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関口真優さんに聞く、リアルでかわいいミニチュアパンづくりの世界
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関口真優さんに聞く、リアルでかわいいミニチュアパンづくりの世界

辻 美穂
辻 美穂

粘土などでパンを精巧に再現した「ミニチュアパン」。ハンドメイド通販サイトなどで人気のジャンルで、SNSなどで多くの作品が発表されています。

なかでも話題なのが、クレイアート作家の関口真優さんの作品。リアルでかわいいミニチュアパンやスイーツなどの作品を発表し、数多くの書籍を出版。その世界に幅広い世代が魅了されています。

今回は、そんな関口さんにミニチュアパンの世界について、作り方のアドバイス、お好きなパンの種類まで、いろいろお話をうかがいました。

関口真優さん

関口真優さん

独自に考案した上品で繊細なスイーツやパンなどのミニチュア作品を得意とし、2008年に著書を出版したのをきっかけに、テレビや雑誌等でスイーツデコレーション作家として紹介される。その後、「パステルスイーツ 関口真優スイーツデコレーションスタジオ」(現「関口真優クレイアートスタジオ」)を設立し、海外でも講座を展開するなど、指導者としての道も確立。その技術とクレイアートの楽しさをグローバルに発信している。また、現在では料理の樹脂粘土作品にも意欲的に取り組むなど、創作のフィールドをさらに拡げている。2014年8月発売「樹脂粘土でつくる かわいいミニチュアパン」(河出書房新社)や、2015年7月発売の「樹脂粘土でつくる かわいいミニチュアサンドイッチ」(河出書房新社)など、著書も多数。

ブログをきっかけにプロの作家としてスタート

──ミニチュアスイーツやパンを作り始めたきっかけを教えてください。

もともと食べるものと小さいものが好きで、子どもの頃から集めていた「シルバニアファミリー」などに合うような、小さな食べものがあったら楽しいな、かわいいなとずっと思っていました。食べものは全般的に好きですが、小さくてかわいいものをと考えると、やはりスイーツやパンかなと思いまして、主婦になってから空いた時間に作り始めたんです。

当初は趣味として遊ぶ感覚で作っていたのですが、作品をブログで紹介していたところ、出版社に声をかけていただきまして。2008年6月に「はじめてのスイーツデコ雑貨」(マーブルトロン)を出版したのをきっかけに、プロの作家として活動を始めました。

まずはこれを使いたい!ミニチュアパンづくりの基本的な道具

──ミニチュアパンを作るときは、どのような道具を使うのですか?

まずは質のいいピンセットと、とてもよく切れるカッターです。ピンセットの場合は、先端が鋭利なものです。繊細な模型など作るときに使うようなものがいいので、ホビーショップなどで販売しているものがいいですね。カッターについては、一般的に販売しているもので大丈夫ですが、何回も使っていると切れ味が悪くなるので、こまめに新しい刃に替えるのがおすすめです。

筆選びも重要です。私が使っているのは、模型の会社が作っているものですが、ちょっとコシのある平なものを選ぶのがコツです。パンの色を塗るときは、水分は極力少なめにして、軽く叩きながら塗っているため、先端のコシが強くて広い筆の方が色が塗りやすいです。

関口真優さん

関口さん愛用の主な道具。「カラースケール」(左)は、粘土を簡単に計ることができるので、初心者には特にマストアイテムだそう。生地の質感を表現する「歯ブラシ」は、毛先が揃っているものが、均一に力が入りやすいためおすすめ。意外に安価なものが向いているそう。

最初は100円ショップのものを使うのもひとつの方法ですが、ミニチュアパンづくりを始めたばかりの頃は、道具が手助けになる面もあります。作業性が向上すれば、ストレスなくミニチュアパンづくりを楽めると思いますので、最初に道具を揃えるときは、お伝えしたポイントで選んでみてください。

──材料もすべてこだわられていると思いますが、ベースの樹脂粘土はどのようなものを選ぶのがおすすめでしょうか?

私は日清アソシエイツの「グレイス」という樹脂粘土を使っていますが、しなやかできめも細かく、特にパンの関してはリアルに再現しやすいのでおすすめです。

じつはこの樹脂粘土、パンと関わりのある製品でもあるんです。

半世紀ほど前、余ったパンで作るメキシコや中南米の伝統工芸品「パンフラワー」を日本でも気軽にと、グループ会社の日清製粉が小麦粉粘土を開発。それを改良していく過程で作り始めたのが、この樹脂粘土だそうです。

パンと樹脂粘土にそんなつながりがあるなんて、知ったときは驚きましたし、面白いなと思いました。

関口真優さん

筆者の購入した日清アソシエイツの「グレイス」(左)。ミニチュアパンづくりには、乾燥後に割れにくいという軽量樹脂粘土の「グレイスライト」と混ぜ合わせて使います。

より“リアルな再現”も大切に作品づくりを

──これまで作られたミニチュアパンの中で、特に印象に残っている作品を教えてください。

まず、私の好きなパンのひとつである「クロワッサン」です。実物と同じように二等辺三角形の粘土を作って、くるくる巻いて作るので、パンづくりと似ているなとより実感できる作品です。

関口真優さん

作り方だけでなく、サクッとした感じも見事に表現。おいしそうな姿もリアルに再現されています。

もうひとつは「バゲット」です。クープはかなり研究をしてきましたが、まだまだ本物とは違うなと思います。もっとリアルさを突き詰めたいと研究中のミニチュアパンです。

関口真優さん

「今のクープはちょっとへこんだ感じがするので、もう少し膨らみをもたせたい」と関口さん。筆者は十分にリアルだと感じますが、さらなるリアルさへと、関口さんのあくなき挑戦はまだまだ続きそうです。

クープに限らず、ミニチュアパンづくりは研究すればするほど、奥が深いと感じます。これからもかわいいのはもちろんですが、よりリアルに再現することを大切に、作品づくりを続けたいと思います。

“パンづくり”との共通点も面白さのひとつ

──ミニチュアで作るパンの難しさや面白さはどんなところでしょうか?

難しいと感じているのは、焼き色の再現です。作り始めた頃は頭のイメージにあるものを作っていましたが、よりリアルなものをと、実物を見ながら作るようになってからは、特に感じるようになりました。

焼き色を付けるために使うアクリル絵の具選びは、画材屋さんで売っているいろいろな色のものを買って、実物のパンと比べながら、ひとつひとつ試してみるところから始めました。プロになる前からそれを地道に始めて今たどり着いたものが、現時点では自分の中で納得してはいるものの、本当はもっともっと奥深いものだろうと思っています。

また、パンが自然にふくらんだ感じの表現も、すごく難しい部分だと思います。樹脂粘土は水分が抜けて固まると、カチカチした質感になるので、そのままでは自然に焼き上がった感じにはならないんです。

パンの膨らみを表現する技法のひとつに、粘土とベーキングパウダーを合わせて電子レンジで温める方法があります。しかし、思いもよらぬ膨らみ方をして、形が崩れることも。例えば、膨らんだときの溝が浅くなってしまわぬよう、クープはちょっと切込みを深く入れておくなど、出来上がりを考慮しながら成型しています。

このように、実物のパンづくりと似ているところがあるのが、ミニチュアパンづくりの面白さのひとつです。私もより良い作品づくりのためにはもっとパンを知るべきだと思い、少しパン教室へ通ったり、まだ受験はしていないのですが、「パンシェルジュ検定」のテキストを購入して勉強しました。

実際に、ミニチュアパンの作家さんには、パン屋さんに勤めていた方とか、パン職人さんも多いんです。ですから、パン好きのみなさんなら、きっと上手に作れるのではないかと思います。お気に入りの店のパンを作ってアクセサリーにしたり、ディスプレイするのも楽しいですよ。

関口真優さん

「苦労する点も多いのですが、材料や工程を考えながらひとつの作品を作り上げていく、その過程もミニチュアパンづくりの楽しさではないかと思います」と関口さん。こんなかわいいミニチュアパンが作れたら、きっと楽しいですよね。

パンはサイズやクラムの質感もチェック!

──ミニチュアパンのアイデアやイメージはどのように膨らませているのでしょうか?

やはり、パン屋さんに行ったときですね。パンをひとつひとつ見ることはもちろんですが、パンを飾るとき、ほかにどんなものを飾っているのなど、全体のディスプレイもチェックします。また、店内だけでなく、外観や看板の書体なども見ています。

パンを買って帰ったあとは、だいたいサイズを計ります。「クロワッサン」が10~12cmぐらいとすると、ミニチュアにするには1.5cmかなとか、2cmぐらいで作れば6分の1のサイズになるかなと考えながら。

ミニチュアは“小さいもの”という定義ですので、ドールハウスやジオラマ模型のように縮尺サイズが定められていません。私の場合は、基本的に使う用途に合わせたサイズで作っていますが、この人形に持たせるなら6分の1とか、基準の参考にしています。

その後は、半分に切って中の質感を確かめます。作るパンに合わせて複数の樹脂粘土をミックスするなど、よりリアルなミニチュアパンづくりに役立てています。

──ちなみに、関口さんはどのようなお店のパンがお好きなのでしょうか。

最近気に入っているのが、日比谷にある「Le petitmec」のパンです。フランスパンに黒胡椒とマカデミアナッツ、チーズを加えたものは、黒コショウがピリッとスパイシーかつ、マカダミアのカリカリ食感がたまりません。

あとは、「MAISON KAYSER」や「VIRON」も好きです。フランスパン、それも硬めのほうが好みで、端っこが特に好きなので、長いまま、かぶりついちゃったりします(笑)。ヴィロンでは、バゲットにチーズなどをはさんだサンドイッチもよく食べています。

──最後に、3月27日に発売された新刊について教えてください。

今作は、ミニチュアスイーツの本です。これまでスイーツにしても、パンにしても、単体の作り方をご紹介していたのですが、“スイーツショップ”とタイトルにあるように、数種類のドーナツやカップケーキをお店風にディスプレイして楽しみましょうという内容になっています。

Instagramで作品を投稿する方も多いと思いますが、写真映えを意識した作品づくりの参考にしていただけると思います。

関口真優さん
「樹脂粘土で作る小さなお菓子の世界 関口真優のミニチュアスイーツショップ」(河出書房新社)

筆者もミニチュアパンづくりにチャレンジ!

実はこの春から、ミニチュアパンづくりを始めたばかりの筆者。関口さんの著書を見ながら、「角食」を実際に作り、関口さんにアドバイスをいただきました。

関口真優さん

写真は筆者製作3号め。取材当日は色塗り前のものを見ていただきました。

ポイントを的確に教えていただき、後日、材料もおすすめのものを揃えて再びチャレンジしたのがこれです!

関口真優さん

まだまだ修業が必要ですが………このように仕上がりました。

本でもかなり丁寧に説明されているのですが、やはり直接教えていただくと、よりポイントがわかりやすいですし、材料や道具はきちんと選んだ方が、作りやすいことを実感しました。

「ちょっとコツをお伝えすれば、絶対変わってくると思うんです。いつか『ぱんてな』でも、パン好きさんに直接お伝えできる機会があるいいなと思います」と関口さん。アドバイスをいただきまして、ありがとうございました。

※今回の「角食」が掲載されている書籍は「関口真優のいちばん親切なミニチュアパンの教科書」(河出書房新社)。


関口さんがミニチュアを作るうえで一番大切にしているのは、「自分が楽しいと思う気持ち」だといいます。見るだけでワクワクする、楽しくてかわいいミニチュアパンが次々と誕生している理由もうなずけます。

「日本にも世界にも、まだまだ知らないパンがあると思うので、ミニチュアパンの種類を増やしていきたい」と関口さん。次はどんな作品が誕生するのか、とても楽しみです。

関口真優クレイアートスタジオ

所在地
東京都江東区扇橋2-6-12 ストーク扇橋602
公式ホームページ
https://mayusekiguchi.com/

関口

※清澄白河スタジオではミニチュアスイーツやパンづくりのレッスンを随時開催。スタジオ専属講師が丁寧にレクチャーしてくれます。詳細は、公式ホームページでご確認ください。

WRITER

辻 美穂

辻 美穂

とにかく食べること、飲むことが好きで、異業種から食の業界へ転職をとフードコーディネーターの学校へ。複数の調理現場でバイトしたあと、菓子とパンの会社で商品企画の仕事に就く。自社パンのおいしい食べ方をあれこれ試しているうちにパンの魅力にハマり、その後ライター活動を始めてからも、そして活動拠点を福岡に移した2013年以降も、仕事のついでに気になるパン屋へ立ち寄り、新たなパンとの出合いを求め続けている。最近気になるのは、自分の体重と屋根で勝手に居候するスズメたちのこと。

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