うまいもののセレクトショップ「久世福商店」でパンに合うアレコレが続々生まれるワケ
北は北海道、南は沖縄まで、全国の百貨店やショッピングセンターなどに店舗を構える「久世福商店」。万能だしや柿の種などさまざまな商品が並びますが、パン好きさんがいちばんに思い出すのは、あんことバターをひとつにした目から鱗のスプレッド「あんバター」かもしれません。「久世福商店」で買い物していると「パンに合う」というポップが書かれた商品がいくつも目につきます。
なぜ「久世福商店」でパンに合う商品がいくつも生まれるのか。開発チームの井上聡一郎さんにお話を伺ってみました。
海苔の佃煮とバターをひとつに。ごはんにもパンにもいける惣菜を作ろうと思った
──まず「久世福商店」について教えてください。
会社名は株式会社サンクゼールといって、長野県に拠点があります。「久世福商店」はサンクゼールのなかでも、“ザ・ジャパニーズ・グルメストア”をコンセプトとしたブランドです。全国からうまいものを集めたセレクトショップとして日本的な商品を中心に揃えています。
もうひとつ、「サンクゼール」というブランドもあります。こちらは、ワインやジャム、パスタソースなど洋風のものを製造販売しているメーカーとしてのブランドです。
私が所属している開発チームはブランドにかかわらず、自社工場で作る商品を開発しています。「久世福商店」では他にも全国のメーカーさんと一緒に開発もしていますが、そちらはバイヤーチームが担当です。
──井上さんはこれまでにどんな商品を開発されたのでしょうか?
「久世福商店」ブランドで手がけた商品として、いちばんの代表作は「あんバター」です。2018年に発売開始した商品ですが、SNSに投稿してくださるお客様も多く、TVや雑誌で取り上げられたこともあって人気商品となりました。リピーターになってくださったお客様からは、もっとたくさん入っている商品が欲しいというご要望があり、大きなサイズも販売しています。
「海苔バター」も私が担当しました。こちらは、海苔の佃煮を元にした商品で、惣菜として開発しました。ご飯に合わせることを考えて作った商品ですが、開発している時点で、パンにも合わせて食べてもらいたいとも思っていたんです。
──「あんバター」とパンの組み合わせには納得しますが、「海苔バター」の誕生とパンとの関係が気になります。
プレミアムな海苔の佃煮を開発することが前提でした。最初はオーソドックスな「黒海苔佃煮」と「あおさ海苔佃煮」という2種類を考えていましたが、あれこれ考えているうちに、「そういえば食パンには、スライスチーズと海苔の佃煮をのせてトーストしたり、スライスチーズと焼き海苔を重ねて巻いたりする食べ方があるな」と。だったら海苔の佃煮はバターとも合うんじゃないか、と遊び心半分で試作をしてみました。それが社内でも評判がよかったんです。
もちろん試作の段階から、パンにも合わせてもらうことを考えていました。海苔の佃煮とパンの組み合わせは、試したことがない方はなかなか思いつきませんよね。新しい食べ方の提案ができると期待していたところ、発売してすぐに予想以上の反響をいただきました。正直なところ、ここまで売れるとは思っていなかったんですよ。
パンに合うおいしさは「サンクゼール」ブランドでも
──海苔とバターをひとつにする発想がすごいですね。ジャムやスプレッド以外に実はパンとの組み合わせ狙った商品は他にもあるんですか?
「サンクゼール」ブランドに「4種のチーズ&ベーコン」という、開発チームの若手による商品があります。チーズフォンデュをヒントにした4種類のチーズを入れたソースとして開発しました。同じカテゴリのソースは何にでも合うソースとして販売していますが、それぞれ「特に揚げ物に合う」などの隠れテーマがあります。この「4種のチーズ&ベーコン」は「思わずパンが食べたくなる」をテーマにしています。
特にトースト前にパンに塗ってから焼くと、ソースがこんがり仕上がっておいしいと社内でも好評でした。お客様にも「パンに塗ってもおいしいですよ」と提案しています。
「4種のチーズ&ベーコン」と同時に開発していた「コーン&マヨ」という商品もあります。こちらは、つぶつぶのコーン入り。コンビニの「コーンマヨパン」を見て、パンに好きなだけコーンマヨをのせて食べたいという気持ちから開発したものです。こちらはサンドイッチに応用してもらうような提案もしています。
ジャムから始まった会社だから、パンとの相性も大切な要素
──開発段階で、パンと合わせることを意識することが多い印象ですが、どうしてでしょうか?
パンとの組み合わせは常に意識していると言えますね。弊社の製造販売がジャムから始まったということもあると思います。また会社の経営理念として、「常に失敗を恐れずに新しいチャレンジをしていくことで成長する」という考えがあります。
会社全体としても風通しのいい組織なので、チーム内でも新しい知識を共有して、開発技術を高め合っていこうと日々切磋琢磨しています。
例えば「あんバター」は、今の滑らかさを出すまでにとても苦労しました。最終的にチームメンバーからのアドバイスがきっかけで、いい滑らかさや舌触りに辿り着いたんです。
食品開発は、「新しい情報に常に触れていく」積み重ねによって、次の商品、発想につながるものです。「コーン&マヨ」ソースを作った若手がコンビニのパンから着想した例もありますが、私もスーパーや道の駅でいろんな商品の表示部分などをチェックしてしまいます。食品開発の仕事が長いせいか、もう職業病のようなものです。
──ぱんてなの読者には「あんバター」や「海苔バター」のファンも多いです。開発者の井上さんから、改めて注目してほしいポイントはありますか?
特にこだわっているのは原料です。例えば「あんバター」は、複数のあんメーカーから取り寄せたいくつものあんこの中から、北海道産の小豆を使った小豆の香りがしっかりと感じられたものを選びました。また、何度も試作して実現した、滑らかさも自慢です。パンに塗りやすく、舌触りもよく仕上がっているので、香りも舌触りも両方楽しんで食べてもらえたら嬉しいです。
「海苔バター」の海苔は、煮ても元の形状が残っているものを、醤油は、国産丸大豆醤油を使用しています。どちらも一般的な海苔の佃煮より、かなりいい材料を選んでいると思います。着色もしていないので、海苔と醤油の自然な色、そしてバターと組み合わせた風味も楽しんでもらえると思います。
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「久世福商店」からちょっと目先の変わった商品が色々と生まれるのには、会社が生まれた背景や、開発担当者自身の探究心や遊び心が元になっているようです。
別々が当たり前だった食べ物を組み合わせたり、パンの新しい味わい方を生む商品が、今後も「久世福商店」や「サンクゼール」から生まれることを期待しています。
■「久世福商店」オンラインショップ
https://kuzefuku.com
※写真はすべてサンクゼール提供
今回、ぱんてな読者のために久世福商店の代表作「あんバター」のプレゼントをご用意いただきました。是非ご応募ください。応募はこちら