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街のシンボルとして愛され続ける、洋菓子店のパン 東京・池袋「タカセ洋菓子」
パンやの夜明け

街のシンボルとして愛され続ける、洋菓子店のパン 東京・池袋「タカセ洋菓子」

梶原 綾乃
梶原 綾乃

池袋駅の目の前に展開する老舗・タカセ洋菓子。1階入り口のパンやケーキはもちろん、上階のレストランでは和洋食もいただけるなど、洋菓子店という枠にとどまらず、あらゆるニーズに対応した展開を見せています。

そんなタカセ洋菓子店さんが生まれたきっかけは、洋菓子ではなくパンだったといいます。タカセ洋菓子株式会社の常務取締役、森 弘樹さんに詳しくうかがいました。

タカセ洋菓子 

池袋で、「あんぱん」から始まった「タカセ」

──タカセ洋菓子店さんは、元々はパンのお店から始まったと聞きました。

創業者である私の曽祖父(ひいおじいさん)は上京して、池袋で店をかまえたんです。まずはあんぱんから始めたと聞いてますが、本人はパンの製造の知識や経験はなかったので、いろいろな方に職人さんを紹介してもらって、試行錯誤を繰り返しました。そうして、自分のできる形で、パン屋をスタートさせたのが始まりと聞いています。曽祖父が香川県の高瀬町の出身なので、それが「タカセ」という名前の由来です。

タカセ洋菓子

「あんぱん(こしあん)」(160円)のほか、つぶあんの「小倉ぱん」や、「うぐいすぱん」などもあります。

──なるほど。タカセさんといえば、あんパンという側面がありますよね。

最初からあんぱんで売っていたみたいですね。当時は池袋でもまったく同じ場所ではなかったんですけれど、そこで実演販売的な形で始めたそうです。そしてお店が大きくなってから、洋菓子をはじめました。今ではパンと洋菓子の割合は半々くらいですが、パンのほうが若干メインに寄っています。

ボリューミーでユニークな、タカセ独自の商品たち

──パンはどのくらいの種類を並べているのでしょうか。

店頭には80種類ぐらいのパンを並べていますが、季節によって限定商品を2〜3種類くらい出したりしています。人気商品は、「アップルロール」で、今はあんぱんよりも人気です。

──それは意外です。「アップルロール」はとてもボリュームがありますよね。

とてもふわふわしているので、そのままむしゃむしゃと食べられます。少し温めるのもおいしいです。
1日に多くても160個くらいしか焼けないんですが、春先など、ピーク時にはそれでも足りないくらいになっちゃいます。ボリュームもあるのに、不思議ですよね。

──タカセさんといえば、「アップルロール」のほかにも「カステ」や、「カジノ」など、ほかにはない独自の商品が多いですよね。

タカセのパンは昭和30年代〜40年代くらいに、雁瀬大二郎さんという有名な先生にご指導いただいて作ったものです。「カステ」や、「カジノ」などの商品は、その先生のご指導やご提案がベースになっているんじゃないかと思います。

もともとの屋号「森永ベルトラインストアー」から「タカセ」に屋号を変えた昭和37年ごろから、ご指導いただいていると思います。

「カステ」や、「カジノ」など、不思議な名前だと思いますが、由来は私も知らないんです。私が物心ついたときからある商品で、50年以上も前からあります。パッケージも、当時デザインしていたデザイナーの方のものを踏襲しているだけです。

──それは驚きました。中身にはリンゴ、レーズンといったフルーツが共通して使われていますが、安定的に供給できるが入っているのかな?と思っていました。

これは昔、人から聞いた話なので、私は実際には知らないんですけど、「カジノ」とか、「ファンタジークリーム」の中には缶詰のみかんとか、パイナップルとか、そういったフルーツも入れていたそうです。傷みやすいとか、何らかの理由で省いていったようですね。

「カステ」や、「カジノ」などのパンは、歴史のある商品ですが、味の見直しは定期的にして、ブラッシュアップしています。例えば、イーストフードや乳化剤は昔、普通に使っていましたけど、今はなるべく使うのをやめるとか、減らそうという動きがありますよね。


──大手のコンビニなどでも、近年はイーストフードや乳化剤はなるべく使わないのがスタンダードになってきていますね。

パンのふかふか感は損なわないように、でもなるべくそういったものは使わないように注意しながら、見直しをしてきました。いちばん最近では、昨年に食パンをリニューアルしました。

タカセの食パンは昔ながらのオーソドックスな製法を守り続けていました。なので、最近の流行りの食パンと比べたら、ちょっと味が劣るなと感じていたんです。これじゃいけないな、と全面リニューアルし、製法を湯種にしました。あとは、手分割にしています。

タカセ洋菓子 ヨーグルト食パン

ヨーグルト食パン(300円)

ほかに食パンで言うと、「ヨーグルト食パン」も人気です。メーカーの方からヨーグルト種をご紹介いただいたのがきっかけでできました。普通の食パンよりちょっと小さめで、少し甘くしたんですよね。今年3月にぼる塾の田辺さんがTV番組の取材で来てくださって、その時に紹介してもらったのが「カジノ」と「ヨーグルト食パン」。ヨーグルト食パンは田辺さんのSNSにあげてもらって。それが拡散されて、人気です。

──食パンといえば、ヨモギの食パンも販売されていますよね、なかなか珍しいと思いました。

昔からありますね。不思議と売れるんです。強烈な香りはしますけど(笑)、安定的な人気ですよ。一時期、喫茶では、サンドイッチでも出してましたね。黒豆とあんこと生クリームを挟んだものです。

──タカセ池袋本店には、ひとつのビルの中に喫茶、レストラン、コーヒーサロンとありますが、それぞれいただけるパンのメニューが違いますよね。

本店併設の工房で製造しているというのもあり、本店裏のコーヒーサロンや2階の喫茶室のほうでは、そこでしか提供していないパンもあります。パニーニは、サロンだけしか提供していません。あとは、モーニングの食パンも、リッチなパンを使っていたりします。より多くのパンを楽しむならば、コーヒーサロンがおすすめですね。

──トーストおかわり自由のモーニングもとても魅力的だと思います。

タカセ洋菓子

2階喫茶室のモーニングセットB(650円)。朝9:00~11:00まで。

モーニングは4種類あり、トーストおかわり自由のBセットがいちばん人気です。フレンチトーストも始めたのですが、やはりおかわり自由にはかなわないなと思います。

パンだけではなく、「ハンバーグの店」としても人気


──ちなみに、レストランだと何がおすすめですか。

タカセ洋菓子

レストランのショーケース。

ハンバーグがおすすめです。ある時テレビで紹介していただいたら、爆発的に火がつき、ものすごい人気になりました。今では注文がほぼ半分くらいハンバーグです。

お肉屋さんから仕入れた塊の肉を、自社でひき肉に加工していますが、肉の合わせ方の工夫は、シェフが試行錯誤したものです。サーロインステーキもメニューにあるので、その脂も合わせたりと考え抜いて、改良しました。

切った時に肉汁がぶわっと出るのが魅力で、改良のたびにサイズが大きくなっていき、今ではかなりのボリュームです。お腹をすかせていらしてください。

──パンもハンバーグも、ボリュームのある商品をお手頃な価格で出されていますね。

タカセ洋菓子 ハンバーグ

菓子パンだけに限らず、うちの商品の価格帯は、全般的に「少しリーズナブルだな」と思ってもらえるよう意識しています。特にパンは、日常で食べるもの。食事やおやつで食べていただくものなので、手軽に買える値段がいいですよね。気軽に立ち寄って、お買い上げいただけるようにしています。

うちは町のパン屋さんという位置づけなので、なるべくリーズナブルに、なんでも揃えていこうかなと思っています。

これからも、池袋の発展とともに

──ほかにも、会社全体で守っていらっしゃる思いなどはありますか。

タカセ洋菓子 マリトッツォ

夏季限定商品の「マリトッツォ」。「洋菓子もパンもあって喫茶もあってレストランもある」という、タカセの総合力が形になった商品です。

先代の社長の時から自家製、手作りにこだわっています。それはパンでも、洋菓子でも同じです。業務用のものや出来合いのものは極力使わないようにしています。

よくご質問で「店舗展開をしないんですか」「百貨店には出店しないんですか」といただきますが、池袋に支えられて、池袋の発展とともにお店を続けてこられたと思っているので、考えておりません。「池袋に行けばタカセがある」という街のシンボル、街の資産としてしっかり続けていきたいと思っています。

池袋の街のシンボルとして、ずっとそこにあり続けるタカセ洋菓子。古き良きを大切にしながらも、新しいことにチャレンジされている老舗の味を、私たちも大切に買い支えていきたいものです。

■タカセ洋菓子 池袋本店

住所
豊島区東池袋1-1-4
電話番号
03-3971-0211(代表)
営業時間(パン・洋菓子コーナー)
9:00~21:00
営業時間(喫茶室、レストランなど)
営業時間がそれぞれ異なります。ホームページを参照ください。
定休日
年中無休
ホームページ
https://takase-yogashi.com/

WRITER

梶原 綾乃

梶原 綾乃

編集者/ライター。
お菓子やパンを作ったり、食べたりすることが好き。
ご当地パンの包装紙を収集中。「サラダパン」が大好き。

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