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デニッシュ専門店「DE-NI 福岡西中州店」が作る“究極のデニッシュ”の秘密とは?
パンやの夜明け

デニッシュ専門店「DE-NI 福岡西中州店」が作る“究極のデニッシュ”の秘密とは?

辻 美穂
辻 美穂

サクサクの食感の生地と、フルーツの組み合わせがたまらないスイーツ系デニッシュ。季節によって変わるその美しい彩りにも見とれてしまい、お店で見かけるとついつい買ってしまうパン好きさんも多いのではないでしょうか?

2022年4月に宮崎にオープンした「DE-NI」は、九州初のデニッシュ専門店。2023年10月には福岡西中州に進出し、地元の人々からインバウンドの観光客まで訪れる人気のお店となっています。たくさんの人々を惹きつけているデニッシュの魅力について、オーナーの鰺坂美智代さんにお話をうかがいました。

DE-NI

オーナーの鰺坂美智代さん。

スイーツ系から惣菜系まで約40種のデニッシュがズラリ!

──「DE-NI」というお店について教えてください。

デニッシュと、クロワッサンなどのデニッシュ生地を使った商品を扱うデニッシュ専門店です。店名はデニッシュ専門店だから「DE-NI(デニ)」。ロゴもデニッシュそのものを表しています。

ラインナップは、フルーツやクリーム、コンポートを使った「スイーツ系」「和スイーツ系」、お食事向けの「惣菜系」と毎日40アイテムそろえています。ラインナップの3分の1ほどが季節限定の商品になっており、年間を通じて、さまざまな味わいを楽しめます。

店舗をシンプルな色合いにまとめたのは、フルーツのカラフルな色が際立つようにするため。宮崎神宮店と同様です。

サクサクと香ばしい、食べたら忘れられない“究極のデニッシュ”

──デニッシュ生地へのこだわりを教えてください。

当店の生地は4種類あり、商品によって使い分けています。いずれも生地の折り込み回数、焼き時間まで綿密に計算し尽くして作り上げました。

原料は、デニッシュのために開発した当店独自ブレンドの小麦粉や、厳選した国産の発酵バターを使っています。そのほかの食材も直接味わったうえで、自分たちが「本当においしい」と思ったものだけを選んでいます。生地自体がおいしく、一度食べたら忘れられないようなデニッシュにしたいんです。

ケーキのように美しいビジュアルで、サクサクとした食感があり、バターや小麦の香りが翌日まで楽しめる……そんな“究極のデニッシュ”をめざして日々焼いています。

いちばん人気は「いちご」。福岡のあの名物を使った商品も話題!

──お店では特にどの商品が人気なのでしょうか?

フルーツで人気が高いのは「いちご」と「シャインマスカット」です。

「いちご」はビジュアルが華やかなこともあってか、年間を通じて人気です。冬から春にかけて「あまおう」や「さがほのか」など数種類同時に販売する時期には、全種類購入して品種の違いを楽しむというお客さんもいますよ。

「シャインマスカット」も福岡から長野の貯蔵ものなど産地を変えながら、当店では毎年秋頃から1月ぐらいまで販売しています。

「和栗モンブラン」も人気商品のひとつ。当店では年間を通して販売しています。デニッシュ生地にクレーム・ダマンドを敷いて1回焼き上げているので、ほかの商品とはまた違った生地の食感を楽しめる贅沢なデニッシュです。

そして、宮崎神宮店オープン以来人気を博しているのが、「クレオショコラ」。厳選したチョコレートの上にフランス産岩塩を少しのせた、甘じょっぱい味わいが特徴です。

惣菜系デニッシュでは、福岡西中洲店限定「明太クリームチーズ」。これをお目当てに来られるほど、ハマるお客様もいらっしゃる人気商品です。

──どの商品もとてもおいしそうです。おいしく食べるためのコツはありますか?

フルーツ系は少し冷やしてから食べるとよりおいしく召し上がれると思います。

惣菜系はオーブントースターで温めたあと、食べやすい温度まで冷ましたほうがおいしく味わえます。ぜひ試してみてください。

コロナ禍を機にオープン。沈んだ世の中をデニッシュでワクワクさせたい

──そもそも、なぜデニッシュ専門店をオープンしようと思ったのでしょうか?もともとは美容室を経営されていたと伺いました。

美容室を経営しながら、自分の好きなパンやコーヒー、料理、ケーキなどを学んで、飲食業は2015年に始めました。マネージャーの松本靖夫さんと協力しながら運営しています。

以前からデニッシュが好きだったこともあり、「DE-NI」の構想は5年ぐらい前からありました。ですが、あらゆるパンよりも手間のかかるデニッシュの専門店を、カフェを経営しながら出店するのは、時間的にも難しいと思っていました。

ところがコロナ禍に入りカフェが営業できなくなって、時間に余裕ができました。世の中全体が沈んでいたので、ワクワクするようなデニッシュで、みんなに少しでも元気になってもらいたい。ちょっとやってみようと思い、オープンを決めました。

DE-NI

色鮮やかなデニッシュをワクワクしながら選べば、確かに元気が出てくる気がします。

──なるほど。オープンから1年半後には2号店を出店しますが、なぜ福岡西中洲を選んだのでしょうか?

天神と博多の真ん中に位置し、上品な雰囲気の土地がアンテナショップに向いていると思いました。また、国内外からの旅行者も多いので、当店のデニッシュをより広く認知していただけるのではと思ったからです。

DE-NI

公園近くでとても心地よい場所であり、工場としての広さも保てる物件という理由もあったそう。

──「宮崎神宮店」との違いを感じる部分はありますか?

仕事帰りや食事のあとに利用される男性が多いので、ピークが20時以降ということです。女性利用が多く、14時ぐらいで売り切れることも多い「宮崎神宮店」とは真逆なので、オープン当初は戸惑いました(笑)。

お家へのおみやげやお誕生日のちょっとしたプレゼントとして利用される方が多いので、22時頃まではできるだけ商品をそろえるように心がけています。

DE-NI

箱(6個以上は無料)には保冷剤を置くための台座を設置。おみやげやプレゼントに使うシーンを考え、開けた時のビジュアルまで配慮されています。

場所がら、昼間はインバウンドの方たちがよく利用してくださるのですが、地元の方はまだまだ少なく。お声がけいただいた催事には積極的に参加して、福岡市での認知度を上げるよう努力しているところです。

経験と想像力を頼りにアイデアを生み出していく

──鰺坂さんと松本さんは食べるのもお好きだそうですが、パンを食べ歩いたりもするのですか?

パンやケーキだけでなく、和食や洋食、中華とジャンルを絞らず食べ歩きをしています。福岡はおいしいグルメがたくさんあるので、いつも迷ってしまいます。遠くでなかなか食べに行くことができないものをネットで見ると、行って食べられないなら自分で作ってみようと、想像しながら作ることもありますよ。

もしかしたら実際に食べに行くことより多いかもしれません。自分も食べたいから、きっとみんなも食べたいよねという感じで(笑)。味の想像ができないもののほうが、より興味を掻き立てられますし、アイデアにつながることもありますので、デニッシュだけでなく、カフェのメニュー開発にも役立っています。

──最後に全国のパンシェルジュやパン好きのみなさんへメッセージをお願いいたします。

私は、食べてもらう人に喜んでもらえることが、この仕事のやりがいだと思います。作る人の想いって、絶対に商品に出ます。使う素材をきちんと選んで、おいしいものを提供することが大切だと思うんです。

これからパン屋さんやパンに関わる仕事を目指す人も、おいしいものを食べて欲しいという想いを大切にしながら修業や勉強をすれば、いずれ良いかたちで結果がかえってくると思います。お互い、いつまでもそれを忘れずに頑張りましょう!


繊細な生地の層、濃厚なクリーム、そして具材の味わいを一度に楽しめるデニッシュは、ひと口で幸せになれてしまう贅沢さがあります。DE-NIのデニッシュは、その高みを見れるまさに「究極のデニッシュ」だと筆者は思いました。

また鰺坂さん、同じ経営者として支えるマネージャーの松本さん、一緒に開発を続ける永友さんたちのチームワークも抜群で、それぞれの得意分野を生かして今後もワクワクする商品が生み出されていくと確信しました。

お店は福岡観光でも訪れやすい西中洲エリアにあります。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

■DE-NI 福岡西中州店

住所
福岡県福岡市中央区西中洲5-17 AER西中洲1F
電話番号
092-406-7466
営業時間
10:00~24:00※売り切れ次第閉店
定休日
なし
公式ホームページ
https://deni-shop.com/
「The Spoon」Instagram
https://www.instagram.com/the.spoon.fuk/

WRITER

辻 美穂

辻 美穂

とにかく食べること、飲むことが好きで、異業種から食の業界へ転職をとフードコーディネーターの学校へ。複数の調理現場でバイトしたあと、菓子とパンの会社で商品企画の仕事に就く。自社パンのおいしい食べ方をあれこれ試しているうちにパンの魅力にハマり、その後ライター活動を始めてからも、そして活動拠点を福岡に移した2013年以降も、仕事のついでに気になるパン屋へ立ち寄り、新たなパンとの出合いを求め続けている。最近気になるのは、自分の体重と屋根で勝手に居候するスズメたちのこと。

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