お得な直売所あり!東京・成増で病院や高齢者施設のパンを手掛ける「富士食品」
東京都板橋区の成増にある「富士食品」は、病院や高齢者施設で食べられるパンを中心に作っています。誰もがお世話になる可能性のある病院や施設で食べられるパンや、種類豊富なパンがとても安く買える直売所の秘密など、代表取締役の平岩春雄さんに伺いました。
5グラム単位の対応力で、150以上の病院や施設にパンを提供
──「富士食品」はいつ営業を開始したのですか?
会社は平成8(1996)年にスタートしました。初めは近所の工場を借りていましたが、今の場所に引っ越してきました。
私自身は大学を卒業して金融の会社で働いた後、親戚が経営していたパンの会社を手伝うことになってパンに関わることになりました。そのパンの会社がバブル崩壊でなくなって、一緒に働いていた従業員何人かと会社を始めることになったのです。だから私はパン作りはできないのですよ(笑)。
──最初から病院や老人福祉施設のパンを作っていたのでしょうか?
元の会社は学校給食のパンがメインでしたが、学校は長期の休みが多いですよね。それが経営上のネックでした。そのため、「富士食品」では病院と老人保健施設向けのパンを作ることにしました。現在は東京都内、神奈川や埼玉の病院や施設、150以上にパンを卸しています。
──病院向けのパンを作る上で難しいことはありますか?
病院では食パンやバターロールのようなご飯の代わりに主食になるパンが主力です。患者さんの食事は、カロリーがきっちり計算されていますね。だからパンは重さが重要で、うちでは5グラム刻みで大きさを変えて作るようにしています。
食パンは4枚切りから10枚切りと厚みで対応できますが、ロールパンだと生地の分割時点で最終的な重さが変わります。分割機という機械の設定も5グラム刻みで変更する細かい仕事です。
さらに病院は、入院患者さんの数が日々変わるので、それに応じて注文数も変わります。無駄がないようフレキシブルな対応を心がけているのも強みです。
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窯出し中。 -
パンは包装されて出荷されます。
──特殊なパンを作ってほしいというリクエストもあるのでしょうか?
いちばん大変だったのは熱心な栄養士さんから、ごぼうの葉が入ったパンを作ってほしいと言われたときです。ごぼうの葉っぱが血糖値改善にいいという情報があったらしいのですが、ごぼうの葉なんて流通していませんから、埼玉の農家に頼んで仕入れました。それなりにおいしいパンになりましたが、どうやら病院内では不評だったというオチがつきました。
塩分に制限がある方向けに無塩のパンも作っています。塩なしで焼いたパンがおいしくないのはご存知の通りです。塩が入れられない分、甘みを多めにすることで無塩のパンの中ではおいしいと言われるものができるようになりました。
またパンはどうしてもぱさついて食べにくいから、どうにかならないかと言われたこともあります。その解決にはこんにゃくの粉を使っています。保水力があって、しっとり感が出ますよ。
会社としてそういったリクエストに応じられているのは、私がパン職人ではないからでしょう。変わった材料を入れてパンを作ろうと話すと、やはり現場と意見が合わないこともあります。依頼を受けるのが職人さんだと、そんなことできないと断ってしまうのではないかと思います。
直売所もリクエストに応えていたら種類豊富に。地域還元の精神が安さの秘密
──病院や施設向けには食パンやロールパンを作るいっぽうで、売店にはいろんな種類のパンがびっしり並んでいますね。
「富士食品」は受注生産でパンを作っています。高齢者施設からはあんぱんとかクリームパンのようなオーソドックスなおやつ用のパンの注文もあります。いずれにしても、多めに作りますよね。
工場を引っ越す前も余剰分として安く販売していました。ご近所の方に好評だったので、今の場所でも小さな店舗を作ることにしたのです。いらっしゃるお客さんから「こういうパンないの?」という要望に応えていたら、種類が増えて、まるでディスカウントストアみたいな雰囲気になりました。
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お店の袋に詰め放題のパンはこちら。食パンとロールパンが中心です。 -
詰め放題は、持ち手の高さまでOKで190円。相当入っています!
──カレーパンは100円だし、ハムカツサンドは130円。本当に安いですよね。
そもそも卸しの会社ですから、小売でも卸しに近い値段にしています。配送の手間もかかりませんからね。パン工場はそれほどご近所に迷惑をかける訳ではありませんが、においが気になる方もいるでしょうし、朝早くからトラックが行き来もします。その分、地域の方に安くパンを提供しようと考えています。
おかげで遠くから買いに来てくださる方もいて、ありがたいですね。ご近所のお年寄りから「ここのパンがなくなったら困るわ」と仰る方もいて、地域や社会に貢献できていることを実感できています。
培った技術ときめ細やかな対応力で新しいパンづくり
──創業された27年前と今とでは、社会もパンを取り巻く市場や環境も大きく変化しています。これからの展望はありますか?
同じことだけをやっていると企業の寿命は30年といわれます。だから色々新しいことを考えています。しばらく前からOEMで高級食パンを作ったり、居酒屋やレストランでパンを売りたいという声に応えたパンを作ったりもしています。
そして今、開発しているのが動物性のものを一切使わないヴィーガンの食パンです。バターの代わりに太白ごま油を使ったり、牛乳の代わりにオーツミルクを使ったりして作っています。ちなみにココナッツミルクやアーモンドミルクも試してみたのですが、オーツミルクがいちばんでした。
ヴィーガンというと、おいしくないというイメージがあると思いますが、おいしく仕上がっています。パンが好きな「ぱんてな」の読者のみなさんにも試してもらいたいですね。
富士食品の直売所では、人気のカレーパンや、動物の形をしたかわいいパン、サンドイッチなどパンの種類が豊富です。そしてお手頃!賞味期限が近いパンはさらに安く売られていたのも見逃せませんでした。
人気の詰め放題にチャレンジしていたら、スタッフさんにもっと大丈夫ですよと言われたので、コッペパンや食パン2枚入りの袋や、ロールパンなど、遠慮なくいろんなパンを入れました。食パンなら2斤入るそうですよ!
パン好きとしては、歳を取ったり、体調が悪くなったりしてもおいしくパンを食べたいと思うはず。「富士食品」のようなパン工場が、ますます食べやすくおいしいパンを作り続けてくれることを期待しています!
■富士食品
- 住所
- 京都板橋区成増2-35-10
- 営業時間
- 月~土 11:00~18:30 日祝~18:00
- 定休日
- 年末年始・お盆
- 電話番号
- 03-3938-1021
- 公式Twitter
- https://twitter.com/fujifood_pan