しとしとと雨が降り続く梅雨は、ベーカリーにとって大敵。不安定な天気のせいで外出の機会が減り、来客数が落ちこんでしまうために5～7月は一年でもっともロスパンが増えます。おうち時間に自分でパンを作る人にとっても、パン生地の発酵に細やかな温度と湿度の調整が必要になる時期でもあります。

今回は岡山屈指の人気店「焼きたてパン広場　おかやま工房　リエゾン」の常務・河上勝史さんに、梅雨の時期にベーカリーで行っている対策や工夫についてお聞きしました。

「焼きたてパン広場　おかやま工房　リエゾン」

自家製酵母と国産小麦100％を使用した、口どけのよいやさしい味わいの生地が魅力。広い店内にある6つの工房からは、「焼きたて・揚げたて・つくりたて」のパンが次々と登場する。なかでも自慢の「牛肉と野菜のカレーパン」（280円）は2019年から５年連続「カレーパングランプリ」で金賞受賞を果たした人気商品！　店では1日に2500個売れることもあるのだそう。

パンづくりにおいて、梅雨の時期にはどのような工夫をしていますか？

生地をこねあげたときの温度が高いと発酵しやすいので、室温が高いこの時期には注意しています。パン生地は非常に繊細なので、当店では工房内の温度を一年中25℃に保っています。それにより時期による生地の変化を最小限に抑え、すべてをマニュアル化することで、いつでもおいしいパンを提供できるようにしています。

客足が落ち込みがちな雨の日、何か集客の工夫はされていますか？

当店ではいろいろなフェアを行っており、特に気分が上がらない梅雨にはみなさんが明るくなれるような内容を意識しています。全国のご当地グルメをイメージしたパンが並ぶ「日本一周フェア」、ハワイアンフードを取り入れた「ハワイアンフェア」、ワインを使った「ワインフェア」などを過去に開催してきました。

そのほか、その日の降水確率に応じた割引を行うイベントや、オリジナルの「カエルパン」の販売を企画して集客を図っています。

店頭では、雨でぬれてしまった方が快適にお買い物できるよう、風除室にタオルを設置しています。お客様への心づかいも、リピーターをつかむ工夫のひとつです。

日によって販売数に変動があるかと思いますが、ロスパン対策はどうしていますか？

できるだけ売れ残りが出ないように製造計画を立ていますが、適切な調整をするべく、その日の天気や降水確率から想定来客数を見極めています。また、焼きたてパンの試食も積極的に行っています。

それでも絶対にロスは発生するので、活用できるパンはラスクやフレンチトーストにします。残りは、翌日勤務するスタッフたちの朝ごはんとして、おいしくかしこく食べきっています。また、取引先の卵屋さんに鶏の飼料として使ってもらうこともあります。

つい買いすぎてしまったパンを、おいしく食べきる方法を教えてください。

当店のパン生地は無添加で、製パン改良剤や保存料などを使用していません。できるだけその日のうちに食べてもらいたいですが、もしも食べきれなかった場合にはパンの味をキープするために冷凍保存をおすすめしています。

大きいパンはカットして小分けでラップに包み、保存袋に入れて密閉のうえで冷凍庫へ入れましょう。このとき、均一な大きさになるようにするのがコツ。表面積が大きいとより早く凍りますし、解凍時に短時間で均等に熱が入りやすいのでおいしく焼きあがります。ただしどんなパンでも、2週間を目安になるべく早く食べきってくださいね。

解凍で加熱するなら、王道のオーブントースターが◎。パンの特性に合わせて温度や時間を調整しやすく、焼いている間に目が離せない焼き網やグリルよりも手間や失敗が少ないので手軽です。あらかじめ自然解凍してから焼くと加熱ムラも防ぐことができますよ！

では最後に『ぱんてな』読者に向けて、メッセージをお願いします。

雨でおうち時間が増える時期なので、家族や友だちと集まって「アレンジパンパーティー」などもおすすめです。ジャムやスプレッドのほか、色とりどりの好きな具材をテーブルに並べて、食パンやクロワッサンをアレンジするんです。サンドウィッチにオープンサンド、ディップスタイルなど、いろんなオリジナルパンを作って楽しんでみてください！

---

梅雨が始まる6月から9月頃までは食品が傷みやすく、水分を多く含むパンも例外ではありません。パンの選び方や食べ方を工夫したり、冷凍テクニックをマスターして、むだなくおいしいパンライフを楽しみましょう。

焼きたてパン広場　おかやま工房　リエゾン

おかやま工房 国富店