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チャンスを逃さず行動し人気ベーカリーに就職 髙橋優介さん(セントル・ザ・ベーカリー勤務 パン職人)
輝くパンシェルジュ

チャンスを逃さず行動し人気ベーカリーに就職 髙橋優介さん(セントル・ザ・ベーカリー勤務 パン職人)

辻 美穂
辻 美穂

髙橋優介さん(セントル・ザ・ベーカリー勤務 パン職人)

輝く 髙橋さん

北海道札幌市出身。高校時代にパン屋でアルバイトを始め、卒業後はパン職人を目指して調理専門学校の製菓コースへ進学。卒業後の2020年4月から、「セントル・ザ・ベーカリー銀座店」に勤務しながら、パンや食にかかわる勉強を続けている。2021年10月にパンシェルジュ検定3級・2級を同時に取得。忙しい日々のリラックス法は、仕事のあとにおいしいものを食べたり、休日に近所の公園を散歩するなど体を動かすことだそう。

パン職人になるまでの、ご自身のパンヒストリーを教えてください。

パン職人を目指すようになったのは、高校生の時、大手スーパー内のベーカリーでのアルバイトがきっかけでした。3年間、製造にたずさわるうちにパンづくりが楽しくなって、パン屋に就職したいと思いはじめました。しかし当時は工業高校の電気科に通っていたので、学校にパン屋の求人情報がまったく来なかったんです。そこで「パンを学べば選択肢も広がるのでは」と思い、調理専門学校の製菓コースに進学しました。“せっかく電気の勉強をしたのに”と、周囲には猛反対されましたが、押し切ってしまいました(笑)。

それまでは苦手だった勉強も、専門学校に入ってからは楽しくなりました。すすんで本を読んで勉強したり、シェフや職人さんにお話を聞いたり。そして、研修先を決める時は、かなり積極的に動きました。就職説明会に来ていた都内ホテルの調理部長さんに直談判したり、人気ベーカリーの講習会でシェフに声をかけさせていただいたりしました(笑)。“ここしかないっ!”というチャンスは、逃さないようにした結果、それぞれで研修させていただくことができました。

輝く 髙橋さん

写真は専門学校時代に試作した、オリジナルレシピのパン。イタリア・ナポリの菓子「スフォリアテッラ」の生地をベースに、りんごのコンポートといちごムースをのせ、飴のドームを被せた。製菓コースならではのパンづくりを経験しながら、技術の方も磨きをかけていった。

就職活動も、とにかく積極的に動いていましたね。最初、弊社の求人は募集していなかったのですが、古い求人情報をたよりに電話をしてみたところ、会社の現・統括シェフと面接させていただけたんです。そして、系列の「セントル・ザ・ベーカリー」に就職することができました。

入社した時の印象や、現在の担当しているお仕事について教えてください。

“こんなに食パンが売れる店があるのか”というのが第一印象でした。常に行列ができていますし、30分に1回焼き上がるペースで、1日1,000本以上。5、6人でこの量を焼くなんて、“いったいどんな仕組みになっているんだろう”と思いました。

輝く 髙橋さん

髙橋さんが働く「セントル・ザ・ベーカリー銀座店」は、言わずと知れた人気のベーカリー。銀座店では3種類の食パンを販売し、レストランも併設している。

僕は入社当時から、焼きをメインに担当していますから、1日ほぼ窯の前にいます。何より大変なのは、1回に焼き上がる60本が、すべて同じクオリティでなければならないということ。同じ発酵具合、同じ窯伸び、同じ焼き色で仕上げていくのが、いちばん難しいです。

輝く 髙橋さん

腰折れがなく、焼き色も美しく仕上がると、“今日もこの瞬間を見れてよかった”と実感するそう。“焼き上がりの瞬間を見れるのは、窯を担当している人間の特権です”と髙橋さん。

食パンはシンプルですけど、それだけに難しさもあって。うちのお店の生地は、とても複雑なんです。腰折れもしやすいですし、季節や気候で調節するのが難しい。食パンは切ってみて内層が初めてわかるんですが、「セントル・ザ・ベーカリー」の場合は、焼きたてですぐにお客様の手にお渡ししているので、自分では見ることができません。おいしく美しいものに仕上がるよう、常に細心の注意を払っています。

輝く 髙橋さん

常に緊張感をもってパンを焼き上げるなか、最も神経を使うのが窯入れ。“シンプルで難しいからこそ、焼き上げる楽しさもあります”と髙橋さんは語る。

パンシェルジュ検定を受験された目的やきっかけを教えていただけますでしょうか。また、テキストの内容で、現役のパン職人さんでもためになったことはありましたでしょうか?

パンシェルジュ検定は、専門学校時代に雑誌かなにかで見かけました。以前から興味がありましたし、パン職人として役立つ資格や検定なら、取っておこうと思ったからです。3級・2級併願受験を決めてからは、出勤前の時間や、通勤中の電車内、仕事の休憩時間などを活用して、少しずつ勉強しました。

実際に学び始めると、“まだまだ知らないことがたくさんあるぞ”と気づき、もっとパンのことを知りたくなりました。特に面白かったのは、パンの歴史とか、本当に基礎的なパンの作り方ですね。専門学校でもいろいろ学んではいるのですが、特にパンの歴史はそこまで深く学ぶことはありませんでしたので。ほかには、食品表示や食品にかかわる法律など、僕自身があまり詳しくなかった部分が、非常にためになりました。

輝く 髙橋さん

髙橋さんの勉強法は、まず全体の内容を見てから、模擬テストで自分の知識レベルを確認、そして苦手な部分をメインに復習するというもの。単純に暗記するような勉強にはせず、自分の知識を増やすような気持ちで臨んだそう。

今後の目標や、新たにチャレンジしたいことはありますか?

チャレンジしたいことは、まずパンシェルジュ検定1級試験です。パン職人としてはまだまだ新人ですので、仕事もしっかり取組みながら1級を取得し、さらにパンの勉強を重ねて、誰よりもパンに詳しくなりたいですね。

“自分で本当においしいと思えるものが作れるようになりたい”常にそう思っているので、そのための基礎知識など、これから学ばなければならないことがたくさんあります。最近は有名店の職人さんが新麦を選んでパンを作るオンライン講習会に参加したり、パン以外の食に関する本を読んでいます。

常に向上心を持っていたい。そして、理想に近づこうと努力する自分であり続けたいと思います。教科書から抜きだしたようなパンではなくて、自分なりの、本当においしいと思えるパンを作れるように。そういう気持ちをいつまでも忘れない職人でありたいですね。

輝く 髙橋さん

幅広い知識を身につけるため、パンはもちろん、それ以外の本も読んでいるという。

 

全国のパンシェルジュたちや、これからパンシェルジュ資格の取得を目指す人たちにメッセージをお願いいたします。

今、街にパン屋がどんどん増えているので、パンのことを少しでも知っていれば、パン屋巡りがより楽しくなるし、毎日がもっと楽しくなるのではないかと思います。

そして、学ぶことでより知りたくなると思うんです。パンのことを勉強する機会という意味でも、パンシェルジュ検定というのは、本当にいい資格なんじゃないかと僕は思います。

なので、資格を取る取らないにかかわらず、少しでも興味があれば、パンシェルジュ検定の勉強をするのはアリだと思います。発酵とか歴史とか、ちょっと難しい内容もあるかもしれませんが、とても面白いですよ。

輝く 髙橋さん

赤ワインに漬けたサラミとクルミを練り込んだ「パン・オ・ヴァン」は、髙橋さんの頭の中にあったレシピを再現したもの。“実際に作ってみるのはワクワクするし、気分転換にもなる”と語る髙橋さん。頭の中には、まだ見ぬレシピが溢れていそう。

 

 

取得資格

・製菓衛生師・パンシェルジュ2級・第二種電気工事士

セントル・ザ・ベーカリー銀座店 Instagram

WRITER

辻 美穂

辻 美穂

とにかく食べること、飲むことが好きで、異業種から食の業界へ転職をとフードコーディネーターの学校へ。複数の調理現場でバイトしたあと、菓子とパンの会社で商品企画の仕事に就く。自社パンのおいしい食べ方をあれこれ試しているうちにパンの魅力にハマり、その後ライター活動を始めてからも、そして活動拠点を福岡に移した2013年以降も、仕事のついでに気になるパン屋へ立ち寄り、新たなパンとの出合いを求め続けている。最近気になるのは、自分の体重と屋根で勝手に居候するスズメたちのこと。

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