しています。国産小麦で作ったパンはもっちりとした食感になりますが、他にも重要なポイントとして、ポストハーベスト農薬を使用しない安全性の問題、国内で輸送が完結することで環境負荷が少ないことが挙げられます。
こういった鵠沼海岸店の特徴と冷凍パン自動販売機のコンセプトがぴったりだと考えたことから、第1号の冷凍パン自動販売機を鵠沼海岸店で設置することになりました。
冷凍パンのおいしさは、冷凍プロセスよりも焼き上がりにあり
──現在7種類のパンと「セーブレッド」としてパンの詰め合わせが買えるんですね。ラインナップはどのように選ばれたのですか?
食パン、フランスパンといったシンプルなパンの他、クリームパン、あんぱん、揚げパンを最初のラインナップに選びました。もともとクリームやあんこは、冷凍したあともおいしさが保てる食材です。
同時に賞味期限が長い商品を選んでいます。何度も試験を行なったり、食べてみたりして確認を行いました。「麻布十番モンタボー」では、24時間安全においしく食べられるものを販売しています。冷凍パン自動販売機に関しては、品質がさらに長時間保てたものに限ろうということになりました。
冷凍パンは解凍したら、その日のうちに食べていただきたいのですが、解凍してから召し上がるまでの間におかれている条件もあるので、賞味期限の短いパンは向いていないと判断しました。
その条件が「セーブレッド」の販売に影響してきます。「セーブレッド」は守るの「Save(セーブ)」とパンの「Bread(ブレッド)」を合わせて名付けました。形が悪かったり、焦げてしまったりして規格外になったもの、天候の影響などで売れ残ってしまったパンの詰め合わせです。閉店時間にお店にあるパンも「セーブレッド」になるので、より賞味期限が長く、冷凍しても味の変化が少ないパンが対象となっています。
──「セーブレッド」として販売されるパンは全体のどれぐらいになりますか?例えば鵠沼海岸店で日々700~900個のパンを焼いています。平均するとそのうち1割ほどが規格外や売れ残りとしてフードロスになっていました。「セーブレッド」はパン3つを組み合わせたものを10パック、つまり1日30個販売していて、これまでならフードロスとなっていたパンの半数から3分の1を救済できると考えています。せっかく作ったパンですから、もったいない、サステナブルな観点からはもちろん、パン屋のビジネスとしてもフードロス削減はメリットがあると考えています。
どんなパンが入っているのかは買ってみてのお楽しみ。3つ入りで400円とお得な値段なので、お客様にも楽しんでいただけると思っています。
──パンをおいしく冷凍する特殊な方法があるのでしょうか?また、購入した冷凍パンをおいしく食べるためのポイントはありますか?
実は急速冷凍の設備と一般的な業務用冷凍庫で冷凍したものを食べ比べてみたところ、そこにおいしさの差はほとんどないことがわかりました。いちばん大事なのはパンがおいしく焼き上がっていることだったのです。ビジネス的にいうと、急速冷凍のような大きくて特別な設備がお店に必要ないので、冷凍パン自動販売機を多くの店舗でも導入できると考えています。
パンは袋に入れてシーラーで密閉して、冷凍しています。普段からご自宅で食べきれないパンを冷凍される方も多いと思いますが、ご自宅で切り分けて冷凍する場合よりも、しっかり袋を密封している分、おいしさを保つことができています。
召し上がるとき、自然解凍する場合は、袋から出さずに解凍してください。また、冷蔵庫の中で解凍するとしなしなしたり、べちゃっとなったりする可能性があるので避けてください。
電子レンジで解凍する場合は、袋から出して、お皿に載せて、パンの大きさによって目安時間があるので、そちらを参照して解凍してください。どちらも、解凍後にトースターなどで温めていただけるとよりおいしく召し上がっていただけると思います。
購入した冷凍パンは保存されず、その日のうちにお腹の中へ。今後はすぐに食べるパンを充実
──自動販売機という機械で販売するには、賞味期限以外の制約もありましたか?
自動販売機は中で商品が滑り落ちるようになっています。そのために大小2種類のフードパックに入れています。意外なほどフードパックの大きさとパンの大きさがぴったりでした。特に揚げパンはぴったりです。
ただ、取り出し口から取り出すために高さに制限があります。そのため、食パンは1斤ではなく、半斤での販売になっています。
──2022年4月下旬に導入されて、まだ日が浅いですがなにか発見はありましたか?
どちらかというと食パンやバゲットよりも、菓子パン類の方が売れ行きがいいです。つまりお客様は夜に買ったとしても、ほぼその日のうちに食べているのではないか、と。企画段階では、冷凍パンはご自宅の冷凍庫で保存して、何日かに分けて召し上がるだろうと予想していたので意外でした。
このことから、今後はその日のうちに食べるのに適したパンを増やしていこうと思っています。夏に向けて計画しているのはアイスパンです。夏のおやつに食べていただきたいと思っています。
──他には今後、どんな展開を考えていますか?
まずは冷凍の生地玉を販売することになっています。ピザ1枚分のサイズに相当するパン生地になる予定です。ご家族みなさんでピザを作って楽しんでいただくのにぴったりです。
また、「麻布十番モンタボー」として冷凍パン自動販売機をショッピングセンターなどにも設置できないかと考えています。身近な場所に設置することで、たくさんの方に自動販売機でパンが買えるワクワクや、「セーブレッド」を食べることでエコな体験もしていただきたいと思います。
ラーメンや焼き芋などこれまで自動販売機で購入できるとは予想していなかった食品の冷凍自動販売機が登場し、身近な場所でも見かけるようになりました。パンの自動販売機もこれからますます増えるかもしれません。
どのパン屋さんがどんなアイデアで冷凍パンを販売するのか。冷凍しているからおいしいパンの登場に期待したくなりました。
■麻布十番モンタボー鵠沼海岸店
- 住所
- 神奈川県藤沢市鵠沼海岸2-4-8
- 電話番号
- 0466-33-1337
- 店舗営業時間
- 9:00~20:00
- 店舗定休日
- 無
- 冷凍自動販売機
- 24時間営業
- 麻布十番モンタボーHP
- https://mont-thabor.jp