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目黒・不動前「BISTRO BAKERY TATSUMI」はレストランが作ったパン屋さん。親しみやすくライブ感ある品揃え
パンやの夜明け

目黒・不動前「BISTRO BAKERY TATSUMI」はレストランが作ったパン屋さん。親しみやすくライブ感ある品揃え

野崎 さおり
野崎 さおり

コロナ禍が始まって以降、いくつものイタリア料理やフランス料理のレストランがパン屋さんを開業しました。2023年3月1日、東京都品川区にある不動前駅近くにオープンした新しいパン屋さん「BISTRO BAKERY TATSUMI」(ビストロベーカリータツミ)もそのひとつです。

中目黒・目黒銀座商店街にある「Bistro Tatsumi」のプロデュースによって、どんなパン屋さんとパンが生まれたのか、「Bistro Tatsumi」料理長・廣瀬亮さん、「BISTRO BAKERY TATSUMI」料理長・三宅優雅さんにお話を伺いました。

BISTRO BAKERY TATSUMI

東急目黒線で目黒駅から1駅目の不動前駅から伸びる不動前駅前通り商店街の一角に2023年3月1日オープン。赤い外観とお茶目な表情のライオンがトレードマークのパン屋さんは、中目黒にあるレストラン「Bistro Tatsumi」がプロデュースしています。

─おすすめ商品TOP5─

・クリームパン
・タツミのフォカッチャ
・新じゃがとベーコンのアルザス
・豚肉の赤ワイン煮込みとりんごのサンドイッチ
・カレーパン

「Bistro Tatsumi」の料理長 廣瀬亮さん 「BISTRO BAKERY TATSUMI」料理長 三宅優雅さん

不動前 BISTRO BAKERY TATSUMI
三宅優雅さん(左)と廣瀬亮さん(右)

廣瀬亮(ひろせりょう)さん
1976年、栃木県出身。大学時代のアルバイトでフレンチの名シェフに出会って影響を受ける。卒業後は中目黒の名店で修行。その後渡仏し、ブルゴーニュ地方、アルザス地方、パリで2年半腕を磨く。帰国後も経験を積み、2011年に中目黒の目黒銀座商店街に内臓料理やジビエなど肉料理を得意とする「Bistro Tatsumi」をオープン。

三宅優雅(みやけゆうが)さん
大学では人文学を学んだもののいつかは自分の店が持ちたいと、岡山の有名店「岡山木村屋」に入社しパン職人の道へ。その後、日本パン技術研究所で製パン理論を学び、都内にある複数の有名店でパンを製造。パンに欠かせない総菜やフィリングの高い技術を身につけたいと「BISTRO BAKERY TATSUMI」の料理長に。

旬の食材やレストランとの連携でライブ感を生むパン屋さんを

不動前 BISTRO BAKERY TATSUMI

店内は品のあるかわいさが素敵。

──なぜレストランの「Bistro Tatsumi」がパン屋さんをやることになったのでしょうか?

廣瀬さん 話の始まりは、コロナより少し前なんです。共同経営者から「レストランで作った総菜を使ったパンを売っているお店が大阪にあった。同じようなことをやりたい」と持ちかけられました。それは絶対おもしろい、やろうということになったんです。僕はすぐにレストランの厨房でパンの開発を進めました。

並行して「Bistro Tatsumi」からすぐ近くの物件を探していたんです。レストランで作った総菜をすぐにパンにしたかったからです。でも、ぜんぜんいい物件が出て来ない。納得のいくパンはできていたのに、納得のいく物件が見つからないまま2年近くが経ってしまいました。それで2022年の夏に、物件探しに本腰を入れようと動き始めて偶然通りかかって見つけたのがこの場所でした。

──場所の決め手はどんなことでしたか?

廣瀬さん この場所は元クリーニング屋さんで、サイズ感がぴったりでした。それにお店の目と鼻の先にスーパー(東京と神奈川を中心に展開するスーパーマーケットオオゼキの目黒不動前店)があることも決め手になりました。

朝、僕がパンに使う食材を選ぶのはもちろん、お客さまもスーパーに並ぶ食材から季節を感じ取ってからお店に来てくれたら、例えばあの野菜がこんなパンなるのか、などと思ってもらえます。レストランが運営するからこそ、季節感のあるパンをライブ感をもって提供したいんです。

調整は難航。レストランのパンから、レストランが持つベーカリーのパンへ

──構想段階からパンの開発をなさっていたのですね。どんなパンにしたいと思われたのでしょうか?

廣瀬さん 最初に働いた店ではパンも作っていたおかげで、知識を持っていたんです。まずは僕が半年をかけて、レストランで焼けるパンとして着地点を作りました。重点を置いたのはもちもちした食感とフレーバーです。多加水で、安定していて、柔らかな食感が親しみやすい、でも他の店にはないフレーバーを意識しました。三宅シェフが加わってからはベーカリーの設備を使うためにレシピを調整しました。

──レストランの設備で作ったレシピをベーカリーの設備向けの最適なレシピにするのはたいへんなのですか?

廣瀬さん これがなかなか。頭を抱えました。

三宅さん 全部で1カ月ぐらいかかりましたね。粉も変更して、イーストの量も、焼き方も発酵時間も調整しました。

不動前 BISTRO BAKERY TATSUMI

最初に完成した「マロングラッセと胡桃のリュスティック」(280円)。バゲット生地を使っていて、スタッフさんからも好評。

──ポイントは粉だったんですか?

廣瀬さん 粉だけではなくレシピ全体ですが、やはり粉は厳選しました。フランス産、イタリア産などいろんな粉を使いましたが、北海道産が甘みもフレーバーもいちばんでした。

三宅さん いちばん多く使っているのは北海道産のキタノカオリです。僕はこれまで外国産ばかり使ってきましたが、やはり国産のほうがもっちり感が出ます。吸水に時間がかかるなど難しい部分もありますが、品質も外国産に引けを取らなくなっていると思います。

人気No.1で職人泣かせ。シュークリームのようなクリームパン

──どんどんパンが気になってきます。今、おすすめのパンについて教えてください。

廣瀬さん いちばん人気はクリームパンです。ちゃんとバニラビーンズや生クリームを入れて炊いたカスタードをブリオッシュ生地で包んでいます。

三宅さん シュークリームみたいなクリームパンを作ってほしいと言われ、薄皮で作りました。とても人気があって、1日の最初に焼けたぶんは、並べると10分ほどで売り切れることもあり、幻のクリームパンと言われつつあります。

とろとろのクリームを生地量の倍は包んでいるので、包餡が難しい上に少しでも弱い部分があると破れてしまいます。窯入れもピンポイントでベストな状態を見極めないと、うまく焼けない難しいパンです。

不動前 BISTRO BAKERY TATSUMI

クリームパン。極薄皮のため、上部が凹みます。

三宅さん 「カレーパン」のカレーは、一般的なカレーパンより中身の水分量が多いので、アツアツを齧るとドロリと溢れます。それがもっちりとした生地と合わさり、噛むほどに味が広がります。

不動前 BISTRO BAKERY TATSUMI

「カレーパン」(260円)。

廣瀬さん カレーにはスパイスをいっぱい効かせていて、おいしいですよ。他にレストランらしいメニューとして、豚肉の赤ワイン煮込みにりんごのコンポートを挟んだサンドイッチを作りました。アルザスという名前のピザ風のパンも人気です。フランスのアルザス地方に「タルト・フランベ」という郷土料理があって、それと同じようにベシャメルソースに玉ねぎとチーズをのせて焼いています。シグネチャーとしているタツミのフォカッチャも好評です。

目指すのは自家製総菜や厳選素材のおいしさに引けを取らないパンづくり

──さすがレストランのパン屋さん。ワインに合わせたくなるようなパンも多いんですね。三宅さんはパン職人として、レストランが運営するパン屋さんの魅力をどんな点だと思っていますか?

三宅さん これまで経験してきたパン屋では工程ひとつひとつで効率を重視してきましたが、この店ではサンドイッチひとつとっても、食べやすいように一口大で細長く成形したり、女性がひとりでも食べ切れるようなサイズにしたりと、お客様の目線で作っています。また、クリームパンやカレーパンのガルニ、惣菜なども一から仕込んでいるので、普通のパン屋さんの感覚とは少し異なります。

それは、廣瀬シェフがパン屋である以上に、ビストロとしての意識をもっているからだと思っています。レストランの目線なんだと思います。

廣瀬シェフが作る総菜はおいしいし、パンに使用する粉も国産の小麦粉、副材料も生地によって数種類使い分けたりと、いいものばかりを使っています。いい素材を作ってくれている生産者さんのためにも、買っていただけるお客様のためにも値段に見合ったおいしいパンをがんばって作っていきたいです。

──まだオープンから間もないですが、今後の展望はありますか?

廣瀬さん「Bistro Tatsumi」は、“アバ(内臓)フレンチ” というトリッパとかハツ、レバーを使った料理が得意なお店です。パテ・ド・カンパーニュやソーセージも内臓入りのものを提供していて、どちらかというとわざわざ来てくれるお客さんが多いお店なんです。

「BISTRO BAKERY TATSUMI」は、今、みなさんが親しみやすいパンを作っていますが、同じようにわざわざ来てもらえるようなパン屋さんにしていきたいと思っています。

もちろん、内臓を使ったお肉の総菜を取り入れたパンやサンドイッチを数量限定でその場で作って出すようなこともしたいと思っています。お店の近くにあるワイン屋さんや別のレストランとのコラボなんかもやっていきたいですね。


赤い外観とトレードマークのライオンがかわいい「BISTRO BAKERY TATSUMI」。いちじくやさくらんぼといった季節のフルーツを使ったパンも並ぶ予定があるそうです。パンが気にいったからと中目黒の「Bistro Tatsumi」を訪れる人も出てきそうです。

■ BISTRO BAKERY TATSUMI

住所
東京都品川区西五反田4-30-11
電話番号
03-5747-9777 (営業時間中は出られない場合有)
営業時間
10:00~19:00(売り切れ次第終了)
定休日
火、第1・第3月

■ Bistro Tatsumi

住所
目黒区上目黒2-42-12 スカイヒルズ中目黒1F
電話番号
03-5734-1675
営業時間
18:00〜21:00LO
定休日
火曜、第3月曜
公式サイト
https://hr-tatsumi.com

WRITER

野崎 さおり

野崎 さおり

ライター。2017年パンシェルジュ検定2級合格。カンパーニュなどのハード系とクロワッサンが好き。旅の目的にはパン屋さん巡りとローカルフードの実食を必ず入れ、旅が「パンの仕入れ」になっていると揶揄されることもしばしば。早起きが苦手なのがパン好きとしての最大の弱点。

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