日暮里「パン屋の本屋」がパンの本をきっかけに作る豊かな時間
荒川区日暮里にある「ひぐらしガーデン」は、ベーカリーカフェの「ひぐらしベーカリー」と書店の「パン屋の本屋」がある商業施設です。2016年にオープンして以来、パン屋さんと本屋さんはいろいろなイベントやフェアを行っています。「パン屋の本屋」の店長・近藤裕子さんに、パンの絵本をきっかけにしたフェアと、大人におすすめのパンが登場する本について伺いました。
フェルト工場跡地に生まれた地域に開かれたパン屋と本屋
──「ひぐらしガーデン」はかつてフェルト工場だったと聞きました。
大正6年からこの場所でフェルト工場をしていた親会社が、時代の流れで工場を畳み、新しい事業を立ち上げることになったんです。地域との繋がりを大切にする人たちに、日常的に使ってもらえるような事業はなにか、時間をかけて考えてパン屋と本屋になりました。
書店は「パン屋の本屋」という名前なので、パンの本ばかり売っているのかと思われることもありますが、もちろんそんなことはありません。
子育てしやすい街づくりの助けになりたいという方針で、お店のスペースの半分ほどが絵本や児童書の棚になっています。もちろん一般的な雑誌や実用書もありますし、小説や話題の本も置いています。
「ひぐらしベーカリー」は朝8時から営業していて、週末には家族でカフェに朝ごはんを食べにくる方もよく見かけます。親御さんがゆっくり食事をしている間に、お子さんたちが本屋に来て本を読んでいることもあります。
忙しい子育て中のご家族に、そんな時間があるのはとってもいいことだと思っています。
──パンの本専用の棚がレジの近くにあるんですね。
絵本もパンの作り方の本、それからパン屋さんのガイドブックも一緒に並んでいるのが、「パン屋の本屋」らしいポイントだと思っています。
ここにあるパンに関する本は極一部で、本当はずっとずっとたくさんあるんです。その中から、レシピ本なら頻繁に作れそうなもの、絵本も繰り返し読んでもらえそうなものと、長く手に取ってもらえそうな本を選んで並べるように心がけています。
絵本のフェアではお話に登場するキャラクターがパンに
──パンが登場する絵本のフェアを何度か開かれていますよね。
パンの絵本のフェアは、出版社さんに協力してもらって準備をしています。作家さんが来てくださって自ら読み聞かせをしてくださったり、絵本のパネルにしたものを掲示したりと、期間中にはみなさんに楽しんでもらえるようなイベントも企画しています。
特にベーカリーのシェフが作るコラボパンがすごいんですよ。絵本に登場するキャラクターにそっくりでかわいらしいものが誕生して、あっという間に売り切れてしまうこともあります。
最初は2018年10月に『いもむしパン』(つぼいじゅり PHP研究所 1,430円)という絵本の「いもむしパンフェア」を開きました。「いもむしパン」がオーブンの中ですやすや眠っていると「ちょうちょパン」になるというお話です。
ベーカリーでは「いもむしパン」と「ちょうちょパン」を販売しました。作家のつぼいじゅりさんも来店して、読み聞かせやぬり絵のワークショップを開いて好評でした。
それから、2019年の春には『どうぶつパンやさん』(さとうめぐみ ひかりのくに 935円)のフェアを行いました。この本は前から読むと白くまのパン屋さんがパンを作る話、後ろから読むとこねこがパンを買いに行く話になっていて、真ん中で2つのストーリーが出逢うというかわいらしい絵本です。
ベーカリーでは「ねこクリームパン」など絵本に出てくるパンを8種類用意してもらいました。とってもかわいいパンに仕上がったんですよ。
最近開催したのは、みなさんご存知の『からすのパンやさん』(加古里子 偕成社 1,100円)のフェアです。
シェフはからすのお父さんのパンを横顔と正面の2種類にチャレンジしてくれました。何度も試作をしていたのですが、本当にそっくりのパンになりました。
絵本に登場するパンの絵を、店内のあちこちに掲示して見つけてもらうイベントも行いましたが、子どもたちが楽しそうに参加してくれました。
──プレゼントとして絵本を買いにくる方も多いと思います。パンが登場する絵本で人気があるものはどれでしょうか?
年齢を問わず人気なのは『からすのパンやさん』です。2〜3歳の小さいお子さん向けには『しろくまちゃん ぱんかいに』(わかやまけん こぐま社 880円)。少し大きいお子さんにはいたずらなネコたちが登場する『ノラネコぐんだん パンこうじょう』(工藤ノリコ 白泉社 1,320円)が人気がありますよ。
ラッピングもしていますので気軽に声をかけていただきたいですね。
──最後にパンが登場する本で大人におすすめの本を教えてください。
群ようこさんの『パンとスープとネコ日和』(角川春樹事務所 565円)女性のお客様にとても人気があります。相棒のしまちゃんとサンドイッチとスープの店を営むアキコが主人公で、食べ物の描写が素敵なお話です。
シリーズ5作目の『今日もお疲れさま』(角川春樹事務所 594円)が文庫化されたばかりです。シリーズのファンが多いのだと思います。
秋の小さなお出かけにぴったり「ひぐらしガーデン」
「ひぐらしベーカリー」では、絵本のフェアで登場キャラクターのそっくりなパンが販売されますが、日頃からチョコレートとクリームの「えほんパン」も販売されています。また、お客さんからのアンケートをもとに作られるパンも変わるがわる作られていて、子どもたちにも大人気です。
ひぐらしガーデンの周辺は、ひぐらし小学校など「ひぐらし」と名付けられた施設が複数あります。かつてこの地が“日の暮れるのも忘れる”美しい場所だったことから“日暮らしの里”と呼ばれ、転じて日暮里となったそうです。
「ひぐらしベーカリー」のパンとコーヒーをいただきながら、「パン屋の本屋」で買った本を読むと、時間が経つのを忘れてしまいそう。おいしくてかわいいパンと興味をそそる本を探しに「ひぐらしガーデン」を訪れると、読書の秋と食欲の秋、どちらも満喫できそうです。
■「ひぐらしガーデン」
- 住所
- 東京都荒川区西日暮里2-6-7
- 休日
- 月休(祝日の場合翌日休み)
- HP
- 公式サイト
- 「パン屋の本屋」営業時間
- 10:00~18:00 ※当面の間〜17:00
- 「ひぐらしベーカリー」営業時間
- 8:00~18:00 ※当面の間〜17:00