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阪神梅田本店を「パンの聖地」にしたい! 岩城 隆文さん(阪神梅田本店 パンナビゲーター)
輝くパンシェルジュ

阪神梅田本店を「パンの聖地」にしたい! 岩城 隆文さん(阪神梅田本店 パンナビゲーター)

辻 美穂
辻 美穂

岩城 隆文さん(株式会社阪急阪神百貨店)

輝くパンシェルジュ、岩城さん

阪神梅田本店 フード販売統括部 洋菓子・パン販売部 アシスタントマネージャー・パンナビゲーター。2016年入社。複数の部署を経て、2020年に阪神梅田本店のパン売場に配属。同店パン売場である「パンテラス」全体のマネジメント業務とともに、「阪神梅田本店パンナビゲーター」として活動を開始した。フォロワー数4,000越えのInstagramアカウントでは、さまざまなパンの情報を発信。全国のパン好きさんにも注目されている。

岩城さんのパンヒストリーを教えてください。

食べることが好きで、おいしいものでたくさんの人を喜ばせることができる物産展の仕事がしたいと、この会社に入りました。催事の部署や生鮮、惣菜売場を経験したのち、阪神梅田本店の洋菓子・パン販売部に配属となったのが、パンと深く関わるようになったきっかけです。

配属当時は、阪神梅田本店の建て替えに伴い、パン売場をリニューアルするタイミングでした。よりお客様に楽しんでいただける売場になるようにと、阪神百貨店独自の取り組みである「ナビゲーター」を配置しようとなり、「パンナビゲーター」に任命されました。

阪神百貨店では、パンをはじめとしたフードはもちろん、ライフスタイルやファッションなど部門ごとに「ナビゲーター」が配置されています。各ナビゲーターは、日常を豊かにする情報をInstagramで発信しています。

輝くパンシェルジュ、岩城さん


そうしてパン売場は「パンテラス」としてリニューアルオープンしました。私自身も、パン屋さんで厨房を見学したり、パン職人さんとお話しする機会も増え、パンへの愛が深まっていきました。パンシェルジュ検定を受験するにあたって勉強していくうちに、その奥深さにより興味を持つようになりました。

すでに売り場にはパンシェルジュの従業員がいましたので、じゃあ私もと、3級、2級、1級と、半年ごとに取得しました。「パンテラス」には、パンシェルジュ1級を持つ榎友寿さんがプロデュースしている「パントタビスル」と「パンヲユメミル」もあります。すごい方が身近にいて、さまざまな知識を吸収できたことも大きかったと思います。

輝くパンシェルジュ、岩城さん


パンナビゲーターのお仕事について詳しく教えてください。

「ナビゲーター」は、売場での接客業務のほか、自分の“好き”をお客様に伝える仕事でもあります。おすすめのパン屋さんがあった場合、交渉してパンを販売していただいたり、イベントで販売する商品の交渉や、ときには、「パンテラス」で商品を販売しているパン屋さんに、新たなパンの提案をすることもあります。

輝くパンシェルジュ、インスタ

Instagramではパン情報を発信。インスタグラマーの写真の撮り方やWeb記事の写真などを参考に、撮影技術を勉強しているそうです。

輝くパンシェルジュ、岩城さん

自信をもっておすすめしたいものをInstagramで発信。美しい模様をフリーハンドで描く職人技に感動し、口どけよいサクサクの生地とふわっとリキュール香るクレーム・ダマンドに魅了された思い出の一品、大阪の「パリジーノ&アトリエ ドゥ ママン」の「ガレット・デ・ロワ」もそのひとつ。

売り場にはよく顔を出すようにしているのですが、お客様から“岩城さんこんにちは”と、声をかけていただけることが増え、嬉しいです。百貨店では、お客様に「この店員さんがいるから通う」と言っていただけることがあり、私もそのようになりたいと思っていたんです。

「Instagramで紹介されていた商品を買いに来ました」と声をかけていただいた時は、嬉しかったのと同時に、少しでもInstagramの効果があったんだことに、ホッとしました。こういうことが、接客業の人間にとって何よりもやる気が出て、モチベーションも上がることだと思います。

輝くパンシェルジュ

“自分がおすすめしたパンを購入してくださったお客さまに、おいしいって共感してもらえるのも、この仕事の楽しさです”と岩城さん。中には、手づくりパンをわざわざ売り場まで持って来てくださる方もいるそう。お客さまとの距離も、縮まっているようです。

──ほかにも、売場で工夫されていることはありますか?

「パンテラス」には、われわれ社員が担当する「食パンセレクト」というコーナーがあります。“自分好みの食パンが見つかる”というコンセプトのもと、関西のパン屋さんを中心に、1週間でだいたい100種類ぐらい販売しています。他の百貨店にはない品ぞろえだと思います。

ただ、食パンは見た目にさほど違いがないので、種類が多いほどお客様がどれを買うか迷ってしまいます。そこで目で見てわかりやすいように、その日に販売する食パンの「チャートボード」を、売場中央に掲示しました。まずはそこで、今日はどんな食パンを販売しているのか確認してから、購入していただけるようになっています。

輝くパンシェルジュ、岩城さん

味と食感を4つの観点で表した「チャートボード」。売場スタッフで食べ比べし、それぞれが数値化したものを集計。平均したデータをもとに、かわいい食パン型マグネットで、ポジショニングされています。午後から入荷のパンは時間も書かれているので便利。

また、売り場には私を含めてパンシェルジュが6名ほどいまして、その中にはあんぱん、クロワッサン、カレーパンのナビゲーターもいます。チャートボードの横に、その日売場にいるパンシェルジュの似顔絵マグネットを貼っているので、パンについてぜひ尋ねてみてください。

輝くパンシェルジュ、岩城さん

「食パンセレクト」のパンシェルジュさんたち。みなさん、パンの知識を活用しながら、ひとりひとりに丁寧な接客を心がけているそうです。

検定の勉強で得たパンの知識のなかで、ためになったことや新たに知ったことはありましたか?

配属当時は、パンの知識がまったくなかったので、すべてが勉強になりました。例えば「ブリオッシュ」という名前を聞いても、これまではどんなパンかすぐに想像ができなかったんですが、今では自分の中でパッとイメージできます。また“バターや卵を使ったリッチなパン”と、そのパンに関する知識も自然に出てきて、お客さまとの会話がより楽しめるようになりました。

輝くパンシェルジュ、岩城さん

“ハード系が好きなんですが、おすすめのパンはありますか?”と尋ねられた時も、知識を交えながら話すことができるようになったそう。“学んだことがしっかりと、仕事に役立っています”と岩城さん。

──検定テキストの内容で特に印象に残ったものはありますか?

パンと飲み物のペアリングについてが面白かったです。弊社でも何かできればと思い、2022年の1月から阪神梅田本店にて開催している「一保堂茶舗」さんのお茶のイベントで、毎月お茶に合うパンを提供しています。イベントでは私がペアリングの説明をするため、今でもテキストを読み返します。

輝くパンシェルジュ、岩城さん

お茶のイベントでは、パン×お茶のペアリングを紹介するほか、盛り付けまで担当する岩城さん。“お茶とパンはあまり聞かない組み合わせだからこそ、新しい価値を提案できると思います”と語ります。

今後の目標や、新たにチャレンジしたいことはありますか?

「パンテラス」をいつか「パンの聖地」にすることがいちばんの目標です。もっと広く知ってもらい、今まで以上に魅力のある売り場にしていきたいです。全国のパン好きの人が注目するような、パン好きのコミュニティをここから作っていきたいと思っています。

また、パンづくりにもチャレンジしていきたいです。昨年5月からパンづくりを始め、Instagramで発信しているのですが、実際に作ってみるとなかなか楽しいですね。最初は「バターロール」をつくりました。基本的な生地を丸めて焼くだけですし、生地に砂糖を入れるので発酵もしやすいかと選びました。

輝くパンシェルジュ、岩城さん

「あんぱん」は餡から作ったりと、フィリングにはかなり凝っているそう。「ポンデケージョ」の完成報告も楽しみです。

その後も菓子パンを作ったりしましたが、次は妻からのリクエストで、「ポンデケージョ」を作ろうと思っているところです。近々Instagramでご報告できるのではと思います。

全国のパンシェルジュたちや、これからパンシェルジュを目指す人たちにメッセージをお願いいたします。

パンシェルジュ検定は、とても自分のためになったと実感しています。よりパンに興味を持てますし、よりパンが好きになる検定です。みなさんにもぜひ挑戦していただきたいなと思います。そしてパンシェルジュ同士がつながり、阪神百貨店も含めて、パン好きのつながりが全国にできてくれたらいいなと思います。

取得資格

パンシェルジュ1級・販売士2級

■阪神梅田本店「パンテラス」

所在地
大阪市北区梅田1-13-13 1F
営業時間
10:00~20:00
パンナビゲーター岩城さんInstagram
https://www.instagram.com/navigator_iwaki/

WRITER

辻 美穂

辻 美穂

とにかく食べること、飲むことが好きで、異業種から食の業界へ転職をとフードコーディネーターの学校へ。複数の調理現場でバイトしたあと、菓子とパンの会社で商品企画の仕事に就く。自社パンのおいしい食べ方をあれこれ試しているうちにパンの魅力にハマり、その後ライター活動を始めてからも、そして活動拠点を福岡に移した2013年以降も、仕事のついでに気になるパン屋へ立ち寄り、新たなパンとの出合いを求め続けている。最近気になるのは、自分の体重と屋根で勝手に居候するスズメたちのこと。

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