パンとのアレンジも自在。フランスを代表するチーズ「コンテ」
パンシェルジュのみなさんならご存知の通り、パンシェルジュ検定ではチーズに関する問題が出題されます。世界各国にたくさんのチーズがある中、フランスではひとつの村にひとつのチーズがあるといわれます。そのフランスを代表するチーズがコンテです。コンテチーズ生産者協会 日本連絡事務所の采女さんに、コンテのことやパンを使ったアレンジ方法を教えていただきました。
中世の時代から分業制。歴史あるコンテ作り
──世界にもフランスにもたくさんチーズがある中で、コンテはどんな特徴を持っているんでしょうか?
コンテというのは元々生産地の名称で、フランス東部のスイスとの国境に近いジュラ山脈一帯で作られています。アルプスに近く、雪に閉ざされてしまう冬の保存食として1000年前からチーズが作られてきました。
コンテはフランスを代表する熟成ハードチーズで、うまみは強いですがクセがあまりありません。そのまま食べても、お料理に使っても、もちろんチーズトーストやサンドイッチにも合うチーズです。
生産量もフランスのAOP(原産地呼称保護)認定されたチーズの中でNo.1です。フランスには村の数だけチーズがあるといわれるほど多種多様なチーズがある中で、いちばん親しまれているチーズです。
※AOP認証……限られた地域内で、厳しい規定に準じ伝統的製法で作られた製品を保証するEUの制度。
──つまり、大規模に生産されているんですか?それとも生産者さんがたくさんいるのでしょうか?
コンテは、職人が丹精込めて、もちろん添加剤を使わずに作っています。ただし、分業制なんです。ミルクを作る生産者が2400、その後チーズを作る工房が140、熟成を担当する熟成庫が40とそれぞれの工程を担当しています。このスタイルは1000年以上、14世紀ごろから続いていると言われています。
──14世紀! 日本なら鎌倉時代から室町時代ですね。そんなに古くから分業で作られてきたのには理由があるのでしょうか?
コンテはすごく大きなチーズです。1つの直径が約60cm、高さ10cm、重さは約40kgです。1つ作るのにだいたい20頭分のミルクが必要になります。そのため酪農家たちが協同組合としてミルクを持ち寄って、チーズ作りをするための工房を作ったという背景があります。だから今もチーズ工房は酪農家たちが所有しているんですよ。
──酪農家さんたちが現在の生産システムを作って維持してきたんですね。たくさん工房があると、品質を保つのも大変ではないでしょうか?
ミルクは直径25km圏内の複数の酪農家の生乳を使い、搾乳から24時間以内にチーズに加工して、品質を保っています。一方で、ひとつとして同じコンテはないと言われます。地域ごとの特性、季節による変化、さらに熟成期間による風味の違いがチーズに現れます。牛たちは、1頭につき1ヘクタール以上、だいたいサッカーコート1面より広い面積が用意され、そこに生えている植物を食べて育ちます。例えば春夏は、色とりどりの草花を牛が食べ、冬は春夏の間に刈っておいた乾燥した草を食べるので、また違う味わいへと変化します。牛たちの状態によってもミルクが違い、ミルクの味がチーズに反映されます。
熟成期間は4カ月以上と決まっていますが、長いものは24カ月以上も熟成させます。若いものはミルク感がありますし、12カ月熟成ぐらいで柑橘系やナッツの風味が出ることが多いです。18カ月など熟成が進んだものは、味も濃くなってナツメグやコショウのような風味も出てきます。食感も若いものは弾力があり、熟成するにつれて水分が減り凝縮されるため変わってきます。バランスよく熟成されたコンテは栗のようにほくほくとした食感があるとも言われますね。
うまみたっぷりでクセがなくパンとの相性よし。溶けやすいのでチーズトーストにも
──サンドイッチでもチーズトーストでもおいしいとのことですが、パン好きのぱんてな読者に、パンとの組み合わせでおすすめはありますか?
フランスのチーズなので、バゲットやカンパーニュなどのフランスパンと合わせていただくと存分に楽しんでいただけると思います。いちじくが入っているハード系のパンとも相性がいいですよ。
もちろん日本の食パンにも合います。食パンは高級でふわふわなものより、甘みが少なくシンプルで生地が詰まったパンが合うと思います。溶けやすいのでスライスしたコンテでチーズトーストにするのがおすすめです。
──他の食材と合わせたアレンジ方法はありますか?
チーズ好きなプロの方々に紹介していただいたパンと合わせたレシピがあります。
チーズプロフェッショナル協会会⻑、本間るみ子さんが教えてくださったのが、「コンテのチーズトースト、フレンチマスタード風味」です。バゲットに粒の入っていないマスタードを塗って、コンテをのせて焼きます。マスタードの爽やかな風味がアクセントです。これはフランス人たちも「試したことがなかったけれどおいしい!」と絶賛していました。
コンテは、はちみつと相性がいいので、パンと食べるときもぜひ合わせてみてください。カンパーニュをトースターで温めて、そこにスライスしたコンテをのせて余熱で溶かします。そこにはちみつをかけます。これは「チーズマン」こと清水啓介さんが教えてくださいました。コンテは24カ月熟成のものと合わせてみると、コクが感じられますよ。
もうひとつ、チーズマンさんが考案なさったのが、「コンテの目⽟焼きチーズトースト、⿊トリュフ風味」です。食パンのフチにコンテで土⼿を作って、中央に卵を落としてトースターで焼きます。最後に黒トリュフ塩を振りかけて仕上げる贅沢なチーズトーストです。
コンテは作られた季節や熟成の進み具合で、さまざまな風味を感じます。そのうち代表的なのが、ナッツやキノコの風味なので、マッシュルームと合わせるのもおすすめです。
日本チーズアートフロマジェ協会の村瀬美幸さんが考えてくださったのは「コンテのチーズトースト、ハム&マッシュルーム」。パンとハムの間にコンテを挟むので、溶けたコンテのおかげで食べやすいです。さらにコンテをたっぷりのせて、マッシュルームもトッピングします。キノコの風味が引き立ちます。
ナッツの代表としてクルミを合わせるレシピもおすすめです。こちらも村瀬美幸さんのおすすめですが、バゲットにシュレッドしたコンテをのせ、クルミをトッピングしてトースト。仕上げにはちみつ、さらに黒コショウをかけます。クルミの香ばしさや苦味、はちみつの甘さとチーズのミルク感は相性がいいですよ。
──いろいろな組み合わせが楽しめるチーズですね。
コンテはうまみが強いですが、塩分は100g中約0.8gと少ないチーズです。その分、少しクセがあるものとも相性がいいと思います。例えば、同じジュラ山脈付近で作られているジュラワインは酸味の強いものが多いのですが、産地が近いこともあって、コンテと相性がいいです。日本酒、烏龍茶とも相性がいいですし、熟成が進んだものならスモーキーなウイスキーとのペアリングもおすすめです。
まずは、そのまま食べていただきたいですが、薄くスライスしたり、棒状に切ったりと、切り方によっても感じ方が変わるので、ぜひ試してみていただきたいです。
──製造された季節や熟成期間によっても味や風味が変わるそうですが、食べてみないとわからないものでしょうか?
秋から冬に作られたチーズは白っぽく、春から夏に作られたものは牛が食べた草花のカロテンの影響で少し黄色味が濃いです。熟成が進んだものは、外皮が厚いといった特徴があります。
チーズ専門店で聞くことができるといちばんいいと思います。コンテの公式サイトにショップリストがあるのでお近くのお店を探してみてください。デパ地下の専門店や成城石井などの高級スーパー、カルディコーヒーなどの輸入食材店にも売られています。
まずひと口食べて、どんなパンや飲み物、食べ物と相性がいいか考えるのも、食が好きな人ならとても楽しいのではないでしょうか?
コンテチーズ生産者協会のInstagramでもおいしい食べ方を紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
食が豊かでパンの種類も豊富なフランスを代表するチーズ、コンテ。100グラム600円から2000円ほどで販売されていることが多いそうです。自分の好きなパンとの相性を試してみてはいかがでしょうか?
■コンテチーズ生産者協会
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