二子玉川「BLUE POPPY Bakery」で味わいたい、ニューヨーク帰りのシェフが作るパン
東急電鉄田園都市線二子玉川駅からほど近い場所に、2022年4月28日「BLUE POPPY Bakery(ブルーポピーベーカリー)」がオープンしました。世界中の美食家に愛される有名レストランで活躍していたシェフがニューヨークから帰国して開いたお店です。シェフの山口哲也さんとマネージャーの山口めぐみさんご夫妻に、おすすめのパンなどお話を伺いました。
有名フランス料理店、ロブショングループでパン部門の責任者を経験
──まずシェフの経歴を教えていただけますか?
哲也さん:大学を卒業後に「シェ・リュイ」でパンの修業をし、その後、恵比寿にある現在の「ジョエル・ロブション」に移りました。2002年にシェフに就任して、後にロブショングループ・パン部門の統括責任者になりました。
ニューヨークに拠点を移したのは2015年です。「ロブション ニューヨーク」や数店舗のレストランのパン部門責任者として約6年間。その間は世界各国にあるロブショングループのレストランなどでパンのトレーナーも務めました。
──帰国されてお店をオープンされたのは、やはりコロナ禍の影響が大きいのですか?
哲也さん:2020年から始まったコロナ禍で、ニューヨークもロックダウンしました。多くのスタッフが解雇(レイオフ)されるなか、私はレストランに残り、デリバリー営業をしていました。
デリバリー営業でも出勤する必要があり、私を含め他のスタッフもコロナに罹患するなど店への影響は甚大で、デリバリーもストップする事態になったんです。一時は他のプロジェクトに誘われましたが、それもコロナ禍の影響で頓挫しました。それなら日本に戻って自分の店を開こうということになりました。
コンセプトはBREAD BAZAAR。自由で制限のないパン屋を
──お店のコンセプトはありますか?
哲也さん:BREAD BAZAAR(ブレッドバザール)です。バザールとは、中東の市場、マーケットのことです。以前訪れたイスタンブールのマーケットで感じた雑多でワサワサした雰囲気が印象に残っています。2015年から約6年暮らしたニューヨークの雰囲気と似ているんです。
ニューヨークは世界中から沢山の人が集まっていて、食材やスパイス、もちろん料理も世界中のものを見かけます。イタリア系の人やユダヤ人も多く、食文化にも彼らの影響があります。雑多だけれど、自由でエネルギッシュな雰囲気に溢れていて、とても気に入っていました。
同じように自由で制限のないパン屋を作りたいという思いを込めて、Bazaarというコンセプトを考えました。
──だから「BLUE POPPY Bakery」には世界の食文化から影響を受けたパンが並んでいるんですね。
哲也さん:パンは本来、食事と一緒に食べるものだと思っているので、食事用のパンをメインに作っています。「カントリーブレッド」はプレーンのほか、マルチグレイン、レーズン、フィグ、ウォールナッツも作っています。他にもコーンミールブレッドや食パン、イスラエルのピタパンのようなナチュラルでシンプルな生地を食べていただきたいと思っています。
「アオサパン」、「ポップオーバー」、「パン オショコラ」など菓子パンや惣菜パンもおすすめです。
──めぐみさんは販売を担当されていますが、人気のパンはどれですか?
めぐみさん:3種類あるフォカッチャは来店される度に買ってくださるお客様がいます。生地にマッシュポテトを少し混ぜ込んでいるため、水分量を保つ生地になっていて、中はしっとり、まわりはサクッとした食感を楽しんでいただけます。
うちのお店らしいフォカッチャは、モロッコのスパイス、デュカを使った「モロッカンフォカッチャ」。クミンやコリアンダー、アーモンドを入れていて、香ばしく仕上げています。
ピタパンも人気です。日本では平べったい袋状のものがよく売られていますが、もちもちふんわりとした生地で厚く焼き上げていて、すでにファンになってくださったお客様もいます。
本当は全部おすすめと言いたいところですが、私のおすすめは、シェフが3日間かけて作っている全粒粉のパン。ぜひ召し上がっていただきたいですね。全粒粉のパンにはバターミルクやモラセスというシロップが入っていて、このお店ならではのパンだと思います。
ニューヨークの思い出があちこちに。ワークスタイルもアメリカン
──お店の雰囲気づくりや接客で気をつけていることはありますか?
めぐみさん:お客様にワクワクを感じていただける、居心地のいいお店にしたいです。商品の説明や召し上がり方の提案をしながらお客様と会話をする、そしてその事をスタッフが楽しめるようなお店になればいいですね。
──店内のインテリアも素敵ですね。
哲也さん:せっかく自分の店だからと、自分で店に置くものを選びました。なかでも、ニューヨークで見つけた「BAKERY」と書かれた看板は気に入っています。当時住んでいた自宅から車で30分くらいの農場に置いてあって、一目惚れしたんです。ニューヨークでの日々を思い出させてくれる大切なもののひとつです。
──海外での経験を生かしたパンとお店づくりになっているんですね。6年ぶりに日本でパンを焼かれて、今の日本のパン業界をどう感じていますか?
パンの仕事をして27年になります。海外で仕事をしてみて、日本のパンはおいしく、世界でも通用すると感じました。日本のパン屋さんはみなさん真面目でストイックだからかもしれません。
いっぽうアメリカでは、プライベートの時間や家族を大事に考えて仕事している人がほとんどです。それと比べると日本のパン屋さんは、ケーキのような時間のかかるデコレーションをしたパンも並んでいて、しかも値段が手頃です。日本でパン屋さんになりたい人が減っているのは、一生懸命なパン屋さんがちょっと損をしているせいでは?と思います。
そういったことを踏まえて、「BLUE POPPY bakery」ではシンプルなパンを中心に、日常的にお客様に楽しんでもらいたいと考えています。それから、何より自分が仕事を楽しむことも心がけています。
シンプルなパンがメインとシェフは言うものの、ナッツやスパイスの使い方に特徴のあるパンや、スコーンやクッキーなどアメリカンな焼き菓子も含めて、並ぶのはあれもこれも食べてみたい魅力的な商品ばかり。めぐみさんをはじめ、販売スタッフのみなさんが明るく気さくなところも素敵なお店です。
二子玉川はデパ地下に有名店が並ぶ、パンの激戦地のひとつ。魅力的な路面店の誕生で、街の魅力がまたひとつ増したのではないでしょうか?
■BLUE POPPY Bakery
- 住所
- 東京都世田谷区玉川2-12-7 NSEビル 1F
- 電話番号
- 03-5797-9560
- 営業時間
- 10:00~18:00 ※売り切れた場合、早めに閉店することあり
- 定休日
- 月・火