1. ホーム
  2. パン記事
  3. 開発物語
  4. ふりかけタイプで、アップサイクルなパンのお供「トーストにかけて食べるこんぶ」
ふりかけタイプで、アップサイクルなパンのお供「トーストにかけて食べるこんぶ」
開発物語

ふりかけタイプで、アップサイクルなパンのお供「トーストにかけて食べるこんぶ」

野崎 さおり
野崎 さおり

昆布といえば、出汁を取る食材だと思いがちですが、その昆布をトーストにかけて食べる「トーストにかけて食べるこんぶ」がおいしいと評判です。石川県能登半島にある昆布店・大脇昆布の女将で「トーストにかけて食べるこんぶ」を開発した大脇弘子さんに、斬新なアイデアが生まれた背景についてお話を伺いました。

看板商品は貴重な職人技で作る伝統の「おぼろ昆布」

──大脇昆布さんはいつお店を開かれたのでしょうか?

大脇昆布 トーストにかけて食べるこんぶ
大脇昆布の看板商品は、太白おぼろなど

初代は福井県で昆布削りの修行をした義父です。昭和60年代に能登に戻ってきて、今の場所を拠点としました。

看板商品は「太白おぼろ」という昆布の白い部分を薄く削ったものです。職人が一枚一枚丁寧に手削りで仕上げます。今では手作りできる職人は全国でも数十名しかいないと聞いています。奥能登で太白おぼろを削ることができる職人は、うちの社長だけだと思います。

大脇昆布 トーストにかけて食べるこんぶ
開発者の大脇弘子さんと夫で社長の一登さん

──「トーストにかけて食べるこんぶ」はどんなきっかけで生まれたのでしょうか?

おぼろ昆布の他に、削り方が異なるとろろ昆布も作っています。このとろろ昆布は、袋に詰めるときにどうしても粉々になってしまいます。味は同じなのにもったいない、なんとかしたいなと以前から考えながらも捨てていました。

そこで2018年11月ごろ、ご飯用のふりかけとして商品化しました。ところが全然売れなくて、おいしいのにどうしてだろうと悩んでいたんです。

そんなとき、パン屋さんで塩バターロールパンが大人気でたくさん並んでいたのを見ました。パンに合うものとご飯に合うものは共通していると思っていたので、トーストにバターを塗って、昆布ふりかけを合わせてみたんです。

子どもたちも気に入って、イケると思いました。若い世代の「昆布離れ」という言葉を耳にして、もっと身近に昆布を使ってもらえる機会を作りたいと思っていたので、ぴったりだと思ったんです。それで思い切って商品名を「トーストにかけて食べるこんぶ」に変更しました。

郷土能登の味、いしるを使ったせんべいが味のポイント

大脇昆布 トーストにかけて食べるこんぶ
いしるせんべいのクランチがポイントで、風味をよくするためにあおさのりと白胡麻を入れています

──実はアップサイクルな商品だったんですね。少し粘りけや塩けがあって、さらにクランチのおせんべいがポリポリとアクセントになっているのもおいしさのポイントですね。

おせんべいは「いしるせんべい」というものです。隣にある輪島市の有名な朝市でおせんべいを売っている人から、割れたおせんべいをよくいただいて、こちらももったいないので、なんとかできないかと思っていたんです。

海に囲まれた能登半島は「いしる」とか「いしり」といって、能登町ならイカ、輪島ならイワシなど、その地域でたくさん獲れる魚介を発酵させた独特の調味料、魚醤があります。

発酵調味料のいしるはうまみのもと「アミノ酸」をたっぷり含んでいます。いしるを使ったおせんべいのうまみと、とろろ昆布のうまみ成分が掛け合わさるとより一層おいしくなります。いしるそのものは臭いが苦手な人もいますが、おせんべいなら臭いは少なく、食感のよさもプラスになると思いました。

さらに地元のお土産屋さんが大きな販路ということもあり、ミネラル分が豊富な能登海洋深層水から作ったお塩も使った、ヘルシーで能登らしい商品になりました。

──パンのお供として売り出してからは、すぐに人気が出ましたか?

金沢のイベントなどでも販売していますが、はじめは「昆布とバタートーストの味の組み合わせが想像できない」という声が多かったので、試食販売をしました。すると、バターと昆布の塩けが予想以上に合うと、多くの方が驚いてくれました。

意外性があったことがよかったのか、いろいろなメディアでも取り上げてもらうことが増えて、今ではうちの看板商品に加わりました。ネット販売のほか、地元のお土産屋さんはもちろん、金沢の百貨店や、東京・銀座にある石川県のアンテナショップ「いしかわ百万石物語」でも販売しています。

トーストに限らず、食卓でささっといろいろかけてほしい

大脇昆布 トーストにかけて食べるこんぶ
「トーストにかけて食べるこんぶ」648円

──開発にあたって弘子さんがこだわったポイントはありますか?

「トーストにかけて食べるこんぶ」も含めた新しい商品は、『からだ・くらし・よろこぶ』をコンセプトにしています。うまみ成分の塊で、食物繊維やミネラルも豊富な昆布をスタイリッシュに生活に取り入れて、手軽においしく健康的な暮らしを提案したいと思っています。

手軽さのポイントとして、食卓で醤油の隣に並べてもらえるように、瓶詰めにしました。片手で蓋が開閉できるキャップを採用したのも、パンにもご飯にも、ささっと気軽にかけて食べてもらおうと思ってのことです。

──パン好きの方におすすめの食べ方はありますか?

最近は高級食パンが大人気ですけれど、「トーストにかけて食べるこんぶ」はスーパーなどで販売されている安価な食パンの方がよく合うんですよ。日常的な食パンをよりおいしく食べていただくのにぜひ使っていただきたいです。

変わった食べ方としては、バニラアイスとの相性もいいですよ。塩バニラのようで、ごまの香りも香ばしくて、ついつい何度もかけてしまうほどです。リピーターのお客様の中には、白身のお刺身にかけて食べるとおいしいとおっしゃる方もいます。

──「トーストにかけて食べるこんぶ」は魚醤のいしるや、海洋深層水の塩など、奥能登のおいしさが詰まった商品だと思います。せっかくなので、最後に能登町の魅力も教えてください。

能登町の中でも、大脇昆布がある旧能都町は波の静かな港町です。獲れたて新鮮でおいしい魚が安く食べられます。
私は広島県から嫁いできて、穏やかな海の美しさに驚きました。田舎で灯りが少ないので夜は星がとても綺麗です。夏には天の川を見ることもできるほどです。

のと里山空港からは車で25分ほどと、東京からのアクセスも便利になりました。先日、イカの駅つくモールという商業施設ができて、イカキングというモニュメントでも話題になったのをご存知の方も多いかもしれません。マリンレジャーも体験できるので、ぜひ遊びに来てくださいね。


北陸、能登の食文化が詰まった「トーストにかけて食べるこんぶ」。トーストに昆布?と思う意外性と予想以上の味わいをぜひ体験してみてください。

プレゼントとして「トーストにかけて食べるこんぶ」をご提供いただきました。応募はこちらから。

■大脇昆布

住所
石川県鳳珠郡能登町宇出津山分4−63−2

WRITER

野崎 さおり

野崎 さおり

ライター。2017年パンシェルジュ検定2級合格。カンパーニュなどのハード系とクロワッサンが好き。旅の目的にはパン屋さん巡りとローカルフードの実食を必ず入れ、旅が「パンの仕入れ」になっていると揶揄されることもしばしば。早起きが苦手なのがパン好きとしての最大の弱点。

SPECIAL