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【「パンのフェス2024春 in 横浜赤レンガ」初出店】日本酒づくりの技術を活かしたハードパン!兵庫県・伊丹市「Itami Bakery」
パンやの夜明け

【「パンのフェス2024春 in 横浜赤レンガ」初出店】日本酒づくりの技術を活かしたハードパン!兵庫県・伊丹市「Itami Bakery」

田辺 容子
田辺 容子

2016年に初開催されて以来、延べ100万人以上が来場している日本最大級のパンイベント「パンのフェス2024春 in 横浜赤レンガ」。今年は2024年3月1日(金)~3日(日)の3日間にわたって開催されます。それに先がけて、『ぱんてな』では初出店のパン屋さんを紹介します。

ItamiBakery,伊丹,兵庫県

お店のロゴマークには、パンを背負っている鴨のイラストが描かれています。「伊丹の市の鳥が鴨なんです。いい小麦を探して、いいパンを焼いて、鴨が持っていくというイメージです」と山中さん。

今回は兵庫県伊丹市にある「Itami Bakery」の代表・山中政弘さんに、「パンのフェス」への意気込みやパンづくりへの想いについて伺いました。

「Itami Bakery」について教えてください。

2020年、兵庫県伊丹市にオープンした「ルヴァン(発酵種)製法」で作るハードパンのお店です。小麦は北海道産と兵庫県産の有機栽培にこだわり、自家製粉もしています。またドライフルーツ以外のパン材料は、基本的に国産のものを使っています。

パリの老舗パン屋「Poilâne(ポワラーヌ)」で働いていたフランス人シェフがいる東京のお店で修行し、そこでルヴァンのパンづくりを教えていただきました。開業当初はハードパン以外も焼いていたのですが、その時の思い出がすごく残っていて、徐々にハードパンへ切り替えていくようになりました。

夫婦ふたりで営業しています。私は新潟生まれで、伊丹は妻の出身地。伊丹という土地が清酒発祥の地(※)と言われているんですけれども、勉強していくとルヴァンと日本酒の製造工程がすごく似ていることに気づきました。そこで「生酛(きもと)造り」という昔ながらのお酒づくりの製法をルヴァンに応用したところ、すごくいい発酵になったんです。具体的に言うと、酸味がすごくまろやかになった。日本酒の作り方を応用したハードパンというのが当店の特徴です。

※奈良市とする説もあります。

Itami Bakery,兵庫県,伊丹

木目調の温かみのある店内には日本酒樽もディスプレイ。

パンづくりへの思いを教えてください。

江戸時代から日本酒の仕込み水として使用されていた「老松丹水(おいまつたんすい)」を使用しています。「老松丹水」は、ミネラルが多く含まれている水(中軟水)です。ミネラルは発酵とすごく関わりがあるので、パン生地にとってほどよくいい発酵になるんです。

小麦粉は必ず、直接お会いした農家さんのものを使っています。農家さん・生産者さんから直接お話を聞いて、どんな人が、どんな思いで、その材料を育ててくれたのかというのを感じながらパンを焼くと、また思い入れが変わるんですよね。

どこの誰が作ったか分からない小麦粉を使っていた時代もありました。やっぱり思い入れがなかったからか、うまく焼けずに捨ててしまうことも多かったと思います。こうした経験から「顔が見えるパンづくり」も大事にしています。

itamibakery,伊丹,兵庫

もとはお菓子屋さん志望だった山中さん。東日本大震災のボランティアで被災地へパンを持って行った際、現地の方が感動する顔・喜ぶ姿を見て「パンは人に生きる力を与えてくれるものだ」と感じたことをきっかけに、2011年頃パン職人の道へ。

当店のパンは、作った日から1週間〜商品によっては2週間冷蔵保存で日持ちします。乳酸菌が出す「乳酸」が、雑菌の繁殖を抑制する力があるので、保存性がいいんです。

乳酸菌と酵母菌の種生地で作ったパンは、冷蔵庫に入れたほうが保存性が良くなって味が深まるので、一石二鳥なんです。ゆっくり噛みしめて食べていただくと、後味にほのかなうまみや余韻を楽しんでいただけます。焼いた当日よりも2~3日目ぐらいの方が味が均一になり、よりおいしさを感じられる。そういうところもパンとお酒って結構似ているんですよね。焼きたて(搾りたて)と、熟成したものそれぞれの良さを楽しめます。

日本酒の勉強をしていくなかで、味噌や醤油など日本伝統の発酵食についても研究するようになりました。いい材料を使いながら日本の伝統技術を応用していけば、もっと心に響くパンづくりをしていけるんじゃないかなと思っています。

「パンのフェス」で食べてほしいおすすめのパンを教えてください。

ブリオッシュ,Itami Bakery,伊丹,兵庫県

「ブリオッシュ~Brioche~」。有機全粒粉と豆乳のほか、船岡養鶏場さん(兵庫県宝塚市)の平飼い卵、北海道産の発酵バター、種子島産の洗双糖、「自凝雫塩(おのころしずくしお)」という淡路島の海水を鉄釜で40時間かけて炊き結晶化させて作られた塩が使われています。

おすすめは「ブリオッシュ」です。ブリオッシュというと、ふわふわした菓子パンのようなものが一般的ですが、うちのブリオッシュはヨーロッパの田舎の方で食べられている「ブリオッシュ・ペイザンヌ」と言われる、どっしり目のパンです。軽くあぶって、後のせで薄くスライスした発酵バターをつけていただくのがおすすめです。

材料に国産の有機全粒粉と有機豆乳を入れているのですが、豆乳は自家製です。豆乳マシーンを使い、北海道・本別町にあるオフイビラ源吾農場さんの有機大豆(ユキホマレ)と、「老松丹水」で作っています。こうした作り方をしているのは全国的にうちぐらいではないでしょうか。

itamibakery,伊丹,兵庫,ミッシュ,パン

「ミッシュ 〜Blés de Population Bio〜」。現代小麦・スペルト小麦・ライ麦を混ぜて育てられた貴重な小麦を使用して作られています。

他には「ミッシュ」もおすすめです。ナッツのような香ばしい風味と、モチモチした食感が特徴の食事パンです。こちらは自家製粉した中川農場さん(北海道音更町)の自然栽培有機小麦全粒粉と、「自凝雫塩(おのころしずくしお)」、「老松丹水」で作っています。生ハムやクセのあるチーズ(青カビタイプやウォッシュ系)とあわせていただくのがおすすめの食べ方です。

最後に、「パンのフェス」出店への意気込みをお願いします!

関東でパンを販売するのは東京での修行時代以来で、「Itami Bakery」としては初めてになります。ハードパンのいいところは、日持ちがいいことに加え、チーズや生ハムなどとのマリアージュを楽しんでもらいやすいところです。こうしたハードパンのおいしい食べ方をもっと伝えていきたいなと思います。

もともとは海外から伝わったルヴァンのハードパンですが、日本酒の作り方を応用しているというところで、日本人にあった酸味の出方とか、中身は日本人の心意気みたいなものを感じていただけたら嬉しいなと思っています。


選び抜かれた材料と日本ならではの発酵技術を活かして作られる「Itami Bakery」のハードパン。ぜひ「パンのフェス2024春 in 横浜赤レンガ」会場でチェックしてみてくださいね!

Itami Bakery

■店舗情報

住所
兵庫県伊丹市千僧6丁目9 タカラビル103
電話番号
080-3407-3161
営業時間
11:30〜17:30 ※パンがなくなり次第終了
営業日
木曜日・金曜日

WRITER

田辺 容子

田辺 容子

1990年滋賀県生まれ。製菓製パン材料を販売する会社でWEBデザイナーを経験したのち、印刷系の制作会社でライターとして勤める。現在は文化芸術を支える仕事の勉強中。好きなパンはシナモンロール。

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