100年続く珈琲店が伝授!おいしいドリップコーヒーの淹れ方とコーヒーの豆知識
さまざまな珈琲店のドリップバッグが販売されている今、
本格的なコーヒーを自宅で楽しんでいるパン好きさんも多いかと思います。
いっぽうで、お湯を入れるだけのドリップバッグでも、
おいしく淹れるのは意外と難しい、なんて感じたことはありませんか?
そこで、『ぱんては』では、おいしいコーヒーの入れ方がわかるオンラインイベントを開催!
現存する大阪最古の珈琲店「平岡珈琲店」三代目店主・小川清さんと、パンシェルジュマスター・榎友寿さんにコーヒーの淹れ方やパンとの楽しみ方を教えてもらいました。イベント当日の様子をレポートします。
イベントの概要はこちら
プロ直伝!おいしいドリップバッグコーヒーの淹れ方
イベントが始まると、まずはドリップバッグコーヒーの“おいしい淹れ方”を教えてもらいました。
「百年珈琲」ドリップバッグとお湯を200㏄用意します。
1.ドリップバッグを取り出し、封を開けたら、トントントンとテーブルなどに当てながら中の粉が平らになるように整え、カップにセットします。
粉がこぼれないように気を付けながらトントントンと。ドリップバックは3点のツメをしっかりカップにかけて。
2.お湯200㏄をポットに入れ、火にかけて沸騰させます。
ポットの真ん中に大きい泡がポコポコと立ってきたら、火を止めます。
お店では、通称「つる首」という、先が細長くなったドリップポットを使っていますが、おうちなら「ドリップケトル」でもいいそうです。
お湯は必ず計量カップで計って、ピッタリ200cc用意しましょう!
3.ポットをゆっくりとコンロからカップのところへ移動し、お湯を少しずつコーヒーの粉全体に落としていきます。コーヒーを淹れるいちばん最初の工程は“蒸らし”。コーヒーの粉をじっくり蒸らすためには、最初の1滴がカップに落ちてくるのをできるだけ遅くするのがコツです。少量ずつゆっくりとお湯を落としていきましょう。
ポットをゆっくり移動することで、お湯の温度がコーヒーの抽出に適した約90℃に下がります。慌てずゆっくり、お湯を落とし始めましょう。
4.最初の1滴が出始め、コーヒーの粉に白い泡が立ってきたら抽出成功!
そこからは残りのお湯を一定の速度で、コーヒーの粉全体に回しかけます。
白い泡が立つのは、正しい温度のお湯で淹れることができたサインです。同じ所にお湯をずっと落とし続けると、お湯だけがカップに落ちる道ができてしまうそう。全ての粉にお湯が当たるように、回し入れることも重要です。
5.お湯を入れ終わったら、そのままお湯が落ちるのを少し待ちます。コーヒーの粉から水分が消えていったら、ドリップバッグをすっと引き上げて、カップから外します。
つい最後の一滴まで抽出したくなりますが、雑味が残ってしまうこともあるのでおすすめできません。コーヒーの粉から水分が消え、ドリップバッグからコーヒーの水滴がポタポタと落ちてくる程度で、抽出を終了しましょう。
コーヒーをよく飲む筆者でも、恥ずかしながら知らなかったポイントがたくさん!これらのコツを押さえることで、よりおいしく淹れることができるんですね。そして目の前には、芳醇な香りを放つコーヒー。あ~早く飲みたい!
コーヒーを目と舌で味わう
小川さんにコーヒーの淹れ方を教わったところで、次はテイスティングなど、楽しみ方についてを学びます。
“淹れたてのコーヒーをすぐにでも飲みたい!”そんな筆者を含め参加者の皆さんの衝動を、画面越しに察知したように、“いきなりがぶっと飲まないでくださいね”と小川さん。
「水色」を観察して楽しむ
まずは、抽出したコーヒーの色を指す「水色(すいしょく)」を観察します。“コーヒーは全部黒い”と思いがちですが、豆の種類や焙煎度合いなどによって、ワインカラー・赤系・茶色系と、大きく分けて3つほどの色があります。色が分かりやすいのは、表面張力でカップ内側の淵に立ちあがった液体部分。飲む前に、じっくり観察してみましょう。
テイスティング
「水色」を観察した後は、テイスティングです。まずティースプーンに8分目ほどコーヒーをすくって、静かに口元まで運び、空気と一緒にすすり、舌の上で転がしてからゆっくり飲みます。
その理由は、コーヒーの重要な要素である甘み、苦み、酸味、渋みは、舌の別々の場所で感じるから。舌の上で次々感じる苦みや甘み、酸味を楽しみながら、どこの部分を強く感じるかで、そのコーヒーの本来の味が分かるということです。
さらに、もう1杯スプーンですくって、同じように舌の上で転がしながらゆっくり味わいます。参加者の皆さんも、“こんなに深くコーヒーを感じた体験は初めて!”“勉強になる”といった感想が続々。新たなコーヒーとの楽しみ方を学べた様子でした。
コーヒーとのおいしいペアリング
コーヒーをテイスティングしたあとは、そのコーヒーとともに、平岡珈琲店唯一のフードメニュー「ドーナツ」を味わいながら、“コーヒーと食べ物のペアリング”を学びました。
まず、コーヒーをひと口。コーヒー本来の味を楽しみます。次にドーナツをひと口。ドーナツ本来の味を楽しんだら、口の中にその余韻があるうちに、もうひと口コーヒーを飲みます。すると、“最初のひと口とコーヒーの印象が違う”と感じました。
ドーナツの甘みや小麦粉の余韻などによって、コーヒーの味がぐっとまろやかになるからだそう。
そして、またひと口ドーナツを食べると、先ほどとはまた印象が変わりました。“これが「マリアージュ」。どんな飲み物や食べ物とでも同じだと思います”と小川さん。参加者の皆さんからも、これを実感したコメントが寄せられていました。
【パンとコーヒーのマリアージュ】
パン好きなら気になる「パンとコーヒーのペアリング」。この日は進行役としてご登場いただいた、パンのプロデューサーでパンシェルジュマスターの榎さんが、ペアリングのポイントを解説してくれました。今回はサンドイッチのペアリングについてです。
ペアリングの入口は“おいしさとは何か”を考えること
具体的なペアリングを考える前に、“おいしさとは何かを考えてみてください”と榎さん。味、香り、うまみ、食感はもちろんですが、視覚的要素や温度・湿度などの環境的要素、食べる時期の旬や体調など、その総括が「おいしさ」だと言います。これらの要素を意識してペアリングすることが大切なのです。
ペアリングのポイント
味はこの2つに分かれます。
「先味」・・・甘み・酸味・塩みといった、食べた瞬間に感じる余韻の短い味。
「後味」・・・苦み・うまみ・渋み・辛みといった、後から余韻として長く残る味。
この「先味」と「後味」に分類した中から、同じ種類の味を組み合わせることで、その味わいをより強調する「類似」の関係や、別の味を組み合わせることで、もともとの味をマイルドにする「抑制」の関係などを考えながら組み合わせていくことが、上手にペアリングするコツだそう。今回、実際に味わった「百年珈琲」と「ドーナツ」の組み合わせは、まさに「抑制」のペアリングということですね。
サンドイッチとコーヒーのペアリング
サンドイッチにもタイプがいろいろありますが、肉や魚を挟んだうまみが強いタイプ、マスタードなどを加えて辛みの強くなったタイプは比較的どんなコーヒーとも合わせやすいです。逆に、甘みや酸味が強いサンドイッチは味の余韻が短いため、味の余韻が長い渋みや苦みが強いコーヒーに合わせると、コーヒーの味わいが勝ってしまうそうです。
今回のように、コーヒーを主役に考える場合は、コーヒー本来の味わいを楽しむためにはどんなサンドイッチを合わせるのがいいか、よく考えることがペアリングのコツです。
ちなみに、榎さんの好きなパンとコーヒーのペアリングは、ベリー系のフルーツサンドと、あっさりめの柑橘系コーヒーの組み合わせ。あえて酸味をバッティングさせるところがポイントだそうです。ぜひ試してみたい組み合わせですね。
100年続く「平岡珈琲店」。その秘密とは?
今回ご協力いただいた「平岡珈琲店」。コーヒー通、特に関西圏在住ならご存知の方も多いのではと思いますが、ここで改めてお店についてご紹介します。
大正時代に開店。現存する大阪最古の珈琲店
1921年(大正10年)開店、今年(2021年)ちょうど100年目を迎えた、大阪で現存する最古の珈琲店。もともと、西洋の食文化に憧れた小川さんの祖父が、スコッチウイスキーやフランスワインの輸入を手がけていましたが、いちばん好きなコーヒーに絞ってお店を始めたそう。小川さんが三代目店主となって久しい今でも、創業から受け継いだコーヒーやドーナツが楽しめます。
コーヒー豆は店舗3Fで自家焙煎
コーヒー豆はもちろん自家焙煎。3Fにある焙煎室で、ストップウォッチ片手に度合いを見極めながら煎り上げ、冷めたらハンドピックで欠点豆を取り除くなど、手間暇かけて作りあげています。
使う鍋も100年モノ!国内では珍しい「ボイリング法」で抽出
最も特徴あるのは、コーヒーの抽出方法。「平岡珈琲店」では、初代から受け継いだ100年物の鍋で抽出し、天竺木綿でろ過する「ボイリング法」でコーヒーを淹れている、国内では希少なコーヒー店です。ろ過する天竺木綿はコーヒーに悪臭が移らないよう1回使うごとに洗って水に浸け、冷蔵庫保存しなければならず、抽出時もお湯の中で豆を躍らせる分、苦みや渋みえぐみも出やすいそう。プロだからこそ、おいしく淹れることができる方法だそうです。
初代が感銘を受けたレシピをもとに今も手作り!「自家製ドーナツ」も人気
平岡珈琲店と言えば、平岡オリジナルブレンド「百年珈琲」と焼きドーナツの組み合わせで味わうスタイル。「百年珈琲」に合うレシピで作られた自家製ドーナツは、初代がかつて感銘を受けた、銀座「カフェ・パウリスタ」のレシピをもとに、今も小川さんが毎日手作りしているため1日70個ほどで、売切れの場合も。「百年珈琲」とともに、一度はお店で味わいたいですね。
ちなみに、小川さんのコーヒーデビューは幼稚園の頃だったそうです。さすが珈琲店の息子さん、早いですね!ただし、その頃はさすがに苦く感じていたので、砂糖やミルクをたっぷり入れて飲んでいたんだとか。高校生ぐらいになって、やっとコーヒーのおいしさが分かるようになったそうです。
最後は店主・小川さんにいろいろ質問タイム!
最後は店主・小川さんに、参加者の皆さんが各々気になることを質問する時間になりました。
小川さん:煎り上がっていない豆や、発芽していない「死豆(しにまめ)」、乾燥が進み過ぎた豆。基本的には「豆面」(=豆の顔)をパッと見ると、“これは駄目だ”というのが分かりますので、それを取り除いています。
小川さん:挽き方は異なります。ドリップの方が粗めで、ボイリングはいちばん細かいものを使用します。イメージで言うと、グラニュー糖の粒ぐらいのものですね。
小川さん:よく冷蔵庫や冷凍庫で保管と言われますが、これは危険です!コーヒーは活性炭と同じなので、きちんと密閉されていなければ、他の食品のニオイを吸ってしまいます。また、植物性油脂が含まれているので、温度が低すぎる所で保管すると、状態も変わってしまいます。極端に高い温度でなければ常温保管でOK。密閉容器に入れて戸棚に保管するなど、「空気」と「光」を遮断すれば、だいたい1ヶ月ぐらいは品質をキープできます。
小川さん:キリマンジャロだけ、ストレートで飲むのが好きです。苦みのバランスが強くならないよう、中深煎りで止めたものは、香りは立つし、味わいもクリアなんです。特に何ともペアリングせず、食前酒のように飲むのが好きですね。ただ、プレミアムコーヒーの3倍と高いので、皆さんにはあまりおすすめはできません(笑)。
ここで、オンラインイベントは終了。あっという間でしたが、“勉強になりました”とか、“コーヒーと向き合うことができました”など、参加者の皆さんからは満足の声がたくさん寄せられました。筆者自身もしっかりコーヒーと向き合うことができ、勉強になった約1時間でした。
ご協力いただいた平岡珈琲店・三代目店主の小川さん、パンシェルジュプロフェッショナルの榎さん、そして参加者の皆さん、ありがとうございました!
「百年珈琲」や「Premium焼きドーナツ」は、ネット通販でも購入が可能です。ぜひ、この記事を参考においしいコーヒーとドーナツを楽しんでみませんか?
平岡珈琲店