株式会社パレスホテルが新たにブーランジュリーブランド「Et Nunc（エトヌンク）」を立ち上げました。お店は4月23日に渋谷区代官山にオープン。一流ホテルを運営する会社が町のパン屋さんとして開いたお店「Et Nunc Daikanyama」はどんなお店なのでしょうか？ プレス発表会にお邪魔してきました。

「パレスホテル」が手掛ける毎日食べたくなるパン

東京駅からも近い便利な場所にある「パレスホテル東京」。ホテルの地下1階にあるペストリーショップやネット通販でも販売されるパンは、パン好きの間でも品質の高さが知られています。その「パレスホテル東京」を運営する株式会社パレスホテルが代官山にまちのパン屋さんとして新たなブランドをスタートさせました。

そのブランド名「Et Nunc」はラテン語。英語ならand now（そして今）という意味とのこと。ブランドストーリーとして綴られた文章には“焼きたてのおいしいパンを「今」食べるという偉大で小さな幸せは、すべての人の目の前にある。”とありました。

ホテルは非日常的な空間ですが、ホテルを飛び出して開いた「Et Nunc Daikanyama」では、毎日食べたくなるパンを提供。国産小麦にこだわるなど、「パレスホテル東京」とは異なるブランドとして、パンの商品開発が行われました。

「Et Nunc」の立ち上げとパン開発を手がけているのは、星敏幸さん。1990年にパレスホテルに入社して、30年以上のキャリアを持ち、2012年から「パレスホテル東京」のベーカリーシェフとして活躍しています。

「Et Nunc」の立ち上げにあたって、毎日の食卓に選ばれるためには素材のおいしさが大切だと、日本各地の製粉会社から粉を取り寄せたり、現地に赴いたり。パンの性格にあった粉が厳選されています。

すべてが繊細で高品質。「Et Nunc Daikanyama」で買えるパン

バゲットは2種類用意されています。「バゲット」は佐賀県産のさちかおりという、日本で初めてフランスパン用として作られた小麦を使っています。さちかおりが持つ甘みと香りが感じられ、クラストがカリッとしていて、全体的に軽い食感が印象的です。

お店の名前を冠した「Et Nunc バゲット」は、オリジナルの「Et Nunc ブレンド」を使用。シェフの星さんが理想の味を追求、挽き方にもこだわった数種類の北海道産小麦がブレンドされています。小麦自体の香りと甘みを引き出し、余韻が残るほど長く保たせたいと作られた粉です。「Et Nunc バゲット」も歯切れが良く、小麦本来の甘みを長く感じられます。

均一なきつね色が美しい「パン ド ミ」は、茨城県産小麦ゆめかおりを使用。発酵に自家製のルヴァン種とホップ種を使っています。この自家製酵母がシェフが15年も継ぎ足して、いわばあたためてきた酵母。ホップ種の存在がトーストしたときのクラストのザクッとした食感につながっています。

クラムは密度が高くてふんわり。シェフによれば「一般的な食パンよりも砂糖も塩も少ないです。バターも少なめ。足しすぎず引きすぎず調整した」とのこと。リーンすぎず、リッチすぎず、毎日食べても飽きない味わいに仕上がっていました。

「クロワッサン」は、数種類の北海道産小麦を自家配合したブレンド小麦で作られています。バターは北海道産を使用。「バターに負けない、小麦の香りがしっかりする、脂っこくなく、毎日食べたいクロワッサンを作りたい」と開発されました。

繊細なクラストと巻きが密でしっとりしたクラムのバランスが絶妙です。小麦の香りを出し、バターの香りがとばないギリギリまで焼き上げているそう。

「チャバタあんばた」は、星さんお気に入りの粉、北海道産キタノカオリで作られています。挟み込まれているのは北海道産の発酵バターとオホーツク産エリモ小豆のあんこ。特にバターは「このバターがなかったら、チャバタあんばたは作らなかった」と星さんが話す特別な存在です。

「あんこやバターが途中ではみ出ないように、最後までパンと一緒に味わえるように作りました」との言葉の通り、全体的に食べやすく作られています。チャバタの軽くパリッとしたクラストと、もっちり感と歯切れのよさが両立したクラムのコンビネーションに驚きました。

洗練されたインテリアの店内。イートイン用のサンドイッチはボリュームあり

「Et Nunc Daikanyama」はイートインスペースがあり、プレートメニューも複数用意されています。

カウンターに冷蔵ケースがあり、その中にサンドイッチなどをディスプレイ。ボリュームがあってランチにもぴったりです。

季節限定の「春野菜のタルティーヌ」は、「パン オ ルヴァン」を使用。星さんによると「『パン オ ルヴァン』のようなしっかりしたパンに向いている」と北海道産のはるゆたかを使っています。

「春野菜のタルティーヌ」は、ミルクとバターでグリーンピースの甘みを引き出したペーストが塗られて、さらに緑の野菜を美しく盛り付けられています。ライムが加えられていて爽やかです。

試食したパンはどれも繊細で品質の高さがひと口で感じられるものばかり。一方で、星さんは「特別なものではなく、日常的なものであってほしい。カジュアルに味わえるパンを揃えたお店にしたい」とも話してくださいました。

暮らしにすんなり溶け込む「Et Nunc Daikanyama」のパン。一度食べるときっとまた食べたくなるはずです。