伝統を受け継ぐあんぱんと革新的な挑戦との両輪で次の100年へ 東京・巣鴨「喜福堂」
喜福堂(東京都豊島区巣鴨)
あんぱんで有名な「喜福堂」は、おばあちゃんの原宿としてメディアでも取り上げられることの多い巣鴨地蔵通り商店街にあります。創業は大正5(1916)年。深川で創業したあと関東大震災を機に、現在もお店のある巣鴨に移転し、地元の人を中心に100年以上もの間、おいしいパンを販売してきました。
〒170-0002 東京都豊島区巣鴨3-17-16
※都営地下鉄三田線「巣鴨」駅下車 A3出口 徒歩4分、JR山手線「巣鴨」駅下車 徒歩5分
OPEN:10:00-18:00<売切れ次第終了>
定休日:火曜日(祝日、4の付く日は営業)
※店舗や商品に関する情報は直接お店にお問い合わせください。
人気商品
・こしあんぱん
・つぶあんぱん
・クリームパン
・クリームボックス
・カレーパン
金子幾雄さん
100年以上の歴史を持つ「喜福堂」の4代目として生まれる。大学卒業後約3年間「喜福堂」で働くも、祖父(2代目・当時社長)から外の社会で経験を積むよう促され、17年間会社員生活を送る。2016年に「喜福堂」に復帰。曽祖父、祖父、両親が築いてきた「喜福堂」の伝統の味と、会社員時代の経験を生かして新たなチャレンジを行っている。
お店の歴史について教えてください。
初代である曽祖父が深川でパン屋を開いたのが大正5(1916)年です。関東大震災のあとに巣鴨に移ってきました。曽祖父の代では、ある程度の規模の会社として切り盛りしていたようです。曽祖父は腕利きの和菓子職人がいると聞きつけた祖父をヘッドハンティング。祖父が2代目になりました。だからあんこに自信のある、和菓子の技術の入ったパン屋になったんです。
「喜福堂」といえば、やはり「あんぱん」! 受け継いだレシピにどんなこだわりがありますか?
祖父が確立したあんこは、氷砂糖と上白糖の門外不出の黄金比に秘密があります。滑らかに練り上げるのはもちろん、甘さにキレを出すことが絶対です。
あんこのキレというのは、口に入れた瞬間は甘いと感じるけど、すっとその甘さが消えていくということです。一度食べてもらうと甘さが抑えられているように感じてもらえるはずです。
自分の代になって材料のこだわりを強めました。値段が高騰したこともありましたが、北海道産をずっと使っています。同時に北海道の中でも十勝産小豆だけを使った「こしあん」と、北海道産でも希少な品種「しゅまり」を使った「つぶあん」も販売し始めました。
お米は有名な産地や品種があって、みなさん、味を楽しんでいますよね。あんこもそれと同じように、こしあんとつぶあんという区別だけでなく、産地や種類でも違いを楽しんでもらいたいという革新的な試みです。「パン屋さんでこんな高級な小豆を選んでいるところは滅多にない」と言われることもあって、自信を持っておすすめしています。
つぶあんは炊くところまで、こしあんは濾してもらって生あんになっている状態まで製あん所さんにお願いしています。製あん所さんも私も、お互い4代目。あんこのおいしさを楽しんでもらいたいという気持ちを共有できていますよ。
金子さんが「喜福堂」を継ぐと決めたのはいつ頃ですか?
大学4年生のときです。大学を卒業してまず3年間店に入りました。父が中学生のときに亡くなったので、いろいろ教えてくれたのは祖父です。ある日、祖父から「技術は教えられるけど、会社を持つということは、それだけではない。外の社会で生きてみろ」と言われたんです。それで他の企業で働いて17年間、いろいろな経験を積んだことは、今、お店の経営やマネジメントに生きていると思います。
2016年に店に戻ってきて、まずは王道のあんぱんを、それまでより広めることを考えました。催事への出店を積極的に行うようにしたのも、その考えからです。その頃には祖父はもう亡くなっていたので、見える形で孝行できなかったのは残念に思っています。
2020年12月にお店をリニューアルされました。どんな狙いがありましたか?
コロナ禍に突入してすぐ危機感を感じ、「お客様が安全で安心して、お買い物ができること」をテーマにいろいろと考えて店舗を改装しました。絶対に必要だと思ったのは、店頭販売スペースです。お店の中でお客様が密にならずに、人気ベスト8のパンを買えるようになりました。同時に通販サイトも改修して、安心してパンを買ってもらえる仕組みを整えました。
イートインスペースも、カウンター席をメインがいいだろうと。リモートワークの途中に寄ってくれるといいなと思ってコンセントも設置しました。
すでに100年以上続いてきた「喜福堂」ですが、これからはどんなお店にしていきたいですか?
和菓子職人だった祖父が完成させたあんこやカスタードを作り続けて、伝統の味を守るのはもちろんです。ただ伝統を守っているだけでは、さらに100年後まで店を続けることは難しいと思っています。
そこで、新商品の開発もしています。キタノカオリストレートを使った「四代目」という食パンを作ったり、埼玉西武ライオンズの外崎修汰選手のご実家、外崎りんご園のりんごを直接仕入れて「りんごぱん」を作ったりしました。
伝統と革新的な挑戦との両輪で、100年先の代に受け継いでいきたいですし、お客さんに喜んでもらえることに一生懸命である会社でありたいと思っています。
最後に、ぱんてなの読者にメッセージをお願いします。
まだ「喜福堂」のパンを食べたことがない方は、ぜひあんぱんとクリームパンを食べてみてください。一度ファンになっていただいたら、次に来たときには新しいなにかを見つけてもらえる、刺激のあるお店にしたいと思っています。