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甘じょっぱさがくせになる!台湾サンドイッチ「洪瑞珍(ホンレイゼン)」の魅力に迫る!
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甘じょっぱさがくせになる!台湾サンドイッチ「洪瑞珍(ホンレイゼン)」の魅力に迫る!

梶原 綾乃
梶原 綾乃

2023年4月に高田馬場にオープンした「洪瑞珍(ホンレイゼン)」は、日本初の台湾式サンドイッチ専門店。台湾で1947年に創業し、韓国でもすでに約360店舗も展開されている「三明治」(サンミンチー=サンドイッチ)が話題を集めています。今回は、「洪瑞珍(ホンレイゼン)」を運営する社長の黄哲誠さん、社長アシスタントの楊舒婷さんにお話を伺いました。

台湾はもちろん韓国でも大人気の「甘じょっぱいサンドイッチ」

──そもそも台湾サンドイッチとは、どういうものなのでしょうか。

ハム(324円)。ハム、卵、マヨネーズが入っています。

台湾サンドイッチは、薄焼きの卵、ハムやチーズなどの具材が挟まっている三角形のサンドイッチで、中に甘じょっぱいマヨネーズとバターペーストが塗られているのが特徴です。前身はフランスのサンドイッチで、それを食べた台湾人が、我が国でも再現してみようとできあがりました。当時の台湾は貧しかったので、厚みのあるハムや卵は使えませんでしたが、具材は薄くても鉄板で焼くことで、香りとおいしさを出したといいます。

台湾は歴史にもあるとおり、さまざまな国の文化が入り交ざっています。日本の統治時代には、台湾に日式のマヨネーズが入ってきました。そのマヨネーズと卵をパンで挟んだものが、今の台湾サンドイッチの原型です。その後アメリカ軍の影響で、バターやハンバーグ、チーズなどが台湾に入ってきました。台湾サンドイッチが2枚のパンではなく4枚でできていて、真ん中にも具材が挟まっているのは、ハンバーガーのように食べられるからなんです。

「いちご」(296円)のような甘いフレーバーにも、中央にはチーズが挟まっている。

──なるほど、いろいろな国の影響があるんですね。洪瑞珍さんは、いつごろからサンドイッチを作っているのですか?

洪瑞珍の1号店は、1947年にオープンしました。その当時のサンドイッチは看板メニューではなく、あらゆる商品のなかのひとつ。メインは月餅でした。台湾では結婚式の引き出物として大きな月餅を配る文化があるんです。サンドイッチが注目され始めたのは2000年代で、有名な香港のブロガーが自身のブログで紹介したことで、国内はもちろん香港にも広まっていきました。2017年には韓国に進出して、現在360もの店舗があります。2020年には香港に、そして2023年には日本に店舗をオープンしました。

──韓国ではすでにポピュラーなお店なのですね!台湾でも、相当根強い人気なのではないでしょうか。

韓国の人には、韓国が発祥だと思われていたくらい国民的なサンドイッチになりました。台湾では、食べたことがない人がいたとしても、名前は必ず知っているくらい有名になりました。台湾には、全国誰でも知っている大手パンメーカー──日本で言うと山崎製パンのようなものがなくて、ローカルな個人店がとても多いです。洪瑞珍が広く知られていることは、珍しいケースだと思います。

台湾の人は、台湾のブランドが世界に知られることにとても誇りを持っていて、洪瑞珍もそのひとつです。世界で有名なシェフたちも洪瑞珍で働いていますし、台湾で愛されていて、世界で台湾の味を守っているベーカリーだと自負しています。

食べてみればわかる「手づくりのおいしさ」を実感してほしい

──個人店が多いなかで、台湾を代表するほど有名になったのはとてもすごいですね。手づくりを大事にされているということですが、なかなか大変ではないのでしょうか。

パンの耳を落とし、スライスする工程や、中に塗るバターペーストづくりなど、全部いちから行っています。台湾のレシピはそのままに、食材は日本のものを使用。朝は7時半くらいから、1日3回のできあがり時間に合わせて製造します。手づくりはとても大変ですが、それが洪瑞珍のこだわりでもあります。新鮮でおいしいサンドイッチをお届けしています。

できあがり時間がわかるようになっています。

製造はセクションごとで分けられています。製造工程を説明すると、まず3斤あるパンから上下をカットします。真ん中のやわらかい部分のみを使うことで、「このサンドイッチはやわらかい」と思ってもらえるようにしています。次のセクションにバトンタッチするときは、最初にカットしたパンをのせ、表面の乾燥を抑えます。続いて、具材をはさんでマヨネーズとバターペーストを塗ります。ここでペーストを全体に均等に塗ることにもこだわっています。

──安く、大量生産されているサンドイッチの中には、具材やペーストが寄っていて、残念な思いをしたこともあります。

そういう経験ありますよね。洪瑞珍ではそれがNGで、最初から最後まで同じ量のペーストを食べていただきたいという思いがあります。現代人は忙しくて「丁寧に作れる時間」がないと思うんです。なので、丁寧な手づくりを心がけています。マヨネーズも自家製で、これは他の人には真似ができない味だと思います。包装紙も、ほかのサンドイッチ屋さんでは絶対見かけない、特別なものを使っています。サンドイッチがなるべく空気に触れないようにすることで、食感と味を守っています。

分解してみると、具やペーストがしっかりと丁寧に作られていることがわかります。

作っているところを見ていなくても、食べてみれば、手づくりのサンドイッチとそうじゃないサンドイッチの違いが伝わると思います。ひとつひとつ丁寧に、まるで自分の子どもみたいに真心を込めて作っているので、ぜひ食べてみてください。

日本の台湾サンドイッチは、台湾よりもおいしい!?

──日本上陸にあたって、こだわりや工夫についてもぜひ教えてください。

日本に出店するにあたり、台湾の本店の人が何度も視察に訪れ、試食を繰り返しました。その結果、日本の洪瑞珍は「台湾よりもおいしい」という評価をいただきました。とくに日本のバターは台湾のものよりもなめらかで香りもよいので、おいしく仕上がっているんだと思います。そのぶんカロリーや価格は上がるのですが、このおいしさならば納得できるラインだと、本店のお墨付きです。

日本のお店では、毎週日本限定の味を出していて、みかん、りんご、桃、栗など、季節に応じて日本の季節を感じられるような商品になっています。また、少食な人や親子に向けて、ハーフサイズも用意しました。上がチーズで下がハムなど、半分づつ分けてもらえるようなものです。まだ日本に出店して間もないので、どういう味が日本人の好みなのかとか、この季節はこの味、というものは勉強中です。商品を開発しながら、みなさんの反応を見ていきたいと思います。

──日本で販売しているフレーバーは、台湾とは違うんですか?

満漢(マンハン)、ハム、チーズ、いちご、ブルーベリー、全粒粉チーズ、全粒粉ハムの7品が日本の定番商品ですが、台湾も同じです。台湾では「タロイモ」を使ったタロイモチーズやタロイモポークフレークという味がだんだん定番になっています。日本ではまだタロイモの味に馴染みがない人も多いと思うので、反応を見ていきたいと思います。ランダムで登場しますので、ぜひためしてみてください。

台湾の水出し茶は、水を継ぎ足せば3回ほど楽しめるようです。

今夏はツナサンドも出しました。ツナは台湾や韓国でも存在しないフレーバーで、日本でしか食べられないです。飯田橋駅前にキッチンカーで出店をした際に、とても人気でした。サラリーマン、OLの方が多い街なのと、リーズナブルなのもあったと思います。日本でサンドイッチといえば、ツナのイメージが強いかもしれないです。今後、出店場所や客層にあわせて、定番商品を買えていきたいと思います。

──サンドイッチは朝・昼に食べることが多いので、オフィス街ではとてもありがたがられると思います。

台湾でもサンドイッチは朝ごはんによく食べるものなので、忙しい朝にさっとコンビニなどで買うというシーンが日本と同じだと思いました。洪瑞珍サンドイッチは、甘じょっぱいのが特徴ですので、オフィスでのおやつや子どもの夕食前のつなぎなどにもよく合うと思います。日本では、サンドイッチは「食事」、フルーツサンドは「スイーツ」のように、ジャンルがわけられている印象ですが、洪瑞珍は食事にもおやつにもなるサンドイッチだと思います。

──おっしゃるとおりですね。最近のフルーツサンドは大ぶりで、まるでケーキのようです。

大きくて分厚いフルーツサンドまでは食べられないけど、ちょっとフルーツサンドっぽいものを食べたいとき、洪瑞珍のサンドイッチはおすすめです。手頃な値段で、冷蔵庫で3日間と日持ちもします。

──高田馬場に出店されて、反応はいかがですか。

今年の4月に出店して、まずは台湾人の方がたくさん来てくださいました。しばらくしたら周囲の学校が夏休みに入ったので、半分くらい人がいなくなったと思いましたが、ご近所のママさんが大量に購入してくださったりして。朝ごはんを作るのが大変なとき、土日にお友達が遊びにくるときなどに利用してくださっています。私(※楊舒婷さん)もママで、子どもはブルーベリーの味が大好きです。同じような思いを持って頑張っているママさんたちに安心しておいしく食べてもらえるサンドイッチだと思っています。

訪問時の商品パッケージデザインは期間限定のものです。イベントなどに合わせて都度変わるそう。

キッチンカーや催事の出店もしているので、高田馬場以外のお客さんと触れる機会もあります。出店の機会があれば、いろんな方々に会いにいきたいと思います。会いに来ていただけるのはとてもありがたいですし、私たちも会いにいきたいと思いますので、地域を問わず発信していきたいと思います。


食事はもちろんおやつにもちょうどよく、甘じょっぱくてくせになる、洪瑞珍サンドイッチ。おふたりは「他国のいろんな文化を吸収して、よりよいものを残してきた台湾らしさが、「台湾サンドイッチ」によくあらわれている」と語ってくれました。そんな台湾誇りのサンドイッチを、日本でもいただけるのはとても嬉しいことだと思いました。

■洪瑞珍(ホンレイゼン)

住所
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場2丁目8−5 ワシヤビル
電話番号
03-6709-6476
営業時間
10:30~19:30(売り切れ次第終了)
定休日
不定休

WRITER

梶原 綾乃

梶原 綾乃

編集者/ライター。
お菓子やパンを作ったり、食べたりすることが好き。
ご当地パンの包装紙を収集中。「サラダパン」が大好き。

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