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福岡県久留米市「BACKEREI & DELIKATESSEN GOTZEL」は、多種多様なプレッツェルのお店!
パンやの夜明け

福岡県久留米市「BACKEREI & DELIKATESSEN GOTZEL」は、多種多様なプレッツェルのお店!

辻 美穂
辻 美穂

豊かな自然に恵まれた福岡県南部にある久留米市。2023年9月、その中心地にオープンしたのが、プレッツェル専門店「BACKEREI & DELIKATESSEN GOTZEL」です。

日本ではさほど多くないプレッツェル専門店を久留米にオープンした経緯や、プレッツェルづくりのこだわり、未来への想いなど、代表の後藤洋介さんにうかがいました。

本場に近い味わいもの+自由な発想で作ったプレッツェルが充実

──お店や商品について教えてください。

大好きなプレッツェルとドイツの食文化を地元のみなさんに知ってほしいと始めた、プレッツェル専門店です。できるだけ現地の風を感じていただきたい、そんな気持ちから本場に近いプレッツェルをご用意しています。

商品はプレッツェルの象徴である逆ハート型のものから、「シュタンゲン」という棒状のものなど、その形は数種類に及びます。さらにプレッツェルサンド、ドイツ人が「ドイツでは見たことがない」と言うスイーツ系まで、20種以上をそろえています。

本場に近いプレッツェルづくりをしながらも、料理人である僕自身が、修業から20年以上の間に培った料理の知識を生かし、自由な発想で商品づくりをすることにもこだわっています。季節限定商品やチャバタ生地で作った新食感のクリームパンなどもありますので、あわせて楽しんでいただければ嬉しいです。

──店舗デザインや店名の由来についても教えてください。

店舗は「片田舎のパン屋さん」というイメージで作ってもらいました。壁はペイント屋さんにご指導いただきつつ、DIYで塗り上げたものです。

2020年に「cuoco italiano GOCCI(クッコイタリアーノゴッチ)」というイタリアンレストランを久留米で始めました。
お店のお客様を招いたワークショップで、僕の子どもとともに「GOTZEL」の壁を塗りました。ベロア生地のような光沢ある素敵な質感に仕上がって、とても気に入っています。

店名は「GOCCI(ゴッチ)」のプレッツェル専門店ということで「GOTZEL(ゴッツェル)」に。この名は「GOCCI」のインスタで公募しまして、50以上の候補からスタッフ投票で選びました。ほかにも素敵な候補があったのですが、イタリアンレストランの名前であり、僕の修業時代の愛称が含まれていることもありまして、当店にピッタリだとこれに決めました。

ドイツの塩やオーブンで本場の味わいを再現

──プレッツェルづくりの工程や材料のこだわりを教えてください。

僕はパンの修業をしたことがありませんので、かつてプレッツェルづくりをしていた知人に教えてもらったレシピをもとに作っています。

生地には、ライ麦と胚芽入り小麦粉をブレンドした、大陽製粉のプレッツェル専用粉を使用しています。プレッツェルソルトはザルツブルグのものを使用して、本場に近い味わいを出せるようにしています。

生地ができ上がったら、成型後に少し生地を乾かします。このあとラウゲン溶液を付けるのですが、生地が乾いていないと浸透しないので、プレッツェルづくりで大事な工程です。

ゴッツェル

手で持ち上げられる程度まで生地を乾かすのがコツ。そうすることで、プレッツェルならではの風味や焼き色が出るそう。

そのあとクープを入れてオーブンで焼成するのですが、少しでも温度が低かったり、焼きが甘かったりするとラウゲンのえぐみが出てしまいますので、焼成にはかなり神経を使っています。

オーブンはドイツ・ミベ社のものを使用しています。有名店でも使っていると聞いて、どうしても使いたいと手頃な価格の中古品を探して導入しました。

ゴッツェル

こだわりのオーブンを使って、200℃以上で約10分。いい焼き色のプレッツェルが完成です!

プレッツェルの生地づくり自体はさほど難しいものではないのですが、成型は慣れるまで難しかったです。

この逆ハート型はお店によって多少違いがありますが、祈りを捧げる修道士の腕を模ったという由来も伝えることができればと、当店では象徴的なこの形にこだわっています。

ゴッツェル

由来を大切に作られた「GOTZEL」のプレッツェル。確かに腕を組んだ人のように見えますね(写真はプレミアムバター)。

定番のバターほか、季節の変わり種も人気

──人気商品を教えてください。

定番人気は「プレミアムバター」です。プレッツェルと発酵バターは現地でも定番の組み合わせ。当店でもアイルランド産の発酵バターを50%以上配合したリッチなタイプです。

スイーツ系プレッツェルでは、チョコやピスタチオが人気です。バターコンパウンドに材料を混ぜ込む時にホイップした、フィリングの軽やかな食感もご好評いただいています。

ほかにも「あんバター」や、桜葉を練り込んだ春の「あんバター 桜」や、レモンカードを練り込んだ夏の「レモン」など、季節限定商品も人気ですので、ご来店された際にはチェックしていただければと思います。

──おいしい食べ方のコツはありますか?

当日食べられない場合は、速やかに冷凍し、2時間ほど常温解凍してから召し上がっていただくのがいちばんです。冷凍すれば、1ヶ月ぐらいは保存できます。

オーブントースターでリベイクすると焦げて黒くなってしまうので、おすすめしていません。温めるときはアルミホイルなどで包んで、熱源が直接当たらないようにしてください。

店にあるような火力の強いオーブンであれば、リベイクしてもきれいにおいしく焼き上がります。イートインでご希望の場合は温めてお出ししています。

──後藤さんご自身はどんな食べ方が好きですか?

プレッツェルは「プレミアムバター」と、飲み物は意外にもコーヒー牛乳が合います。カフェラテでもいいのですが、ちょっと甘みあるコーヒー牛乳のほうがより合いますので、ぜひ試してみてください。

──ランチにぴったりのサンド系も充実していますが、どういうものが人気ですか?

まずは「海老とアボカドのワカモレソース」です。海老とアボカドはお子さまにも人気の組み合わせなので、ワカモレはアボカドとマヨネーズ、レモン汁を合わせて、辛みをおさえたタイプに仕上げています。

自家製のローストビーフにキノコのマリネを組み合わせた、「ローストビーフサンド」も人気ですね。どちらも、ポピーシードをたっぷりふりかけた「プレッツェルシード」を使っています。

有名店「Sailer」のプレッツェルに憧れて

ゴッツェル

後藤さんは、久留米のホテルにはじまり、東京・赤坂プリンスホテル、銀座や福岡市・薬院のお店と、約20年にわたってフレンチとイタリアンを修業してきた料理人。現在も早朝からプレッツェルづくりをし、夕方から「GOCCI」へと、忙しい毎日を送っています。

──後藤さんはもともと料理人でいらっしゃいますが、なぜプレッツェル専門店を始めようと思われたのでしょうか?

10年以上前になりますが、福岡市の「Sailer(サイラー)」でプレッツェルを初めて食べた時に、本場の味わいや食感に衝撃を受けたのがきっかけです。それから黒パンなども含めたドイツの食文化にも興味を持つようになり、「ドイツの食文化を伝えることができるようなプレッツェル専門店を出したい」と思うようになりました。イタリアンレストランを始めたあとも、その想いは変わらなかったからです。

──ということは、憧れのお店はやはり「Sailer」ですか?

そのとおりです。お店もアドルフ・サイラー氏もリスペクトしています。パンのおいしさもさることながら、ヨーロッパからそのまま持ってきたような店内に外観も素敵ですし、住宅街にありながら遠方から毎日たくさんの人が足を運ぶ商品の魅力やラインナップも、オーナーとして見習いたいと思っています。

プレッツェル専門店なので、もしかしたら当店へも訪れていただく機会があるのではないかとひそかに期待しながら、その時にはサインを書いていただこうと、サイラー氏の著書を常に準備しています(笑)。

──「Sailer」はパン以外にもスイーツやアイスクリームも販売されていますが、シェフもいずれはと?

はい、この店とは別に出店できればと思っています。プレッツェルと同じく感動した黒パンの店や、僕の経験と融合したイタリアンスイーツの店などもできればいいなと。すぐには難しいですが、それらをすべて久留米に作って、地域活性化に貢献していければと思っています。

ゴッツェル

一般的に珍しい「プレッツェル専門店」。個性を発揮でき、コアなファンが足を運んでくれるのではと地元久留米にオープンしたそう。「『GOCCI』とともにヨーロッパの食文化を発信し、地域活性化に寄与できればという想いもあります」と後藤さんは言います。

培った技術をマニュアル化!スピード感ある教育で次世代へ

──料理やパンの職人として、ほかにも大切にしていることはありますか?

当店の味を広く次世代に引き継いでいくことです。一生懸命作り上げたものを、僕だけで終わってしまうのは残念です。そのため、当店ではレシピや工程をすべてマニュアル化して、都度ブラッシュアップしつつ、すべてのスタッフと共有しています。

同時にスタッフ教育のスピードも上げています。何事もスピード化の時代、自分の持っている引き出しをどんどん広げていくことで、職人としてのモチベーションを上げてもらいたいんです。習ったことを積み重ね続けるという前提ではありますが、技術を伝えられるサイクルを短くするように心がけています。

さらに料理人やパン職人を目指してくれる子どもが増えればと、「GOTZEL」では子ども向けの無料パン教室を開いています。パンづくりを体験してもらいながら、食文化も知ってもらえれば。そこで影響を受けたお子さんが将来料理やパンの職人になってくれたら、こんなに嬉しいことはないですね。

ゴッツェル

1ヶ月で基本的なプレッツェルづくりをマスターできるほど、スピード感あるスタッフ教育を心がけているそうです。

──最後に全国のパンシェルジュやパン好きのみなさんへメッセージをお願いいたします。

僕は、プレッツェルがただただ好きで、自分の店を持つまでになりました。パン職人を目指す人も、パンに関係する仕事を目指す人も、作ったり食べ歩いたりと、まずは自分の好きなパンを突き詰めるところから始めてみてください。


材料や作り方、使用する機械に未来への想いまで、何でも気軽にお答えくださった後藤さん。プレッツェルへの愛と未来への熱き想いに感銘を受けました。

久留米は「ダルム(ドイツ語で腸)」という豚ホルモンの名物焼鳥があるなど、昔からドイツとは何かと縁がある土地です。プレッツェルや黒パンが食文化として、これからこの土地に根付いていくのかもしれない。そう思いながら取材を終えました。

久留米を訪れる機会があれば、「GOTZEL」のプレッツェルをぜひ食べてみてください。また、電話注文や、ネット注文も可能ですので、ホームページをチェックしてみてください。

■BACKEREI & DELIKATESSEN GOTZEL

住所
福岡県久留米市通町109-2 貝田ビル1F
電話番号
0942-72-7412
営業時間
9:00~売り切れまで※土日祝は8:00~
定休日
月曜・火曜
公式ホームページ
https://www.gotzel-kurume.com/

WRITER

辻 美穂

辻 美穂

とにかく食べること、飲むことが好きで、異業種から食の業界へ転職をとフードコーディネーターの学校へ。複数の調理現場でバイトしたあと、菓子とパンの会社で商品企画の仕事に就く。自社パンのおいしい食べ方をあれこれ試しているうちにパンの魅力にハマり、その後ライター活動を始めてからも、そして活動拠点を福岡に移した2013年以降も、仕事のついでに気になるパン屋へ立ち寄り、新たなパンとの出合いを求め続けている。最近気になるのは、自分の体重と屋根で勝手に居候するスズメたちのこと。

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