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富山県産コシヒカリの米粉でふわもち!富山「とべーぐる」のベーグル
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富山県産コシヒカリの米粉でふわもち!富山「とべーぐる」のベーグル

野崎 さおり
野崎 さおり

富山県を拠点とするベーグル専門店「とベーぐる」は2012年にスタートした、いわばご当地ベーグルです。ベーグルには地元産コシヒカリの米粉が使われています。隣の石川県にも店舗を構え、今や10店舗を展開。なぜ富山でベーグルがチェーン展開できるほど好まれたのでしょうか?1号店の富山店にお邪魔して、統括リーダーの中木智晴(なかきちはる)さんにお話を伺いました。

種類豊富なベーグル。いちばん人気は甘いポテトクリーム入りの「富山のスイートポテト」

富山 とベーぐる

とべーぐる富山店は2012年9月8日オープン。今年2022年で10周年です。

──ベーグルの種類が豊富ですね!人気のベーグルはどれですか?

多いときで15種類ほどのベーグルを販売していて、一部はサンドイッチにもしています。期間限定や各店舗のオリジナルのベーグルもありますよ。

看板メニューの「富山のスイートポテト」がいちばん人気です。富山市内のファニーファームという農家で育てたさつま芋に生クリーム、卵を加えた甘いクリームを包んでいます。クリームチーズサンドにしてもおいしいですよ。

富山 とベーぐる

人気No.1の看板商品「富山のスイートポテト」。甘いポテトクリームが入っています。

それから「富山の小松菜&カリカリベーコン」も人気があります。県のエコファーマー制度で認定された農家で栽培された小松菜を使っています。

富山 とベーぐる

ほんのり緑色の「富山の小松菜とカリカリベーコン」。

──地元の素材を使ったベーグルが人気なのですね。

そもそも「とべーぐる」は、富山県産の素材で身近な食べ物を作って販売したいという考えから始まりました。ベーグルの生地にも、富山のコシヒカリを米粉にしたものを使っています。

フランス料理店から地元産米粉を使ったベーグル店へ事業を変更

富山 とベーぐる

店内のインテリアには、富山の県木、立山杉を使用しているという富山愛の強さ。

──地元の食材がキーワードなのですね。「とベーぐる」誕生の背景を詳しく教えてください。

「とベーぐる」を始める前は社長がシェフを務めるフランス料理のレストランを運営していました。

社長はフランス料理店をオープンする前に南フランスを訪れた経験があり、そのとき現地の人たちの地元愛と地元に根付いたアイデンティティーに感動しました。自分が富山で開く店でも、富山の食材を使うことはもちろん、お店全体からも富山らしさを感じられる店を目指そうと考えました。私はそのお店に就職して、社長の考えに共感。例えばズッキーニのパスタも「〇〇農園のズッキーニのパスタ」という風に、生産農家の名前がわかるメニューを展開していました。

ディナーで1人4000円ほどのカジュアルなお店でしたが、フランス料理はハードルが高いイメージがあります。そこで、地元の食材を使った身近な食べ物を提供したい。例えばパンはどうかと考え始めました。

富山の食材を代表するものといえば、やはりお米です。パンで米粉を使ったものを、と考えて、米粉を生かすともちもちした食感になるはずだ、それにはベーグルがぴったりだと考えました。

餅が好きな富山の人にベーグルのふわもち食感がウケた!

──富山の人たちはベーグルに馴染みがあったのでしょうか?

「とべーぐる」ができた頃は、富山でベーグルを出すお店はほとんどありませんでした。

富山は全国的にも餅の消費量が多い土地です。同じようにやわらかくて、もちもちした食感の食べ物が富山の人は好きなんです。だから米粉を使ってふわもち食感のベーグルを作ったら、受け入れられるだろうと考えました。

今ではお年寄りからお子さん、妊婦さんにまで好評です。自宅に持って帰ったベーグルは冷凍保存をおすすめしていますが、冷凍庫にベーグルのストックがなくなると不安になって、買い貯めしにくるとおっしゃる常連さんもいます。

富山 とベーぐる

「昆布」ベーグルは、富山でよく食べられ、中木さんも好きだという昆布餅をヒントに。昆布は富山産ではないとのこと。

──ふわもち食感にするために、なにか工夫していることはありますか?

開発にはいろんなベーグルを取り寄せて試食して、試作を繰り返しました。ベーグルは発酵せずに作ることもあります。でもそうすると、噛みごたえのある固さが特徴になります。

逆に発酵時間が長いと、ふわもち食感が失われてしまいます。お米の甘さや風味を感じられるように調整しながら、ふわもち食感が出るように、発酵しすぎない製法にしています。

富山 とベーぐる

中木智晴さん。奥にあるオーブンから出したばかりの焼き立てベーグルを次々と並べていました。

──ベーグルの生地に使う小麦粉とコシヒカリの米粉の割合はどれぐらいですか?

米粉の割合は企業秘密ですが、ベーグルの種類によって割合を変えています。例えば「クルミと全粒粉」は全粒粉が入るので、米粉の割合が多いと粉っぽくなってしまうことがわかっています。

農家が作る食材とベーグルの相乗効果で、食べる人に感動してもらいたい

富山 とベーぐる

「日本一美味しい玉子サンド」などサンドイッチ類も人気。

──「とべーぐる」のベーグルが富山県や石川県で受け入れられているのは、ふわもち食感の他にどんな理由があるのでしょうか?

「とべーぐる」でふわもち食感以外にも大切にしていることが3つあります。

まずは可能な限り手作業でベーグルを作ることです。生地を捏ねる工程にミキサーは使っていますが、分割、丸め、成型といった工程は、機械ではなく、製造担当が生地の状態を手で確かめながら成型まで行っています。だから、同じ形はひとつもありません。それが手づくりの温もり、よさであると考えています。

日持ちがよくなったり、生地が扱いやすくなったりするための安定剤や保存料などは不使用です。生地は生き物なので、その日の気温や湿度でも生地の出来上がりに影響してしまいます。元気のない生地は、成型時に適度に引っ張ってあげたり、生地の声を聴きながら仕上げていきます。

次に焼き立てであること。どのお店も店舗でベーグルを焼いています。アットホームな雰囲気の小さいお店で営業時間も短めなので、いつも焼き立てを提供しています。

もうひとつが地元の素材を使うこと。例えばたまごを使ったベーグルサンドイッチは、富山県内のお店では富山県小矢部市産のたまご、石川県内のお店では能登産のたまごを使うなど、なるべく地元の素材を使うようにしています。

「とべーぐる」という店名は、「〇〇と〇〇」の”と”です。組み合わせることによって得られる感動を伝えたいという気持ちを込めています。

農家さんが作る食材はそのまま食べてもおいしいのですが、ベーグルと組み合わせると相乗効果でよりおいしく感じられるようにしたいと思っています。私達がおいしいものを作ることで、お客さんにも感動してもらえるし、農家さんがおいしいものを作りたいという思いも、ベーグルにのって伝わると思っています。


もともとはユダヤ人が発明したベーグルが、日本の富山で米粉と出会って、もちもち食感が好きな人たちに愛されているとはびっくり。現在は通販での発送は原則行なっていないので、富山や石川に出かける機会があったら「とベーぐる」のベーグルで北陸の地元食材に触れてみてくださいね。

■とべーぐる 富山店

住所
富山県富山市平吹町5-12 
電話番号
076-492-6505
営業時間
11:00~16:00
定休日
毎週水曜日、第2・第3火曜日
ホームページ
https://t-bagel.com

WRITER

野崎 さおり

野崎 さおり

ライター。2017年パンシェルジュ検定2級合格。カンパーニュなどのハード系とクロワッサンが好き。旅の目的にはパン屋さん巡りとローカルフードの実食を必ず入れ、旅が「パンの仕入れ」になっていると揶揄されることもしばしば。早起きが苦手なのがパン好きとしての最大の弱点。

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