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シェフを質問攻め! ぱんてな×DEAN & DELUCA オンラインイベントレポート
オンラインイベント

シェフを質問攻め! ぱんてな×DEAN & DELUCA オンラインイベントレポート

野崎 さおり
野崎 さおり

食のセレクトショップ「DEAN & DELUCA」のベーカリーシェフに「ぱんてな」編集部が直撃したオンラインイベントが2021年11月7日(日)に開催されました。多数の応募から30名のぱんてな会員が参加。2人のベーカリーシェフにパンの開発からおすすめのペアリングまで、ぱんてな編集部が参加者を代表して根掘り葉掘り聞いちゃいました。

ニューヨーク、SOHO生まれの「DEAN & DELUCA」

DEAN & DELUCA

左から岡部静香シェフ、吉川幸一シェフ、司会を担当したぱんてな編集部の江口。

世界各国、日本の津々浦々からおいしいものばかりを集めた食のセレクトショップ、「DEAN & DELUCA」。ブランドの始まりは1977年のニューヨーク、SOHOです。ジョエル・ディーン、ジョルジオ・デルーカという2人の創業者によって開かれました。

日本に上陸したのは2003年のこと。そのときオープンした丸の内店が、アメリカ以外では初の店舗となりました。そして現在「DEAN & DELUCA」は日本全国7都市に48店舗が展開されています。

「DEAN & DELUCA」といえば、デリなどのプリペアドフード、缶詰めなどのパッケージフードやスイーツなど目移りしてしまうおいしそうな食品のほか、ハウスウェアなど食にまつわる様々なカテゴリーの商品が用意されています。それから、ロゴの入ったトートバックを愛用しているという人も多いかもしれませんね。

パンはもちろん、マフィンやスコーンなど、ベーカリー商品はバラエティに富んでいます。キッチンのない店舗は自社工房から、キッチン併設店舗ではオーブンから出てきたばかりの焼き立てが店頭に並びます。

その商品を開発している吉川幸一シェフと有楽町店でベーカリー製造・開発を担当する岡部静香シェフがオンラインイベントに参加してくれました。

参加者がよく買う「DEAN & DELUCA」の商品は?

今回、オンラインイベントに参加した約30名のぱんてな会員。事前アンケートでは、「DEAN & DELUCA」でスコーンやマフィンなどペストリーを購入する機会が多いという方が何人もいました。

もちろん食事パン派も。

アンケートでは、2021年4月に発売された「しっとり山食パン」のおすすめの食べ方を教えてくださいという質問が寄せられていました。

しっとり山食パン
吉川シェフが開発した「しっとり山食パン」。

「しっとり山食パン」の開発を担当した吉川シェフによると

「しっとり山食パン」は、水分量にこだわったパンです。多めの水分と湯種で仕込んでいて、日本人の舌にあうしっとりもっちりした食感を狙って開発しました。

合わせるのはシンプルにバターがおすすめですが、噛みごたえのあるパンなので、カットするとき、厚くしたり、薄くしたり、厚みを変えて試してもらいたいですね。

小麦は北海道産をメインに何種類かブレンドしているそうです。

ドリンクとのペアリングについても教えてほしいという声がありました。岡部シェフは、この時期限定のコーヒーがおすすめとのこと。

赤い袋に入ったウインターブレンドというコーヒーがあります。コクのあるコーヒーで、甘いパンやマフィンのほか、クリスマスシーズンのドライフルーツやチョコレートを使ったパンやペストリーと合わせてもおいしいです。

紅茶派の人へのおすすめはありますか?との質問があがると、岡部シェフからおすすめが。

クリスマスに向けて「シュトーレン」、「ベラベッカ」、「パンデピス」といったドライフルーツを使った商品が発売されます。こういった商品に合わせていただきたいのが、「クスミティー」の「アナスタシア」です。香りが華やかなので、相乗効果が生まれます。

「アナスタシア」という名前も素敵な響き。リッチな冬のパン菓子と一緒にいただいてみたいですね。

シェフのお気に入りは、どちらもチーズを使ったパン!

ここでシェフが個人的におすすめするパンを聞いてみました。すると2人のシェフは、共通してチーズを使ったパンを挙げました。

「チーズインブール」

吉川シェフのおすすめは「チーズインブール」。

山食パンと同じ、高加水の生地を使っていて、グリュイエルチーズと2種類のチーズをブレンドしたものを練り込んで、高温で短時間で焼き上げています。表面には香り付けのためにドライのタイムをふりかけてアクセントにしています。
チーズが好きな方におすすめです。
あまじょっぱさが魅力の「チェダーメイプルクロワッサン」。

岡部シェフのおすすめは、「チェダーメイプルクロワッサン」。

クロワッサンの上にチェダーチーズをのせて、焼き上がりにメープルシロップを塗っています。焼き立ては飲み物かと思うほどあっという間に食べられてしまうおいしさで、イートイン席のある店舗で働いていた時は、お昼に毎日食べていたほど好きなパンです。

その声に参加者から続々と反響が!

焼き立てが提供されるのは岡部シェフがいる有楽町店のほか、新宿店とJR東京駅構内にある八重洲店など。お出かけのついでに寄ってみたくなりますね。

次にシェフに教えてもらったのは、おすすめのアレンジ方法です。吉川シェフは、「チーズインブール」のアレンジを教えてくれましたが、その方法が驚き!「チーズインブール」を横にスライスして、フレッシュな果実感の強いジャムをのせてトースターで焼くというもの。

ジャムはトーストしてからのせることが多いと思うんですけど……。

ジャムをパンにのせてからトーストすると、果肉感を一層引き出すことができます。焼き上がりにバターをのせたり、ブラックペッパーをアクセントにかけてもおいしいですよ。

意外性があって、すぐにでもやってみたくなるアレンジです。

岡部シェフのおすすめは、バゲットをシンプルなサンドイッチにすること。

切り込みを入れたバゲットに有塩バターを塗って、プロシュートコッドというハムと、チーズを挟み込みます。素材の味だけですが、シンプルな分、バゲットの味も香りも感じられます。有塩バターを使うのがポイントなので、たっぷり塗ってみてください。

おいしい素材が集まる「DEAN & DELUCA」だからこそ、シンプルに仕上げたサンドイッチがおいしく感じるのかもしれません。バゲットと一緒にハムやチーズも買って、作ってみたくなりますね。

お店へ急げ! 今しか食べられない季節の限定パン

季節の商品もたくさんある中で岡部シェフがぜひ食べてほしいというのが「栗とピスタチオのバゲット」です。

素直においしいと思います。バゲット生地にピスタチオを練り込んで、成形するときにラム漬けにした渋皮栗を大胆に巻き込んでいます。栗は練り込んでいるのとは違って、食べた時にダイレクトにごろっと感じます。ラムの香りに加えて、ピスタチオの香ばしさも感じられます。
中央の渋皮栗と練り込まれたピスタチオが堪らない「栗とピスタチオのバゲット」

代表して司会のぱんてな編集部江口がその場で試食させてもらったところ、

栗がゴロっと入っていて、ラム酒の香りと栗の香りの相性がいいですね!

バゲットはクラムがもちもちでクラストがカリッとしてます。栗がやわらかいけれど食感がしっかりしていて、ピスタチオとの食感の違いもアクセントですね。

おいしい!

と一瞬、職務を忘れた模様。

「栗とピスタチオのバゲット」は、店舗限定で販売されている商品。有楽町店では1日に2回焼いていて、新宿店や八重洲店でも展開されています。

こっそり教えて! DEAN & DELUCA ベーカリー開発裏話

そして今回参加者のみなさんから、ぜひシェフに聞いてほしいという声が多かったのが商品開発の裏側。新しい商品は考案から発売までどのような過程を経るのでしょうか?吉川シェフが詳しく話してくれました。

最初に開かれる企画会議からひとつの商品ができるまでに必ず3カ月ぐらいかけています。

企画会議では、ラインアップのうち、スタンダードメニュー、シーズンのメニュー、そしてテーマに合わせたものといった、いくつかあるカテゴリーからどのカテゴリーの商品を作るかが決まります。

その決定をもとに、それから我々ベーカリーチームが開発を開始。

1ヶ月かけて試作品を食べてもらうプレゼン会に挑みます。このプレゼンには営業や販促のチーム、製造のメンバーも参加して、ディスカッションを行います。そのときの意見を元に見直しをして商品を仕上げます。お店に並ぶまでには社内の意見を加味。納得いくものに仕上げています。

岡部シェフ

悩んだときは、キッチンのメンバーとも相談しますが、特にDEAN & DELUCAがメインターゲットとしている年齢層の販売スタッフの意見は参考にします。「悪いことも正直に言って」とお願いしています。

吉川シェフ

身近にいるキッチンのメンバーに、メニュー開発を見せることを大切にしています。オーナーシェフのいる個人店と違い、全部で48店舗あるので、店舗のスタッフに作り手の思いが伝わりづらいです。だから、出来上がったものを食べてもらって、コメントをもらうことがとても大切なんです。その過程で商品に命が入っていくように感じています。

このコメントの後「カッコつけすぎましたね」と吉川シェフはちょっと照れくさそうでしたが、48店舗もある「DEAN & DELUCA」では、パンを作ることと売ることの距離を縮めるためにも、試行錯誤や工夫が必要なのかもしれません。

さて、「DEAN & DELUCA」のベーカリーで名物メニューといえば、オレオクッキーがマフィンに突き刺すようにトッピングされている「クラッシュチョコレートマフィン」。


その開発をしたのは、実は吉川シェフなんです。

2012年、新宿にベーカリーを中心とした店舗を作ったタイミングで開発した商品です。実は、10日ほどの短期間で全メニューを新しくするぞ、という追い込まれた中で生まれました。お客様をワオと驚かせるようなビジュアルにインパクトのある商品を、と考えていました。そうしたら偶然、オレオがそばにあったんです。

オレオがたまたまそこにあったから生まれた商品がロングセラーになるなんて!マフィンの中はマシュマロが入っていて、その食感も人気の秘密。今では「DEAN & DELUCA」ベーカリーのアイコンのような存在になっています。参加者の中でも食べたことがあるという方がたくさんいました。

後半には参加者の皆さんから、更なる質問を受け付けました。

岡部シェフ

私は「DEAN & DELUCA」らしさだと思います。

だから、私たちだからできるパンを意識しています。甘いものは甘いとか、辛いものは辛いとか。ベーカリー以外の料理人がたくさんいるのも「DEAN & DELUCA」の特徴だと思います。例えば、グリーンカレーのレシピをプリペアドフードの担当者からもらってベーカリーでアレンジを考えました。グリーンカレーが苦手な人は食べられないような、特徴をはっきりさせるようなパンです。

そして吉川シェフ

「DEAN & DELUCA」らしさ。よく社内で言いますが、結構難しくて重要なことです。

ブランドとして、クラシカルなものやルーツが分かるものを店に揃えているという面はあります。一方で、ルーツを知った上で、あえて何かひとつ崩して遊び心を出す。そういうことが「DEAN & DELUCA」っぽい。そういう部分を大切にしています。

最後にパン作りの魅力について伺いました。

岡部シェフ

毎日同じパンを作っていますが、やはり仕上がりは毎日違うんです。すごくよく仕上がった日には、周りのスタッフに「見て見て!今日めっちゃよくない?」と見せにいってしまいます。売り場のスタッフ達も、「おいしそう!」とか「いい匂いがする!」「これ絶対私たち売りますね」と言ってくれることがあります。そういうときに、この仕事はやめられないと思います。

吉川シェフ

今日参加してくださった方にもパンを作る方がいらっしゃると思いますが、パン作りを長くやっていても答えは出ないし、正解がわからないところがあると思います。パンを作るのは難しくて、答えが見つからないから楽しくて、ずっと継続してやっていけるのだと思います。

最後にみなさんで記念撮影をしてオンラインイベントを終了しました。

「DEAN & DELUCA」のラインアップは、他のパン屋さんとどこか違う──そう感じていたパン好きさんも多いはず。「DEAN & DELUCA」らしさはどんなところに現れているのか、買い物に訪れるたびに注目してしまいそうです。

■DEAN & DELUCA

WRITER

野崎 さおり

野崎 さおり

ライター。2017年パンシェルジュ検定2級合格。カンパーニュなどのハード系とクロワッサンが好き。旅の目的にはパン屋さん巡りとローカルフードの実食を必ず入れ、旅が「パンの仕入れ」になっていると揶揄されることもしばしば。早起きが苦手なのがパン好きとしての最大の弱点。

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