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古川麻帆さん(「orsetto bianco」オーナー)
パンやの夜明け

古川麻帆さん(「orsetto bianco」オーナー)

田辺 容子
田辺 容子

orsetto bianco(京都府京都市上京区)

orsetto bianco,店舗写真

2017年、京都・西陣エリアにオープンしたクロワッサンとパイの専門店「orsetto bianco(オルセット ビアンコ)」。白く明るい店内には、約17種類のクロワッサンとパイが、まるで芸術作品のように並んでいます。北海道産小麦粉「キタノカオリ」を使用した「orsetto bianco」のクロワッサンは、近くに住む人は朝食に、近隣府県から訪れた人はお土産にと、幅広い客層と用途で愛されています。

〒602-8205 京都府京都市上京区中立売通日暮東入新白水丸町457-4
※京都市バス「大宮中立売」バス停下車すぐ
OPEN 11:00-17:00 〈売切れ次第終了〉
定休日:水曜、木曜

※店舗や商品に関する情報は直接お店にお問い合わせください。
https://www.orsetto-bianco.jp/

人気商品
クロワッサン
レモンパイ
ミートパイ
クロワッサンオザマンド
あんバタークロワッサン など

古川麻帆さん

古川麻帆さん

大学卒業後、会社員として勤務。ものづくりに関わる仕事をするため、調理の専門学校に入学・パンづくりの道へ。卒業後、北海道・洞爺湖にあるホテルで製パンスタッフとして、約3年クロワッサンの担当を務める。2017年、京都でクロワッサンとパイの専門店「orsetto bianco」をオープン。

店名の由来や人気商品について教えてください。

orsetto bianco,看板

店名の「orsetto bianco」はイタリア語で「白い小熊」という意味です。私がもともと動物好きということと、お店で北海道産小麦粉を使用していることから付けました。北国っぽい動物といったら白熊かな、と。「クロワッサンのお店なのになぜイタリア語?」と言われることもあるのですが、語感の良さで決めました。
メニューはクロワッサンとパイ、合わせて16~17種類を毎日焼いています。どの種類のクロワッサン・パイにも、個別にファンがついてくださっています。「これをなくしたら悲しまれるお客様がいらっしゃる」と選抜した固定メニューに加え、パイのみ季節限定メニューも販売しています。
いちばん数が出るのはプレーンのクロワッサン。「軽く食べられて腹持ちがいい」と近くに住む高齢者の方が朝食として、また「専門店は珍しいから」と近隣府県から訪れた方がお土産として買って行かれることもあります。

orsetto biancoの人気商品。写真右上より時計回りに、ミートパイ、あんバタークロワッサン、クロワッサン(プレーン)、レモンパイ、クロワッサンオザマンド。

──店内のつくりやディスプレイも特徴的です。
私が以前働いていたホテルがある、北海道の洞爺湖(※中央に島がある円形状の湖)をイメージしています。それから広場のような楽しい空間にしたい、とデザイナーさんに伝えて作ってもらいました。訪れた子どもたちが、店内をぐるぐる回って楽しんでいる姿が見られて面白いですね。
クロワッサンやパイを並べている丸い器は、京都の漆塗りの職人さんに作っていただきました。器にこうして京都の伝統文化を取り入れると、今は(コロナウイルスの影響で)あまり来られないのですが、外国人観光客の方が「日本の漆が!」とすごく喜んでくださいます。

北海道産小麦粉を使用したクロワッサンの開発のきっかけを教えてください。

orsetto bianco,店内

きっかけは、初めて北海道産小麦粉のパンを食べた時に、「北海道の小麦粉って、本当においしいんだな」と感動したことです。甘さとうまみが詰まっていて、ひと口でパーッと(気持ちが明るく)なるような。フランスでは、フランス原産の材料を使って日本酒を造られているところがあるように、クロワッサンも国産の、北海道のもので、こんなにおいしいものが出来るということを知ってもらいたい。そうした思いから、クロワッサン担当として働いてきた経験を活かしながら、北海道産小麦粉「キタノカオリ」の品種が持つおいしさが前面に出るよう作っています。
クロワッサンそのものを楽しめるようなレシピにしているので、そのまま食べていただき、北海道産小麦粉のうまみを味わっていただけたらと思います。シンプルに作っているので、お家でお好きな具材と一緒に──例えば、タマゴをはさんでサンドイッチにして──楽しんでくださる方もいらっしゃいますよ。

<orsetto biancoのクロワッサンがお店に並ぶまで>

17:00……クローズ
翌日分の生地の仕込み(折り込み作業)
※生地は一晩休ませる
翌日6:00~8:00頃……成形・ホイロ・焼成
11:00……オープン!

パン屋さんを志したきっかけを教えてください。

orsetto bianco,店内

学生時代にレストランのキッチンで働いていた経験から、作る世界は楽しいという思い出がありました。大学卒業後、もともとデスクワーク中心の仕事をしていたのですが、北海道へ行くことになったタイミングで「もっと動くような仕事がしたい、作り手になろう」と思い、調理の専門学校へ通い始めました。
専門学校へ入るまでは、パンを作ったことはほとんどありませんでした。ですが、パン屋になるもっと前から、パンが好きでした。旅行先のホテルで、焼き立てのクロワッサンを食べた時にすごくおいしくて。それをきっかけに、作り手になるときには「クロワッサンを自分で作ってみたい」と、クロワッサンを作るようになりました。
パンはお菓子系も食事系もあって、懐が深い。それから、地域で愛されるようなパンだったり本格派のバゲットだったり、世界も広い。パン職人を選んでよかったなと思います。
社会科見学の授業で、近くの小学生がお店へ来てくれたことがあるのですが、その際に「辛いことはなんですか?」という質問があって。「早起き」って答えたら「なりたくない」と言われてしまって(笑)。
──(笑)。生活サイクルがあるので、慣れればきっと……?
そうなんです。「そんなことない、大人になったら大丈夫。パン職人はいいよ~!」って(笑)。

──お店の場所を京都にされた理由を教えてください。
「京都はパンの消費量がNo.1(※)だから来たの?」と言われることもあるのですが、ホテルで働いていた元同僚から、偶然物件を紹介してもらったことがきっかけでした。
それ以前にも京都へ来たことはあったけれど、この辺り(西陣)は来たことが無かったエリア。物件を見に来たときに大家さんから、「Le Petit Mec 今出川店」さんをはじめ、近くにいろいろなパン屋さんがあるから行ってみて、と教えてもらいました。帰りに立ち寄ってみると、どのお店も賑わっていて特色があって、「楽しそう!」と。知人から紹介されたからとはいえ、結構ひと目ぼれのように、お店を出します、と半ば勢いで決めました。100円パンのお店からこだわりの天然酵母のお店まで、いろんなパン屋さんがある。パン職人としてはすごく楽しい街ですね。

※総務省「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(平成27年(2015年)~29年(2017年)平均)」より

パン作りで心がけていることや、楽しいと感じる瞬間はありますか?

orsetto bianco,商品

ひとつひとつ基本に忠実に丁寧に、ということを心掛けています。パイやデニッシュは、温度管理が命。特に、夏場は暑くなるので、細心の注意を払いながらパン作りをしています。楽しいと感じることは……恥ずかしいのですが、生地の触り心地がすごく好きで(笑)。生地づくりをしながら、すごく幸せだなぁと思います。それからクロワッサンを焼いているときに、層がフワァ~っと立ち上がるのを見ると「わぁ!きれいに上がってくれた!」と、楽しくなります。
──すごく幸せな気持ちでパンが作られているんだなぁと知ると、こちらまで楽しい気持ちになります。
もちろん必要な分だけで、べたべた触っているわけではないですよ(笑)。パンを作られている方は生地のすべすべ感や、ふかふかとした感触をご存知だと思うのですが、パン作りをしたことがない方は、ぜひ一度体験してみてほしいですね。

思い描く理想のパン屋さんはありますか?

自分で作ったものを自分でお客様にお渡しして、お客様から反応をいただくというのが私の中の理想です。現在、私ひとりでお店をやっています。接客を他の方に任せてお店を大きくする、という方法もあるのですが、私の中では接客も含めてお客様と向き合うパン屋でありたい。それをこれからも守っていきたいなと思っています。

orsetto bianco,外観

最後にパンシェルジュに向けて、メッセージをお願いします。

北海道産小麦粉の「キタノカオリ」は育てるのが難しく、去年からすごく出回る量が少なくなってしまったのですが、本当においしい小麦粉です。パン好きの方には有名ですが、もっと多くの方々にこの品種名で「あ、おいしい品種なんだ!」と思ってくれるくらい名前が広まってほしいですね。扱いがちょっと難しいといわれるパン用小麦粉ではあるのですが、パンシェルジュのみなさんにも使っていただいて、食べていただいて、おいしさを知っていただけたらなと思います。

WRITER

田辺 容子

田辺 容子

1990年滋賀県生まれ。製菓製パン材料を販売する会社でWEBデザイナーを経験したのち、印刷系の制作会社でライターとして勤める。現在は文化・芸術を支える仕事の勉強中。好きなパンはシナモンロール。

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